データ分析の専門家(データサイエンティスト)である倉橋一成は、「医療関連のデータ分析に関しては、日本でトップのノウハウをもっている」と自負している。学生時代から医療関連の企業や大学、NPO法人に所属し、臨床試験データやレセプトデータなどの統計解析コンサルティングを手がけてきた。現在は、iAnalysisの代表を務めるほか、東京大学医学部附属病院の特任研究員、日本経済団体連合会のビッグデータ研究会委員を兼任している。例えば、“名寄せ”と呼ばれる分離したデータを分析できるかたちに統合して関連性を導き出すプロセスでは、「他のITベンダーが3か月かかるものでも、わずか2週間で結果を導き出すことができる」と自信をみせる。
医療を得意分野としている倉橋は、「特定業種だけではなく、より多くの企業にデータ分析を広めたい」と考えている。博士号を取得した同期生のほとんどが医療機関の研究職に就くなかで、倉橋が卒業後すぐにiAnalysisを起業したのはそのためだ。だから、「ビッグデータ」というITトレンドが大きな渦を形成し、データ分析が注目されている現在の状況は「いい傾向だ」と頬を緩める。
しかし、問題がないわけではない。「日本には、統計学を学べる機関がほとんどなく、データ分析は“難しい”というイメージが定着している」。そこで倉橋は、コンサルタントとして企業のデータ活用を支援するだけでなく、最近はデータサイエンティストの育成に力を入れている。「データは世界を変える。企業にすぐれた分析家が一人いるだけで、数十億円にも及ぶビジネスを生み出すことだってできる。“難しい”というイメージを払しょくして、万人がデータ分析を簡単に活用できる世の中にしたい」と熱く語る。(文中敬称略)
プロフィール
倉橋 一成
倉橋 一成(くらはし いっせい)
1983年、広島県生まれ。東京大学医学部看護学科で医療データの統計解析を学び、卒業後は大学院に進学。08年に医学系研究科の保健学修士号を、11年に博士号を取得した。11年3月、統計解析コンサルティング(データサイエンス)を専門とするiAnalysisを設立。