生来の努力家。中国系の両親の間にマレーシアで生まれ育ったジン・コウは、英語教師を務める母親の指導を受け、子どもの頃から英語を家庭内の言語として使ってきた。中学生になって親にパソコンを買ってもらい、高校受験に向けた猛勉強のかたわら、独学でプログラミングを習得した。こうして得た英語とITの知識を活用して、大学入学のために渡米。そして、米国で数社のITベンチャーの立ち上げに携わった後、現在は日本で活躍する。モバイル端末で遠隔から会社のデスクトップにアクセスすることができるツールを提供するスプラッシュトップの取締役副社長だ。
スプラッシュトップは、シリコンバレーに本社を置く。もともと本社に入社したコウが日本を活躍の場として選んだのは、スマートフォンやタブレット端末の普及が活発になっている日本市場に可能性を感じて「当社製品のすぐれた点をぜひ日本企業に伝えたい」と考えたからだ。今の役割は、スプラッシュトップのツールを使ってどのようにビジネを改善できるかを、販売パートナーやユーザー企業に説明すること。日本語は勉強中で、英語も併用するが、自分の強みは何かという質問に対して「説得力です」と日本語で答える。大学で法学を学び、論理的思考を身につけたことが生きて、「話す前に要点をまとめてストーリーを考える」という会話力を商談の場で活用している。
「日本企業は決断が遅いが、人材が適材適所で配置されていて、決断後のスピードは速い」。日本の市場に確かな手応えを感じるコウは、「当社の製品をすべての有力企業に入れたい」と意気込む。そのために、啓発の努力を怠らない。(文中敬称略)
プロフィール
ジン・コウ
ジン・コウ(Jin Koh)
1980年、マレーシア生まれ。米カリフォルニア大学バークレー校で法学を学ぶ。2001年にグループウェアを提供するShareSpaceを創設。その後、2社のITベンチャーの設立に携わる。2011年、スプラッシュトップに入社、翌年に日本法人の取締役副社長に就任。日本での法人向けモバイルソリューション事業を担当する。米国籍で東京在住。