NTTデータで課長代理に昇進したとき、佐藤敦は「現場に戻してくれ」と上司に懇願し、プログラマとしてさらに3年修行した。普通は現場を離れて管理職へ移行する時期だが、「SIerのソフトウェア開発のあり方に疑問を抱いた」ことから現場にこだわり続けた。「自らの開発力が衰え、プログラムソースコードのレビューや検証もままならなくなる」という危機感が佐藤の行動の背景にある。
ソフト開発は大きな変化の真っただ中にある。その代表的な例が、グローバル・デリバリ体制の下でソフト開発の自動化やエンジニアリング化の仕組みを構築するという動きだ。NTTデータは全社を挙げて自動化に取り組んでいる。これを成し遂げるには、約4000人の社員を抱える「中国の対日オフショアソフト開発の最前線に自ら赴くほかはない」と決心。2012年に北京へ渡った。
赴任した当時の人民元の為替相場は1元12円ほどだったが、すぐに想定レートは17円近くに跳ね上がった。年率10%増ともいわれる中国の人件費の上昇も加わり、「労働集約的なソフト開発を抜本的に見直す必要性に直面した」。佐藤は、中国のスタッフとともに無我夢中で改革に取り組み、少なくとも自動化については中国での開発金額ベースで5%程度まで引き上げた。すでに、主要部門にモデルチームを組織しており、「今後、この割合を一段と高めていく」と意気込む。気がつけば、ソフト開発のエンジニアリング化の中心的役割を担う自分がいた。
たまに日本のわが家に帰宅すると、「北京のパパが来た!」と喜ぶ3歳の娘の育児参加に一抹の不安を覚えつつも、まだまだ中国で「改革を進めていく」と、意気盛んなところをみせる。(文中敬称略)
プロフィール
佐藤 敦
佐藤 敦(さとう あつし)
1977年、千葉県生まれ。2000年、東京工業大学工学部経営システム工学科卒業。同年、NTTデータ入社。オープンソースソフトウェア(OSS)開発部門、グローバルソフトウェア開発部門などを経て、12年から現職の中国法人NTT DATA(中国)開発事業部門総監。