マネーツリーの資産管理アプリ「Moneytree」は、2013年にiPhone、14年にはiPad部門で、米アップル「App Store」ベストアプリの栄冠に輝いた。いまやコンシューマ向けアプリベンダーの枠を越え、国内のフィンテック市場を牽引する存在になった。
「日本の人材を生かしたグローバルカンパニーになりたい」。創業者の一人であるマーク・マクダットは、そう力を込める。半ば必然のように日本にたどり着いた。9歳上の長兄が日本に留学し、そのまま日本で就職したこともあり、幼い頃から関心のある国ではあった。中学生の頃からプログラミングが趣味で、米国の名門イリノイ大学でも電子工学を専攻したが、東アジアの文化や歴史もダブルメジャーで学んだ。ターニングポイントとなったのは、谷崎潤一郎や大江健三郎、村上春樹といった日本の現代文学との出会い。「世界には一つの正解があるわけではなく、視点によって世界の見え方は変わる。日本の現代文学を通してそれにあらためて気づいたとき、とても刺激的だと思った」。
文系に専攻を絞って大学を卒業した後、自分が何をやりたいのか探すために選んだ場所も日本。まずはITのスキルを生かし、SEの中途採用などを担当するリクルータとして働いた。そんな頃にiPhoneが登場し、時代が大きく変わる予感を抱く。まずは同僚二人と、趣味感覚で休日にアプリ開発を始めた。少し収益も出始めた頃、運命の日は突然やってくる。「ある日曜日、阿佐ヶ谷の餃子専門店で軽く打ち上げをした。その時ふと、明日の朝起きら会社に行かないでアプリ開発をずっとやっていたいという考えが頭をよぎった。ほかの二人に聞いてみたら、同じ気持ちだったみたい」。そして、本当に辞めた。かくして、“金のなる木”へとつながる道は始まったのだ。(文中敬称略)
プロフィール
マーク・マクダッド
マーク・マクダッド(Mark Makdad)
1982年生まれの33歳。米イリノイ大学を卒業後、来日。エンワールド・ジャパンに入社し、リクルータとしてキャリアをスタート。その後、創業メンバーとしてマネーツリーの立ち上げに参画。クレジットカードや銀行口座の明細などを一括管理できる資産管理アプリ「Moneytree」で急成長を遂げる。営業部長の肩書きながら、独自開発している企業向けデータアグリゲーションインフラサービス「MT LINK」の開発責任者を務める。大学在学中は、金沢工業大学に交換留学した経験がある。