父親は非常に厳しい人だった。だからといって、叱ったり叩いたりするわけではない。「計算しつくされた英才教育。『レバレッジ子育て』といえばいいかな」と永井俊輔は表現する。
子どもから「ゲームが欲しい」とお願いされた場合、多くの親は「次のテストで100点を取ったらね」などと答えるだろう。達成したら、願いをかなえてくれる。ところが、永井の父親は違う。お願いされたらすぐに買ってくれるのだ。ゲームを買って1週間ほどが経過した段階で、「次のテストで100点を取らなかったら、ゲームを取り上げる」と言う。「ゲームの楽しさを覚えてしまっているから、取り上げられるのが絶対に嫌だと思う。だから100点を取れるように懸命に勉強した」そうだ。
大学時代、勉学に励みながら祖父の不動産ビジネスを手伝っていた。経営コンサルティングに興味をもつようになり、卒業後はベンチャーキャピタルに入社。朝5時から深夜2~3時まで働いた。「1年弱で一般的な会社員の10年分は働いた」と振り返る。その後、父親が経営するクレストに入社する。
クレストは、サイン&ディスプレイを主力事業の一つに据えている。取締役に就任した際、CRMなどのIT化を進めて営業力を強化。4年間で売り上げを約2倍に引き上げた。その後、父親から引き継いで代表取締役に就任。「創業社長ではない」というのがコンプレックスで、ディスプレイデザインを手がける会社やマーケティングオートメーションの会社なども立ち上げた。
「世の中で、まだBtoCは分析しきれていない」。サイン&ディスプレイの顧客である小売業にイノベーションをもたらすサービスを提供していく。「達成すると決めたら、絶対に達成する」。レバレッジ子育てとベンチャーキャピタルの経験が永井を下支えしている。(敬称略)
プロフィール
永井俊輔
(ながい しゅんすけ)
1986年、群馬県生まれ。2009年3月、早稲田大学を卒業後、ジャフコに入社。M&Aやバイアウトに携わった後、父親が経営するサイン&ディスプレイ関連ビジネスを手がけるクレストに入社。12年に取締役、16年に代表取締役社長に就任する。ディスプレイデザインを手がけるドラミートウキョウや、マーケティングオートメーションを提供するグリードナーチャリングなどの代表取締役社長も兼務する。