描いていた将来は、「結婚して、家庭を築いて専業主婦に」。だから、仕事にはあまりこだわりがなかった。東京の大学で人並みに学生生活を謳歌。卒業後は、やり残した語学留学を実現するため中国に渡った。もともと、知らない文化や価値観に触れることが好きだった秋山。とくに上海は、中国だけでなく、海外の文化が入り混じる人種のるつぼだ。「自分が行動すれば、その分だけいろんな人に会うことができる」。そこで出会ったフランス人の友人の一言、「フランス社会では、女性が働かないなんてあり得ない」には衝撃を受け、人生観が変わった。一人の女性として、自立のために働く重要性を学んだ。
上海での就業を経て、中国で培った経験を生かそうと、地元の観光協会に身を転じた。職場は働きやすい環境だったが、次第に日本社会そのものに違和感を覚え始める。閉鎖的で、新しい人に出会っても、なかなか打ち解けない。とくに、「中国では、海外に行きたくても行けない人が多いのに、日本では、こんなに自由でも、パスポートすら持っていない人がたくさんいることにショックを受けた」。自分の居場所ではないと感じ、夏季休暇を利用して上海に職探しに出かけた。これが現職に就くきっかけとなった。
「世界で一番かわいそうなのは、日本人女性かもしれない」と秋山。まわりの目を気にする日本の女性社会。経歴や外見だけで人を判断してしまう一面もみられる。「実際、かつての自分もそうだった」。しかし、秋山がみてきた世界はその通りでない。「“何をしている人”ではなく、“どんな人”なのかに着目するべきだし、他人にどう思われるかは関係ない。肝心なのは、自分が正しいと思うものを信じぬくこと。生きたい人生を生きるべき」と熱っぽく語る。 上海でともに暮らす夫はオランダ人。出会いのきっかけは、フランス人の友人に誘われて出かけたベトナム旅行だ。秋山の世界は大きい。(敬称略)
プロフィール
秋山奈菜子
(あきやま なおこ)
1985年生まれ、静岡市出身。2007年、青山学院大学英米文学科を卒業後、北京中央民族大学と上海復旦大学に語学留学。台湾系のSKYWAYLANDIS HOTELでインターン、研修サービスを手がける上海凱兆企業管理咨詢に就職後、09年に社団法人静岡県観光協会に転職。11年、都客夢(上海)通信技術(NTT DOCOMO China)に転身、現在に至る。