ディスプレイメーカーの動き
NEC
新組織発足でサイネージ事業強化
広告・販促での需要を狙う デジタルサイネージのニーズの高まりを感じ取って、国内大手コンピュータメーカーが着々と体制を整備し始めた。
NEC(矢野薫社長)は4月、新たに「通信・メディアサービスソリューション事業部デジタルサイネージビジネス推進グループ」を設置した。顔認識技術を用いて顧客の属性を判断し、その属性に適した広告コンテンツを表示しながら効果測定を行うデジタルサイネージボード「eye flavor(アイフレイバー)」や業務用ディスプレイ、配信ソフトウェア、配信ネットワーク、複合コンテンツのシステム構築・運用、さらには実績データの分析までを包括したソリューションの提供体制を整えた。これまで関連会社のNECネクサソリューションズ、NECディスプレイソリューションズ、NECソフトがそれぞれ事業の展開していたものを統括する部門として、事業強化を図る。
新組織発足の意図を、同グループの大坂智之グループマネージャーは「グループ間で連携して技術を集結し、一つのベクトルに向けて特徴・強みを生かしていくことを目的に立ち上げた」と話す。
NECがデジタルサイネージを事業化したのは1998年。直販と20社のパートナーを介した販売で、導入実績は2000社に上る。主に官公庁、ホテル、病院、金融などの「インフォメーション用途」で使われている。これまでデジタルサイネージは、メディアとして注目されてはいるものの明確な効果指標がなく、広告としての利用が進みにくい状況だった。
NECグループのソリューションは、年齢・性別などの視聴属性、効果測定が可能だ。同社は「直接売り上げを生む広告や販促向けにデジタルサイネージ事業を強化する」としている。マスメディア向けに、広告配信システムなども提供するほか、運用面で広告代理店とのアライアンスも視野に入れている。
「不況でユーザーのIT投資が絞られている状況。明確な投資対効果の提示やコストダウンを図る必要がある」(同)と課題を語る。今後はデジタルサイネージ事業のSaaS展開のほか、もともと海外売上比率が高い業務用ディスプレイを軸として海外展開を本格化する構えだ。
日立製作所
SaaS型運用・配信基盤を提供
パートナーとの連携で拡販へ 6月上旬、日立製作所(川村隆会長兼社長)は、事業部ごとに個別に提供していたデジタルサイネージ事業を連携し、導入コンサルティングからシステム構築、コンテンツ制作、配信・運用代行までを一括して業種・業態ごとにソリューション提供する「日立デジタルサイネージソリューション」を発表した。同社のSaaS型運用・配信プラットフォーム「MadiaSpace(メディアスペース)インフォメーションディスプレイサービス」とも連携する。金融、公共、流通、交通やマンションなど、社会インフラであるデジタルサイネージ設置者間の情報連携サービスなども模索する。
「MediaSpace」は、開始当初は業務用ディスプレイの拡販が中心だったが、「『コンテンツ運用がうまくいかない』というユーザーの声が高まった」(都市開発システムグループ ソリューション事業統括部の榎堀武・部長代理)ことから、低コストで配信・運用管理中心のアウトソーシングなどを請け負っている。
再生端末とソフトウェアライセンスなどを含め月額制にして、ディスプレイについては設置済みのユーザーもいるため、ケース・バイ・ケースでレンタルと販売を選択できる仕組みだ。
従来の映像配信サービスに、ディスプレイ(WoooUTシリーズ)、設置スタンド、モバイル通信サービスを組み合わせ、設置作業と配信管理サービスを一括して提供する「デジタルサイネージパック」も製品化。ディスプレイ設置や回線敷設工事が不要で、容易にデジタルサイネージを導入できる。主に直販やSIer、コンテンツを作成する制作会社や内装会社など、約30社が取り扱っている。
「当社のSaaSは、大企業を中心に3000ディスプレイで利用されている」(同)という。同社は現在、配信サービスで10%のシェアをもっている。将来的には現在3000台のディスプレイを1万台に引き上げる目標を立てている。
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