導入事例
イオンチャンネル
日本サムスン
中小向けポスター制作表示システム
コンテンツ制作や配信で協業も 日本サムスン(李昌烈社長)は、ディスプレイにスピーカー、USBポートなどを搭載した中小企業向けの32型液晶ポスター制作・表示システム「ハルヱとケイジ」を08年7月から販売している。コンテンツ制作ソフトの提供によって、これ一つでサイネージが実現する。販路はディストリビュータやNECネクサソリューションズなどのSIerだ。一方、SOHOはIT機器を量販店で購入するケースが多いことから、大手家電量販店でも販売することでも話題になった。医院の案内掲示板や書店の販促などに利用されている。
発売から1年が経った現在、「印刷会社や地域の看板店、広告代理店などが販売の主力。量販店での販売は少ない」(宮田隆・DigitalProducts DMA Team部長)と実情を語る。ビジネス拡大に向け、今年5月から全国の販売店を対象に製品セミナーを開催している。
「ハルヱとケイジ」はコンテンツを自作できるのが特徴だが、いざフタを開けたら「自分で制作するユーザーはほとんどいなかった」(同)ため、今後はコンテンツ制作力をもつ広告代理店や印刷関連会社などの販社を増やすことを視野に入れる。また、多店舗展開の流通業のニーズに応えるため、ネットワーク型配信システムで通信事業者との協業も検討している。宮田部長は「関連する業務を包括的に大手メーカーが取り込む傾向が見られるが、市場拡大には各社が役割分担をする環境が必要だ。そうなれば価格がこなれてくるし、より求めやすくなる」と展望を語る。
ピーディーシー
コンサル~効果測定ワンストップ
コンテンツ制作を重視して提供 パナソニックの社内ベンチャー、ピーディーシー(菅原淳之社長)は、パナソニック製プラズマ・液晶テレビディスプレイと合わせ、コンサルティング、システム設計・施工、コンテンツ制作、パナソニックシステムソリューションズが開発した配信システム「NMStage」の運用・保守管理、そして効果測定までをワンストップサポートしている。「『広告メディア』としてはまだ未成熟。施設案内、インフォメーション、販促など、何の目的で導入するかを第一に考え、設置場所などを吟味する必要がある」と菅原社長はみている。
国内では、2001年から六本木ヒルズの屋外映像システムをはじめとする大規模システムを手がけ、交通機関や金融機関、商業施設など、国内外約4000か所への導入実績がある。特に重要視しているのはコンテンツだ。「サイネージは『いまだけ・ここだけ・あなただけ』。クリエイティブで導入効果を出さなくてはならないので難しい。ニーズに応じて一つずつ丁寧にブラッシュアップしている」(菅原社長)という。コンテンツ制作は基本的に内製するが、番組制作会社や看板会社、CG製作会社など、300社ほどの外注先と取引している。
業界のトップ企業がメインターゲットなので、これまではパナソニック、金融業界に強いSIer、広告会社、ゼネコンなどのパートナーが主要販路。しかし、今年4月に最大1万台のディスプレイに配信でき、価格が1万円からと安価な自社開発のコンテンツ配信ASPサービス「HAI」を販売開始したことによって、ユーザー層の広がりが期待できる。パソコンとHDMI対応テレビがあればコンテンツを自動的に配信・放映することができ、ADSLが引けない店ではPOS回線など既存資産を活用できる手軽さが特長。流通店舗などへの導入を見込んで、「今後はさらにSIパートナーを増やしたい」(菅原社長)と意欲的だ。
導入事例
HOUSE OF SHISEIDO
ベンチャー企業の動き ネット動画系の参入相次ぐ
ワンソース・マルチユースに需要あり 「ディスプレイ製造メーカー系が主導権を握る傾向が強く、配信方法も混沌とした状態」――。ネット動画配信の老舗ベンダーであるJストリームの白石清会長兼社長はこう語り、だからこそ「デジタルサイネージ市場の拡大はこれからが本番」とみている。
将来性のある市場として、インターネット系の動画配信サービス企業の参入が相次いでいる。スキルアップジャパンの動画コンテンツ管理プラットフォーム「ULIZA(ウリザ)」は、パソコンや携帯電話など多様なデバイスに対して一つのコンテンツを展開する「ワンソース・マルチユースによって、クロスメディアを実現可能」(畠山祐聖取締役)だという。コンテンツ制作会社や広告主の需要は根強く、ネット動画で培ったノウハウを武器に事業の拡大を目指す。
SaaS/ASPで強化
CPとの協業「コンテンツバンク」も 同じく「ワンソース・マルチユース」が可能な動画配信サービスを手がけるサイバーステーション(福永泰男社長)は、アイ・オー・データ機器のリテール品を活用し、安価にデジタルサイネージを実現するSaaS/ASP「CYBER MOTION(サイバーモーション)デジサイン」を提供している。ハードから配信・運用ソフトまですべてを提供するこのサービスを「沖電気工業と沖電気カスタマアドテックがパートナーとして販売する」(福永社長)予定だ。
比較的安価な配信・運用システムのSaaS/ASPが増えるなか、同社は配信コンテンツ制作周りを強化した。「配信コンテンツはユーザーにとって悩みの種。展示会に出展した際、お客さまからは『コンテンツ周りを考えているのはお宅の会社だけ』と評価いただいた」と福永真子取締役は手応えを語る。
マイクロソフトの「PowerPoint」を生かし、簡単に無償で自作できるようにする一方で、コンテンツを外注したいユーザーに対して、GMOクリエイターズネットワーク(伊藤毅社長)と協業し、5250円(静止画)から請け負う。
また、独自コンテンツの合間に挟み込むニュースやレシピなど“箸休め”の汎用コンテンツについては、映画配給会社や番組制作会社、通信社などをコンテンツプロバイダーとして集めたコンテンツ販売モデル「コンテンツバンク」を構築する計画だ。
ネットワーク機器メーカーの動き サイレックス・テクノロジー
ロケーションフリーを実現
最大32台に無線配信する機器で コンテンツもさることながら、サイネージの「設置場所」も頭を抱える問題の一つだ。小売店舗の場合、有線だと回線敷設費用がかかるほか、工事できる場所を探すと店の隅になってしまうことも多い。だが、無線LAN、携帯電話回線、WiMAXなどの無線が発達し、価格が下がってきたことから、ロケーションフリーのデジタルサイネージを提案するベンダーが増えた。例えば日立製作所では、3G回線を積極的に推進している。
サイレックス・テクノロジー(デヴィッド・スミス社長)は昨年、米国ガソリンスタンド向けのデジタルサイネージ市場に注目し、50か所に300台を納入している。「企業は今、テレビ広告よりも街頭キャンペーンの販促に力を入れ、費用を投下している。デジタルサイネージが一つのメディアとして注目され始めている」とSTJセールスセンタービジネスディベロップメントセールスディビジョンの福留健司プロダクトマーケティングマネジャーは話す。「市場全体の実導入は少なく、大企業ユーザーが利用している例がほとんどだが、安価な製品ですそ野を広げたい」(同氏)。
無線で最大32台、有線で最大1024台のディスプレイに配信できる独自のマルチキャスト技術を採用したネットワーク機器「MVDS」と、ユーザーの既存資産のディスプレイをネットワーク化して、最大6画面の拡張ディスプレイに異なった画面を表示できる「NetDA-1」という二つの機器で、交通・流通・医療などの分野で拡販を狙う。
現在、医療系のSIerなどが担いでいるほか、大手メーカーや配信システムベンダーからも話が来ているという。小売店舗向けでは、看板業者と取引がある看板スタンドメーカーを販社にすべく交渉を進めている。