法人の導入は進むか-当社はこう見る
日系SIerが中国へ進出するにあたって、ライバルにもなり、よきビジネスパートナーにもなるのが中国地場の有力SIerである。彼らとどのような関係を構築すべきなのか、究極的に日系SIerが有利にビジネスを進めるためにはどうしたらいいのか。本稿では日系SIerのビジネス戦略を検証する。
<肯定派>AOSテクノロジーズ
中古PCは絶対に増える 「一般業務に使っても、まったく問題ない。当社も中古PCを提案されたら購入するだろう。今後、中古PCは絶対に増える」。データ復元、抹消、バックアップソフトウェアを開発・販売するAOSテクノロジーズの西谷考弘取締役は、中古PC市場に大きな期待を寄せている。必要なのは、保守・サポートの充実だ。
西谷取締役は「ユーザーのすそ野が広がっている。以前は専門店での販売が多かったが、現在は家電量販店でも簡単に購入できる」と指摘する。HDDの品質向上やデータ消去ソフトなどの普及も後押ししているとみている。「中古は新品に性能面で相当肉薄している。極端にいえば、気分や感性の違いでしかない」とまで言い切る。
同社の商材は、リース企業が中古PCにバンドルしてユーザー企業にリースしている。例えば、バックアップソフトのライセンスをバンドルして月額500円程度のストックビジネスを展開している。個人向けには今のところバンドル販売は行っていないが、実施に意欲を示す。
法人向けのライセンス販売は大きく伸びている。全体でみれば、個人向けのパッケージソフトの売上比率が高いが、法人の売上比率が年々向上している。2009年度(9月期)は、売上高が対前年比200%増となった。
<否定派>国際産業技術、NEC
ユーザーは新品を選ぶ 国際産業技術は、10年以上前から中古PC事業を手がけ、一時は主力事業の一つにまで位置づけていた。それが今年度、事業からの撤退に追い込まれた。
秋葉原を中心に構えていた6店舗を閉鎖し、現在は中古PCの引き合いがあれば扱う程度。昨年のピーク時には、月に2500台のノート型と1000台のデスクトップ型を販売していたという。
立花和昭社長は「PC単価の下落傾向が続いている。収益を上げづらくなった」と説明する。調達はリース企業に頼っていたが、他社との競争が激しくなるにつれ、収益を出しながら安定的な供給を図ることが難しくなっていた。「Windows 7の需要が旺盛だ。リプレース案件が増えているが、その際にあえてWindows XP搭載の中古PCを選ぶユーザーは少ないのではないか」と“XP特需”にも疑問を呈する。
法人向けに中古PC営業活動をしていないNECパーソナルプロダクツの清水部長は「ビジネス用途の事例はまだまだ少ないようだ」と、再生PCの法人需要には懐疑的だ。清水部長が懸念するのは、サポート・保守やメンテナンスに関わる問題。「延命措置で単年度ではコスト削減になるだろうが、アフターコストを考えると割に合わない」という。
重い腰を上げたマイクロソフト
商流“浄化”に一役 マイクロソフトが中古PC市場に目を向け始めたのは2009年4月。パートナー向けの再生中古PC向けライセンスプログラム「Microsoft Authorized Refurbisher プログラム」(MAR)を開始した。翌年には中小の事業者向けに「Microsoft Registered Refurbisher プログラム」(MRR)を開始した。
MARは、年間1万2000ライセンスの発注を必須条件としており、パートナーが購入する再生中古PC向けライセンスにWindows 7(Home Premium/Professional)とWindowsXP(同)、Windows Sever 2003を用意している。もう一つのMRRは、Windows XP(同)のみの提供となる。Windows Vista(Home Basic/Premium/Business)搭載PCでは、Windows 7の中古PC向けライセンスを購入することになる。
これまで事業者は、OS未搭載で中古PCを出荷するか、PCに付属している正規のバックアップ用メディアを使用する必要があった。中塚三貴・OEM統括本部アカウントエグゼクティブは「中古PC向けのライセンスを用意していなかった。取り扱うにもWindows OS搭載PCを再販できない問題があった」と話す。そのため、海賊版の不正売買などが横行し、中古PCのマイナスイメージを助長する結果となっていた。
販売事業者の取り組みを追う
アンカーネットワークサービス
最大手の一角を占める アンカーネットワークサービスは、MARパートナーのなかでも最大規模の出荷台数を誇る。年間の出荷台数が20万台にのぼり、OSをプリインストールした中古PCは5万~6万台流通させている。法人需要の掘り起こしで、これを年間12万台までに引き上げる考えだ。
MARパートナーに加わったのは2009年4月だった。中古PCの流通自体は、約10年前から携わっている。楽天ショップに出店したのは10年前で、受注件数は年間6000件、年商1億円で推移している。4年前にはベスト電器と業務提携契約を締結。ベスト電器小倉本店内で中古パソコンショツプ「エコミュニティマート」を運営している。買い取りからサポートまで一貫して請け負っている。
日本IBM
PCライフサイクルを支援する 日本IBMは、数少ないメーカー系事業者である。MARプログロムに参加したのは2010年と、最近のことだ。現在は「パイロット版を導入してみたり、品質を確認したりしているところ」(原部長)だという。
PCの導入計画・準備から調達、使用・管理、処分まで、IT資産管理のためのプログラームやツールを用意している。2009年1月に開始したFMV(Fair Market Value)リースは、市場価値に見合った残存価値を設定することで、少ない予算でも最新のIT機器を導入することができるサービスとなっている。3年ごとにリース契約を更新する仕組みであるため、製品テクノロジーの陳腐化を回避できる。リース終了の際には、リース期間の延長、その時点の価格での買い取り、返却のいずれかを選択する。
原部長は、「リース満了に伴う物件を、最適なアセットマネジメントのためにリユースで販売している。右から左に流す再生事業者とは大きく違う」と強調する。卸先の販売店は、ソフマップなどの家電量販店が中心だ。
エスエヌシー
サポートの充実に注力する 「中古PC市場は成長している。これまでは、ソフトウェアライセンスやサポートサービスの問題があったが、改善されてきている。中堅・中小企業の導入が進むのではないか」。エスエヌシーの川村篤雄・営業部専務取締役の見通しは明るい。今期(6月期)中に、法人向けに月間1000台を販売する目標を立てている。
MRRパートナーである同社は、年間6万~8万台の中古PC(OS未搭載含む)を取り扱っている。「年々、取り扱い台数は増加傾向にある。2009年度は前年比120%伸びた」(川村専務)。
法人向けには、ヘルプデスクやネットワーク構築の要員を充実させており、ユーザーが不安を抱きやすいサポートサービスに力を入れている。
全従業員約70名のうち、約50人がサポートサービスにかかわっている。パソコン使用方法などの基本的対応からシステムトラブル時の出張対応、OSリカバリーを含むハードウェア修理、ネットワーク構築・運用・保守などを手がけている。