マイクロソフト(樋口泰行社長)は年度末に向け、新OS「Windows 7」を法人へ普及・促進する施策を相次ぎ打ち出す。新OSに関連してパソコン環境などのシステム移行を支援するパートナーには、移行・導入検証の新サポートと、アプリケーションの互換性や移行などに関する日本語版の新ツールを提供。ユーザー企業に対しては、人感センサーデバイスを使って「環境配慮」できることを全国を巡回して提示する。同社では、こうした施策などの効果で、今年中に国内約200万台のパソコンを新OSに移行することを目指す。

大量導入の移行問題を支援

法人向けに「Windows 7」を販売開始したことを告げた2008年9月1日の記者会見で樋口泰行社長は「法人向けの反響は予想以上で、導入表明企業が発売前に163社に達した」と語った。
 新施策として2月中には、「Windows 7」の移行・導入支援に関するシステム提供やコンサルティングを積極的に展開する意思のあるパートナーに対し、移行・導入検証に関する新サポート事業を開始する。同社にある旧OSのWindowsXPや同Vistaに搭載のアプリケーションを「7」環境に移行するノウハウやツール類などを相次ぎ提供する計画だ。

 新サポートに関する具体的な内容は明らかにしていないが、「予想を超えて、中小企業で『Windows 7』への移行・導入が進んだ。次の段階として、年度末に向けて、旧OSに搭載のアプリケーションを移行したり、新ブラウザとの互換性などに課題のある中堅・大手企業に対する支援を強化する」(中川哲・コマーシャルWindows本部本部長)と、移行・導入を検討する企業などを支援するパートナーが迅速に支援できるように手厚いサポートを提供し「7」の移行・導入を加速させる。

 また、「7」への移行・導入を「やり切れなかった法人への救済策」(中川本部長)として3月には、「7」上で仮想XP環境を作り「7」のデスクトップから直接、XP用アプリケーションを起動できる「XPモード」のエンタープライズ版と呼べる製品のパートナー提供を積極的に行う。

 「XPモード」と対をなすエンタープライズ向けツールである「Microsoft Desktop Optimization Pack(MDOP)」のうち、旧OSの「Windows Vista」でユーザーの「不満の種」となっていたアプリケーションの互換性などの問題に対処するツール「Microsoft Enterprise Desktop Virtualization (MED-V)」を日本語版で提供する。「『MED-V』は、仮想化技術を使って旧OS上で稼働する古いアプリケーションを新OS上でも稼働させるツールだ。パソコン環境を新OSにアップグレードする際、事業部門など一部で使われている重要なアプリケーションで生じる互換性の問題を解決する」(中川本部長)と、同ツールを利用することで、旧OS環境を「7」へ簡単に移行・構築し、集中管理も提供できて中堅・大手企業の大量導入を促進できるという。

 一方、2月以降には、ユーザー企業などを対象に「7」の移行・導入を促すセミナーを全国数か所で順次開催する。このセミナーでは、移行・導入検証に有効利用できるツール類の説明をするほか、「7」に対応した人感センサーデバイスを活用した「温室効果ガス削減」に関するソリューションやシナリオを示す計画だ。中川本部長は「パソコンの消費電力を30%削減するスキームを提案する」と、国家的な「環境配慮」のブームに乗り「7」の普及を目指す考えだ。

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新OS“特需”、再来か!?

 昨年9月の記者会見で樋口泰行社長は、「Windows 7」の滑り出しが好調であることを声高に宣言した。前OS「Windows Vista」の事前導入表明企業が18社にとどまったのに比べて、「Windows 7」は、その10倍を超える163社に達したためだ。

 同社によると、9月の発売以来、毎月の「7」販売が、連続して前年同月比で2倍以上になっているという。家電量販店でのパッケージ販売とライセンス販売の両方を合算した数字だが、そのほとんどは「ユーザーが自ら導入したもの」(中川哲・コマーシャルWindows本部本部長)と、支援を行うまでもなく、予想を超えて導入が進んだという。

 その大半は、同社で「プロシューマSOHO」と呼ぶ中小企業。中小企業の場合、アプリケーションの互換性などの検証などが不要のため、比較的容易に導入できたのが好調の要因だ。

 9月の段階で同社関係者は、「店頭販売が始まる頃から、法人でも緩やかに導入が進む」と控え目に状況を分析していたが、中川本部長によれば「最も高い予測値で推移した」と、250台以下のアップグレード導入が急速に伸び、事例を公開できる企業が登場するまでに波及したという。

 次の段階として、古いOSに搭載しているアプリケーションやWebアプリケーションの場合、ブラウザとの互換性などを検証する必要のある企業へ焦点を定めている。とくに、新年度を迎えてIT投資を再開することが予想される中堅・大企業企業へ向け、普及促進に大きく舵を切ったといえる。

 国内のIT市場では、クラウド・コンピューティングの波が押し寄せ、クライアントビジネスが縮小傾向に向かうといわれている。そうしたなかで、OS変更による“特需”を期待するベンダーも少なくなりつつある。だが、マイクロソフトや同社のパートナーから得るポテンシャルは予想以上に高く、「7」が不況下にあってIT需要を下支えする存在になりそうだ。(谷畑良胤)