Why?「電子化」
中小企業にも
電子化ニーズあり
富士ゼロックスが「バイタル・レコード・マネジメント」を自社に展開する際には、地震など純粋リスクへの対応とビジネスリスクを軽減する部分で「説明責任」を担保するために、重要文書を特定するところから始めた。分別した文書は、総務部や法務部、営業部など別に「活性化文書(月に1回以上閲覧する文書)を電子化し、それ以外(不活性文書)を東京本社など免震構造を施した「レコードマネジメントセンター」に保管する。内田グループ長は「バイタル・レコード(重要文書)は、企業がもつ全文書量の2~7%しかない。文書に定義づけて保存すれば、事業継続計画と関連した電子化ができる。継続できる管理システムをつくることが重要」という。
同社は、これを「文書管理ソリューションサービス」として、文書管理規定やガイドラインの作成などを支援する「コンサルティング」から複合機やスキャナ、文書管理システムを連携させた「システム構築」、出力機器の統合管理や電子化自体を請け負う「アウトソーシング」に区分して、ユーザー企業に提供している。
コダックでは、電子化ニーズの高まりを受け、同社のスキャナを使って手軽に企業内で電子化に取り組めるようにするため、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)製品と連携したフロントオフィス系の「パートナー・ソリューション」と、地方自治体や病院などに特化した業種業務に適用したソリューションを展開中だ。
フロントオフィス系では、名刺管理ソフトやグループウェア、顧客管理システム(CRM)など、多くのISV製品と連携したソリューションを構築した。コダックの小型スキャナ「ScanaMate i1120」などでスキャンした名刺をアクシスソフトのSaaS型名刺管理システム「名刺バンク」に整理・保存し、スマートフォンなどの端末から簡単に情報を得られる仕組みなどがそれだ。また、OSKの統合型グループウェア「eValue NS」と連携させ、製造業で使われる設計図面(CAD)を必要な時に出力できる仕組みなどを提案している。
西巻本部長は「企業内ドキュメントの電子化は、中堅・大企業でニーズが高いが、事業継続を考慮すれば中小企業のほうが重要な事柄だ。事業継続に限らず、営業や生産性の効率化で電子化ニーズは高まる」と説明する。
スキャン製品ではコダックと競合するキヤノンマーケティングジャパンは昨年10月から、ECM(Enterprise Content Management)と連携した業務アプリをSOA(サービス指向アーキテクチャ)で効率よく構築できるサービス基盤「ECM拡張サービス」を提供している。「非構造データを含めて社内データを部分最適から全体最適にする動きが活発化した」(西尾光一・ECM企画課長)と捉え、大手企業を中心に企業内の紙文書を電子化して効率的に運用するニーズの高まりに応えた。
同社はこれをさらに推進するために、EMCジャパンと提携し、大量の紙文書を電子化して一連の業務フローを効率化できるEMC社製の「Captiva InputAccel」を使った提案を強化する。
「『Captiva InputAccel』は米国で高い実績を誇る。公文書管理法への適用を目指す自治体などへ売り込む」(同)と、電子化ニーズへの対応で製品強化も図っている。
How?「電子化」
販売会社の“穴”埋める
仕組み多数
企業内の文書を電子化する際、まず思いつくのはスキャナだ。スキャナと連携したドキュメント管理ソリューションは目にするが、スキャン機能を搭載するデジタル複合機(MFP)と連携したソリューションは意外と少ない。リコーは昨年1月、使い慣れたパソコンからMFPを操作できる複合機活用ウィジェット「App2Me」のダウンロード提供を開始した。「App2Me」のアプリケーションはスキャン機能に限らないが、「オフィス内で身近に複合機がありながら、ビジネスパーソンの多くは自前でスキャナを購入するなどで、電子化を図っている」(安達真一・SMBソリューションマーケティンググループシニアスペシャリスト)と、主に企業内個人が自分でもつ非構造データを電子化するニーズなどに応えようと、このウィジェットを売り込んでいる。
「App2Me」は、必要なウィジェトをパソコン画面上に置けば、対応するMFPの操作パネルにもウィジェットが反映され、そのウィジェットを選択してスキャニングするだけで、紙文書を電子データとして自分のフォルダに保存することができる。現在提供中のアプリには「Scan to Evernote」があるが、これはスキャンデータをパソコン経由でEVERNOTEのクラウドストレージにデータをアップロードできるもの。安達シニアスペシャリストは「複合機を有効活用してもらうための機能だが、文書管理システムなどのISV製品に連携製品を開発してもらい、もっとアプリを増やして販売会社のサービスとして提供を増やしたい」と、中小規模の企業での電子化対応などを支えるウィジェットを多く開発し、同社直販部隊やMFP販社の提案に組み込んでいく考えだ。
富士ゼロックスも、中小企業向けの重要文書管理を強化している。ネットワーク端末を企業内に配置し、インターネットで同社と繋げば、ウイルス対策やファイアウォール、インターネットVPNまで、企業のIT活用に不可欠なセキュリティ環境を提供できる「beat」のなかで、「重要文書管理ソリューション」の提供を3年前に開始。この販売を大震災後に再度積極化している。beat担当の工藤雪夫・NWSマーケティンググループ長は、「東日本大震災の発生以後、当社には、事業継続や計画停電、在宅勤務に関する問い合わせに加え、重要文書管理環境を短期間で構築したいという要望が数多く入った」と話す。これを受けて同社は、MFP「ApeposPort」などでスキャンしたデータをbeat経由で、国内3か所の同社データセンターに利用企業独自のフォルダ様式で保存できるソリューションを押し出し、プリンタディーラーなどを通じた販売を強化している。
一方のコダックは、前述したISV製品と連携したフロント系の製品をSIerを経由した販売を積極化するほか、同社スキャナを大量に所有するデータエントリー会社を利用した新たなASPサービスを今秋にも開始する。このサービスは「Kodak Document Imaging Service(KDIS)で、同社が提供するアプリを購入し、紙文書を電子化する企業がポータルから申し込めば、データエントリー会社に紙文書が割り振られ、電子化と保存管理をアウトソーシングすることができる。ターゲットは大企業の部単位、中小企業、弁護士や司法書士事務所、クリニック、地方自治体などだ。西巻営業本部長は「ASPサービスなので、必要な時だけ使うことができる。したがって、電子化コストを大幅に削減できる」とメリットを語る。KDISも、ISVやSIerを経由して販売していく方針だ。
企業システムを構築するベンダーは、これら各社の電子化ソリューションを使った提案を行うことで、基幹システムからノウハウのない文書管理まで一貫した提案ができるようになるというわけだ。
事例
エヌ・エス・エム社
レセプトのオンライン請求に注目  |
| 青山尚憲副社長 |
今回の大震災では、多くの病院や診療所が津波に襲われ、カルテや診療記録など重要文書を失った。これを受けて、被災地やそれ以外の病院では、事業継続や受診者の継続的な診療を可能にするため、重要文書を院外へ電子保管するなどバックアップ体制を整える動きが活発化している。
東海地震の防災対策強化地域に指定され、2006年からカルテなどのスキャン電子化をしてきた浜松医科大学付属病院などのシステムを提供しているエヌ・エス・エム(NSM)には、全国の医療機関から問い合わせが入る。青山尚憲副社長は、「紙カルテをイメージファイリングで保管して、カルテや医療データの保管・検索を可能にする『カルテ専用ファイリングシステム』やレセプト(診療報酬明細書)のオンライン請求に関係するシステムなどに対する関心が寄せられている」と話す。
病院には、医師法などでカルテなどの診療録の法定保存期間(5年間)が義務づけられているほか、レセプトが止まれば医療機関の収入が途絶える可能性がある。青山副社長は「診療録を失うと、過去の投薬の記録を参照して適切な薬を処方できず、アレルギー体質の患者にも対応できない。被災地では、医療チームが交代制で避難所などの診療を続けているが、交代時に紙カルテをどう引き継ぐかが課題になっている」と、被災地にスキャナと同社システムを持ち込み、これら課題解決に結びつけることもできると話す。
NSMは、浜松医科大付属病院に対し、NECと組んで同社が提供するHIS(病院内の情報を電子的に管理するシステム)と連携した診療情報データの一元化を実現した。
「医療機関にシステムを導入する大手SIerなどからの問い合わせがあるなど、医療情報として残る紙文書を電子化するニーズは高まっている」(青山副社長)と、診療記録のECM(エンタープライズ・コンテンツ・マネジメント)などの販売を積極化していく方針だ。