景気後退の影響で、“コスト削減ソリューション”が人気を集めている。仮想化技術の活用によるサーバー統合や、ウェブ会議システムがその代表例だが、この流れに乗ってジワジワと存在感を示す機器がある。それがスキャナだ。企業内に点在する文書をデータ化して保存する仕組みを構築することで、コストを削減できるほか、電子化することで迅速に必要な文書を探し出せることが生産性向上につながると評価されている。いま、スキャナを活用した電子文書ソリューションが受け入れられ始めている。
コスト削減で強まるニーズ
2004年11月に制定され、翌年4月1日に施行された「電子文書法(e文書法)」。税法や商法などの各法令で、企業が作成・保存することが義務づけられている文書・帳票を、データでも認めるという内容の法律だ。この法律が施行されたことで、企業内に点在する紙文書の電子化が一気に進むはずと、IT業界は特需を期待した。しかし、その当時は文書電子化の必要性やメリットを感じるユーザー企業が少なく、「電子文書管理」という市場は創出されたものの、特需を生むほどの爆発力はなかった。
だが、現在、その状況は変わりつつある。08年以降の不況で業種・業態、規模を問わずコスト削減が至上命題になり、紙文書の保管・印刷コストを削ろうと動き始めたからだ。まず既存の紙文書を電子化すれば、保管スペースを縮小できる。そして、その後は文書を電子化する動きが自然と生まれ、印刷コストが圧縮できることになる。
効果はそれだけにとどまらない。紙文書がデータ化されれば、閲覧・編集したい文書を情報システムで検索して容易に見つけ出すことができ、キャビネットからいちいち探し出すよりも大幅に手間が省ける。関連書類の紐付けや一元管理も、情報システム上で行ったほうが簡単だ。今回の不況を機に、ユーザー企業や団体はこうした効果に気づき始め、導入がジワジワと進んでいるのだ。
文書管理ソリューションのニーズの高まりに歩調を合わせるように、その関連機器であるスキャナが法人に導入され始め、今後も成長する可能性が出てきた。電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、2011年のイメージスキャナ出荷予測(輸出も含む)は、08年に比べて台数は9%増の372万台、金額は14%増の861億円とプラス成長が予測されている。この内訳をコンシューマ向けと業務(法人)向けで分けると、コンシューマ向けは台数が5%減の246万台で、金額が8%減の163億円。一方、法人向けは台数が51%増の126万台、金額が21%増の683億円。市場をけん引するのは法人向けということが明らかになっている。
パーソナルスキャナが人気
では、スキャナと組み合わせた電子文書ソリューションの需要が強い分野はどこなのか。まず挙げられるのが、官公庁や自治体だ。公共機関は大量の紙文書を保有するところが多く、保存と管理に手を焼いている。民間企業でいえば、設計図などの機密性が高い文書を保有する製造業が中心になるだろう。
一方、求められるスキャナは多様化している。一度に大量の文書をスキャンするハイエンドモデルから、個人で利用する小型・低価格機器まで、さまざまなモデルがラインアップされており、企業や団体のニーズにより、売れているモデルも各様だ。そのなかでも、とくに伸びているのが、小型・軽量で低価格なパーソナルモデルで、企業が購入するケースが多い。少人数の部門やワークグループで小型スキャナを導入し、部門ごとに名刺や文書をスキャンして共有。各部門にあるデータを、情報システム部門が全社的な文書管理システムで一元管理する動きが強まっている。
緩やかな成長にとどまっていた文書管理ソリューションだが、コスト削減と生産性向上、業務効率化を一挙に実現できることが今の時代にマッチし、ヒットの兆しがみえてきた。SIerなどは、ユーザー企業に対してスキャナを含めた文書管理システムを提案の一つに加えることによってビジネスの幅を広げることができる時代になってきた。(木村剛士)