ユーザーの実態に即した価格を用意 日本マイクロソフトは、今年6月29日、「Office Web Plus」と「Exchange Online」「SharePoint Online」「Lync Online」で構成するクラウドサービス「Office 365」を発売した。「Business Productivity Online Suite」の後継版という位置づけだ。 管理機能を簡略化した小規模向けメニュー「プラン P」が1人あたり月額 600円で、また数人から数万人まで幅広く利用可能な中規模から大規模向けメニュー「プラン E」が1人あたり月額1000円からとなっている。
磯貝直之・Office ビジネス本部クラウドサービスマーケティング部部長は、「ユーザー企業のIT投資金額の実態を鑑みて導入メリットを感じられる価格設定にした。『プラン E』は、コンサルティングファームを通じ、米国の複数ユーザーが導入しているメールシステムの運用にかかるコストを試算した。その結果、月額12ドルほどだった。『プラン E』の価格は、この水準に準拠している。『プラン P』は機能やサポートなどを制限して、金額を抑えた」と説明する。
「プラン P」は、従業員1~25人規模の企業が主なターゲット。鷲見研作・Office ビジネス本部クラウドサービスマーケティング部エグゼクティブプロダクトマネージャーは、「中小企業では、まだグループウェアの利用が十分に進んでいない」とみており、新たに打ち出した「Office 365」でさらなる新規ユーザーの開拓を狙っている。
ユニークな課金体系で差異化 シンプレクス・コンサルティングは、リアルタイム・トレーディング・ツール「SPRINT」の後継版で、金融商品取引システムのクラウドサービス「Voyager Trading Cloud」を提供している。外国為替証拠金取引(FX)の取引所取引「くりっく365」のサービスを提供しており、2012年以降、FXの相対取引(OTC)や先物オプション、差金決済取引(CFD)に順次対応する計画だ。
独自開発の専用プラットフォーム「Galaxy」を採用し、高速メッセージングとオンメモリーデータベースによるデータの高速処理を可能にしている。
目を引くのは、月額の成功報酬型課金で提供している点。システム開発で主流の人月単価ではなく、「どれだけ企業の収益を伸ばしたか」に着眼して、「Voyager」を打ち出した。金融機関ごとのサーバー構成や保守などを踏まえて個別協議し、基本料金を決定している。そのうえで、金融機関の収益基盤や出来高、ユーザー数、成長性などを考慮し、インセンティブ係数を決定している。
金子英樹社長は、「これまで当社のサービスを利用していなかった金融機関、あるいは『SPRINT』のユーザー企業が『Voyager』に乗り換えることで、どれだけ収益が向上するかを客観的に測る。その差額分が『Voyager』が与えた超過リターンで、何割かを回収する」と説明する。
Voyagerを提供するにあたっては、3~4か月間におよぶコンサルティングを想定している。金子社長は「実績を上げていけば、1~2か月に短縮できるだろう」と話す。
今期は、「SPRINT」から「Voyager」へのリプレースを主に推進し、来期から新規開拓に乗り出す方針だ。
無制限モデルで「システム投資の見通しが立つ」 米ネットスイートは、世界で急成長しているグローバル企業向けに、クラウド型業務アプリケーション「NetSuite OneWorld」のリソースを無制限に利用できる「NetSuite Unlimited」を発表した。ユーザー数のほか、機能拡張のためのモジュール、同社パートナーが開発したアプリケーション「SuiteApps」、データストレージなどがすべて無制限となっている。
これまでに、小規模企業向けの「Limited Edition」と中小企業向けの「Midmarket Edition」、中堅規模以上の企業向けの「Enterprise Edition」を提供してきた。ザック・ネルソンCEOは、「『NetSuite Unlimited』は、大企業向けにデザインした『NetSuite OneWorld』のバージョン」だと話す。
最初のユーザーとして、グローバルで急成長を続けている米グルーポンが導入している。オーストラリア、ニュージーランド、タイ、韓国、オランダの5か国に6週間で展開することに成功し、年内には46か国にまで拡大する計画を掲げている。
ネットスイート日本法人の田村元社長は、「これまでは、すべての海外拠点にシステムを展開する際にはかなりの資金が必要だったが、『Unlimited Edition』で利用したいだけ利用できるとなれば、システムへの投資の見通しが立つ。これは企業にとって大きなメリットになる。シンプルに『この金額で済む』というのは、とても魅力的に映るはずだ」と強調する。
記者の眼
SMBにとっては、サービス事業者が提供しているクラウドサービスの課金体系は複雑でわかりにくい場合が少なくない。クラウドサービスに関するノークリサーチの調査では、SMBはシンプルな課金体系を望んでいることが明らかになった。
サービス事業者によっては、課金体系、価格別のシンプルなサービスプランをわかりやすく提示したり、あえて個別対応の成果報酬型モデルを採用したりしている。「サービスプランをどう決めればいいのか」と悩むサービス事業者が少なくない状況下にあって、独自ノウハウが詰まったサービスプランのメリットを、ユーザー企業に対してきちんとアピールすることが優位性につながる。