企業を取り巻く経営環境は劇的に変化しており、変化に対応できる人材の確保、育成が喫緊の課題となっている。そんななか、注目を集めるのがタレントマネジメントだ。国内のITベンダーは、グローバルでの実績はほとんどないものの、“日本仕様”で企業のニーズを掴み、支持を高めつつある。(取材・文/信澤健太)
業務アプリの次なる“儲けの鉱脈”
グローバル仕様か日本仕様か
業務アプリケーションの次なる“儲けの鉱脈”として、タレントマネジメントが脚光を浴びている。
タレントマネジメントとは、企業の競争力の源泉となる人材の採用から配置、育成までを一貫して管理する仕組みである。機能は、ワークフォース・プランニングや人材獲得、従業員パフォーマンス管理(EPM)、キャリア開発、後継者管理、学習・報酬管理などが挙げられるが、製品によって実装する範囲は異なる。
終身雇用制度の崩壊や雇用形態の多様化、少子高齢化、グローバル進出の加速化──。以前、本紙は、リクルート業務の効率化や人材配置などの動きが活発になるにつれて、人材獲得やEPMを導入する機運が一部で高まり、優秀な人材を獲得する後継者管理の重要性も認識されるようになってきていることを報じた(2011年6月20日号)。日本企業を取り巻く事業環境が急速に変貌を遂げているなかで、タレントマネジメントシステムを開発・販売する業務アプリケーションベンダーが攻勢をかけている。
SAP傘下ベンダーのサクセスファクターズやサバ・ソフトウェア、サムトータル・システムズといった外資系ITベンダーが提供するパッケージ/サービスは、世界各国で共通して利用できる“グローバル仕様”である点が特徴となっている。世界各国で異なる従来の人材管理方法・基準を統一し、タレントマネジメントシステムを展開するというシナリオを得意とする。書類や文書管理ソフト、地域ごとの個別システムなどを利用してきた人事プロセスを統合して自動化するタレントマネジメントシステムをアピールすることに力を注いでいる。
一方で、国内ITベンダーが提供するパッケージ/サービスは、日本企業ならではの雇用形態や人材育成に対する姿勢を踏まえて開発されている“日本仕様”であることが外資系のそれと大きく異なる。グローバルでの実績はほとんどないが、国内企業のニーズに応えやすくて運用しやすいので、少しずつ支持を増やしている。“本丸”である日本本社の社員向けに展開するニーズはこれからさらに高まる機運をみせている。
流行をつくる外資勢と慎重な国内勢
SNS(ソーシャルネットワーキング・サービス)やクラウド、ゲームデザインの技術やメカニズムを他分野に応用するゲーミフィケーションといった最新の潮流に対して、意欲的な姿勢をみせるのが外資勢だ。サクセスファクターズやシルクロードテクノロジー、サバ・ソフトウェア、オラクルなどである。
オラクルの「Oracle Fusion Applications」では、従業員のプロファイルに「アクティビティおよび関心」「勤務可能性」「キャリア計画」「コネクション」「開発および成長」というタブを設け、マネージャーは部下のアクティビティストリーム上に残されたコメントを確認したり、コンピテンス・ギャップ(強みと弱み)を把握したりできる。シルクロードテクノロジーの「SilkRoad Point」は、最近のコンテンツの投稿量やファロワー数などを通じて、従業員の社内への影響力を測る。クラウドに関しては、海外産の製品のほとんどが対応している。
これに対して、国内ITベンダーの意欲の傾け方はさまざまだ。サイエンティアは、SNS対応を積極的に進める考えを示している。藤井薫・取締役第2事業部長は、「システム上で従業員が他の従業員を検索するには制限がかかる。全従業員が使えるシステムとしてSNSを活用できないかと考えている。コアの人事情報ではない“見せる用のページ”というイメージだ」と語る。対照的にワークスアプリケーションズは、冷めた見方をしている。「すでに社内掲示板の機能があるが、あまり使われていないようだ。一部の人しか書き込まず、日本人にはあまり向いていないのかもしれない」(板倉大樹・グローバルビジネスサポートグループマネジャー)。クラウド対応はまちまちだが、ライセンスを提供してIaaS上で稼働させる手法が主流となっている。
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