ここにある“日本仕様”導入の余地
グローバル統合管理は道半ば
タレントマネジメントシステム市場で、ITベンダーがよく競合に挙げるのが、グローバルで豊富な実績をもつサクセスファクターズだ。グローバル化が進むなか、日本本社から海外の現地法人にまたがって人材を統合管理したいというニーズに応えるサービスとして支持を得ている。KVHやアビームコンサルティング、NECなどは、サクセスファクターズのユーザー企業である。外資系の製品に対して、国産製品を開発するITベンダーはどう対応するか。口を揃えてグローバル対応の必要性を認めつつも、できることから取り組み、“日本仕様”の重要性を説く。
そもそも、ITベンダーがアピールしている機能を使いこなせていない導入企業の実態を直視する必要がある。多くの場合、人材とシステムのグローバル統合管理は、まだ到達し得ないゴールなのである。
ワークスアプリケーションズの竹市栄治・製品開発本部COMPANY人事・給与運用改善グループ/機能強化グループゼネラルマネジャーは、「まだ多くの場合、人事評価につなげるための元情報をきちんと加工して入力することで、人材を見える化するという段階にとどまっている」と指摘する。同社の板倉マネジャーによると、「当社のユーザー企業600社にアンケートを採ったところ、グローバルで人材を把握できている企業は数%にすぎなかった」という。
カシオヒューマンシステムズの場合は、「日本企業は、人材開発や研修などの運用が単独で成立していて、縦割りでバラバラの状態を統合するのはむずかしい。であれば、通常の業務ルーチンを変えずにデータを統合し、まずは状態の見える化から提案している」(佐藤政弘・人事統轄部統轄部長)。ユーザー企業は、教育・研修への投資対効果を測ったり、活躍している人材を分析することで採用活動への投資を最適化しようとしているという。
“日本仕様”は過渡期か
「一人のスーパーマンを育成するよりも、組織単位で質、量をどう見える化するか」「海外は“ジョブ基準”だが、日本は“人基準”」「日本では職種をまたがった異動があるが、海外にはない」「日本は組織の流動性が低く、ポジション管理が厳密ではない」などなど。今後、こうした独自性をもつ日本企業が進む方向を見定めるのは難しい。タレントマネジメントは、社内に散在するデータの見える化からグローバルレベルでの個別最適を経て、グローバル共通のシステムにまで発展するのか。「日本的組織管理は、国内でしか通用しないのか。グローバルでは試されていないからわからない」(インフォテクノスコンサルティングの大島由起子セールス・マーケティング事業部長)という意見がある。
サイエンティアやカシオヒューマンシステムズ、インフォテクノスコンサルティングは、当面は国内のみの展開や多言語対応を進めるという方針だ。インフォテクノスコンサルティングの大島事業部長は、「日本企業にとって、グローバル化に伴って現地の人材をどのようにマネジメントするかという課題がある」ことに触れ、「しかし、どれだけの企業がグローバルでのシステム導入を必要としているだろうか。当社のユーザー企業である47社のうち、グローバル企業であってもメインは日本の社員。まずは、日本本社のマネジメントが重要になるはずだ」と語る。
サイエンティアの藤井取締役は、「経営層はグローバルで統合管理したいと考えている企業が多い。一般社員に関しては、ローカルで管理するのが現実解になる」とみる。ローカルニーズを満たせるのが、「SmartCompany」というわけだ。
ワークスアプリケーションズの竹市ゼネラルマネージャは、「業態によって異なるだろう。例えば、金融であれば各国の事情に合わせた商品やスキルが必要となるので、人事評価の仕組みも異なってくる。方向としてはグローバルで統一だが、個別に管理するケースも生まれる。一方でトップ層は統合管理したい、中間層もある程度はスキル評価できるようにしたいという思いを抱えて、ジレンマがみられるようになるだろう」と分析する。こうした状況下で、ワークスアプリケーションズにとっての有効な提案は、同社のユーザーである三菱ケミカルホールディングスの事例にみてとれる。
三菱ケミカルから受注した事例は興味深い。各事業会社の本社人事部門では、海外法人における経営幹部や将来の幹部候補といった重要な人材の把握が不十分だったので、本社ベースでのグローバル人事データベース整備が求められていたという。
ただ、全世界のグループ企業を対象に共通の人事データベースを構築する際に、各国で各々管理していた評価や職務グレードなどの統一をすると、多額のコストと多くの時間を要してしまう。三菱ケミカルは、海外拠点の現行システムを無理に統一することなく、人事情報を収集できる選択肢を選んだ。「COMPANY」が実装しているグローバルリンク機能を通じて、各国が独自に採用している評価手法やグレードの情報をそのまま吸い上げて、グローバル人事データベース用の管理項目に自動変換。同一の指標上で情報を蓄積する。まずは、幹部社員向けにタレントマネジメントを活用する意向だ。
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