ありのままのIT業界
先進的なテクノロジーが次々と登場する。つられて、魅力的なソリューションが次々と登場してくる。キャッチアップしたエンジニアが輝きを増す。IT業界が活性化していく。クラウドの注目度は増すばかりだが、もちろん、それだけではない。本紙で紹介した特集企画から、「あ・り・の・ま・ま」をキーワードに2014年を振り返る。
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ウェ“ア”ラブル端末が動く
次々と登場する新たなハードは、エンタープライズITにどのような影響を及ぼすのか。なかでも注目すべきは、ウェアラブル端末だ。本紙では特集で最新動向を紹介しただけでなく、連載をスタートするなど、注目分野の一つと捉えて記事化に取り組んでいる。
ウェアラブル端末は、一般オフィスから運輸、接客サービスに至るさまざまなB2B領域での活用が期待されている。そのため、2014年は、さまざまな実証実験が実施された。
ウェアラブル端末は、より豊かな想像力が開発側に求められる。キーボードやマウスなどを使って情報を入力するという従来の情報処理とは、情報の表示や入力の方法が大きく変わるからだ。それと似た考え方が、「3Dプリンタ」「ロボット」にも適用できる。それゆえ、新たな才能をもった開発者の登場が期待される。

(9月29日号 vol.1548 掲載)り
「女性“リ”ーダー」の登用で何がどう変わるか
経済活性化の一環として国が力を入れている「女性の活躍促進」。IT業界でも、リーダーとして活躍する女性が増えてきた。IT業界において大きな影響力を持つリーダーの一人が、米IBMの会長・社長兼CEOであるバージニア・ロメッティ氏。日本では、江田麻季子氏がインテルのトップを務めている。
優秀な人材を育成するための、各社の取り組みも活発になっている。日立製作所は、2020年度までに女性管理職を1000人にすることを目標にしている。女性リーダーの登用によって、グローバルでの競争力の向上を図ろうというわけだ。日本IBMは本社内に保育園を設けるなど、子育て支援で、女性が働きやすい環境をつくり、優秀な人材の確保につなげている。IT業界は今、深刻な技術者不足が続いている。優秀な女性が活躍する場をいかに用意するかも、IT業界活性化策のカギとなる。

(6月16日号 vol.1534 掲載)の
ITで農業を革新!
農業は、これまでITベンダーにとっての未開拓分野であった。しかし、クラウドやモバイル、センサなどの最新技術を活用して農産物の安定生産を実現するソリューションが、続々と誕生している。IT化の市場が立ち上がり始めたのだ。
調査会社のシード・プランニングによると、2013年の農業IT化の市場規模は66億円(推定)で、2020年には580億~600億円までに拡大するという。なかでも、農業クラウドサービスは、2020年には2013年の約28倍となる440億円まで拡大するとしている。
農業経営の変化もIT化を後押ししている。とくに顕著なのが、大規模な農業経営体の増加だ。大規模化によって、IT投資の効果を得やすくなった。さらに、IT活用に慣れた他業種からの新規参入企業も増加している。IT活用事例が増えれば、中小規模の農家にも波及することになるだろう。

(3月31日号 vol.1524 掲載)ま
出揃った国産大手ベンダーのC“M”P
国内大手グループ3社のクラウドマーケットプレイス(CMP)が出揃ったのも、2014年であった。2013年5月、NECは「クラウド型ビジネスプレイス N-town」を発表し、同年10月にサービスインした。その4か月後の14年2月には、富士通グループのSMB事業を担う富士通マーケティング(FJM)が、「azmarche(アズマルシェ)」をオープンした。一方で、日立グループの日立システムズは、14年1月に「オープンクラウドマーケットプレース」と名称を変えてリニューアルした。
クラウドによってシステムを導入しやすくなったことから、SMB分野でもIT活用が進むと期待されてきた。しかし、なかなか浸透しきれていない。何が最適なサービスなのかが把握できないことが原因の一つになっている。そのことを勘案すれば、日本のSMB事情を熟知した国内大手のCMPがカギを握っていることがわかる。

(9月15日号 vol.1546 掲載)ま
さよなら、“マ”ーティン
日本IBMのマーティン・イェッター社長は2014年いっぱいで退任し、15年からは米本社の経営幹部を務めることになった。イェッター社長が日本IBMのトップに就任したのは、12年5月。実に56年ぶりの外国人社長であった。後任については、本稿執筆時点では不明だが、米IBMのトップが“クラウド女子”としてクラウド業界をけん引するロメッティ氏だけに、日本でも女性社長の就任が期待される。
2014年は、多くの外資系日本法人でトップが交代した年でもあった。そのなかでトップが退任したまま、日本法人専任のトップが就かないケースが目立っている。大手では、日本HPやシマンテック、シスコシステムズ、F5ネットワークスジャパンが挙げられる。適任者がみつからないのか、他地域との兼任社長を貫くのか。外資系企業の日本市場の評価を垣間見ることができる。

(12月1日号 vol.1557 掲載)2014 新語・注目用語
●ベアメタルクラウド 物理サーバーを直接利用するベアメタル方式のクラウドサービス。従来の仮想サーバーよりもパフォーマンスが高いのがメリットである。IBMの「IBM SoftLayer」が対応したことで、広く認知されるようになった。
(9月1日号 vol.1544参照)
●CMP クラウドマーケットプレイスの略。CMPでは、中堅・中小企業をターゲットとして、主にSaaSを取り扱う。ユーザー企業には、さまざまなサービスを大手企業が運営するマーケットプレイス上で選べるというメリットがある。
(9月15日号 vol.1546 参照)
●フルターンキー 鍵を差し込めばその場で使えるというのが、フルターンキーのコンセプト。一般的にはプラントの輸出や建設工事などで使われることが多い用語だ。IT分野では、ハードとソフトの融合で付加価値を高める狙いがある。
(9月15日号 vol.1546 参照)
●ブラソル ブラウザソリューションの略。クライアント側には、ウェブブラウザさえあればいいというソリューションを指す。HTML5が10月28日にW3Cの勧告となったことから、ブラソルはまずます普及すると考えられる。
(11月10日号 vol.1554 参照)
●iPSサービス クラウドのサービスが多様化し、さまざまなニーズに応えられるようになったことから、IaaS/PaaS/SaaSの頭文字を取って、iPS(万能)サービスとした。クラウドと同義だが、万能になったことによる出世用語として使用。
(10月27日号 vol.1552 参照)
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