Road 5
「社長兼CIO兼総務部長」の補佐
日本でSIerの得意先であるユーザー企業が、海外進出にチャレンジする。日本だけでなく、現地のIT環境の構築・運用もサポートしてほしい──。そんな声に応えて、海外市場に進出するITベンダーは多い。とくに最近の傾向として、海外に進出するのは、ユーザー企業もITベンダーも、初めて海外に出た中堅クラスが多いということだ。
初めての海外拠点。不慣れな環境で投資も人員も乏しいケースが大半。結果、現地に派遣されたトップは、現地法人の社長とはいえ、総務や経理の面倒をみることに……。ITインフラの調達も学ばなければならないので、情報システム部門も兼務することになる。
こうした状況だと、ITベンダーは単なるITソリューションの提供だけでは不十分かもしれない。現地法人の設立手続きやオフィスの設置、経理、人材採用といった拠点設置に関連するあらゆるサポートを提供できれば、ビジネスチャンスは広がるはずだ。
ビジネスブレイン太田昭和(BBS)は、2014年にタイに現地法人を設立した。BBSは、会計関連のIT製品の販売が得意な企業。海外では、日本本社の経理担当者が海外法人の会計情報をウェブで閲覧できるクラウドと、現地法人の業務改善コンサルティングサービスを提供している。自社単独での提供が困難な場合は、現地企業とアライアンスしてサービスを提供する体制を整えている。タイ法人の社長を兼務する松江芳夫・グローバルソリューションサービス本部本部長は、「日本の海外法人のトップは業務過多で悲惨な状況。経営に集中できていない。私たちは、経理部長とITマネージャーを代行して現地法人の社長を助けるサービスを標榜している」と表現する。
同じ企業でも日本と海外では事情が異なる。ITとBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスをセットで提供する動きは、日本でも進んでいるが、海外ではより一層求められている。経理部門と総務部門、IT部門をトータルで支援する企業は、重宝されるはずだ。
記者の眼
従来型SIは急スピードで崩壊する──。2014年、SI業界を何かと騒がせたこの論調には、どうも引っかかりを覚えていた。
クラウドの登場やオフショア開発の定着、ユーザーが求める新規システムの構築に対するスピードが従来に比べて速まっていることなどで、これまでのSIスタイルが通用しなくなるという趣旨だ。この見方を否定するつもりはないが、それが一気に進むとも思えない。
十数年前に始まったシステムのオープン化。ユーザー企業は、オープンシステムの利点を感じてリプレースしたものの、メインフレームを好むユーザーは今でも存在する。いわば「共存」だ。このシステムのオープン化と同じように、これまでのSIはある領域では、将来も一定のポジションを保つだろう。SIは崩壊するのではなく、進化するというのが正しい。
2014年は、消費増税に対応するシステム増強や、「Windows XP」のサポート切れなどが好材料になって、ITビジネスは順調だった。一時的に人員不足の状況になるほど、市場は活況だったといえる。2015年は、「Windows Server 2003」のサポート切れによるシステムのリプレースや「社会保障・税番号(マイナンバー)制度」関連の需要がある。ある程度、今のままでビジネス展開する機会がありそうだ。とはいえ、国内IT産業の中期的成長率は、1.9%(2013~18年の年平均成長率、IDC Japan調べ)と微増にとどまる。新たなマーケットへの進出、新しい製品・サービスの提供は成長には不可欠だ。
今回、『週刊BCN』編集部は五つの新たな道を提案したが、このほかにもアイデアはたくさんある。今こそ、リスクを恐れずに、新しい取り組みに積極的にチャレンジしていただきたい。
「私たちは、攻めのIT投資をすべてのお客様に提案・推進することができているかと問われれば、疑問が残る。お客様の要望は変化しており、それに合わせて私たちも常に変わっていかなければならない」。大塚商会の大塚裕司社長は、2014年末にこう語り、2014年上期(1~6月)に過去最高の売り上げを記録したなかでも、絶えずチャレンジすることの大切さを説いた。胆に銘じておきたい姿勢である。