人工知能で仕事が変わる! なくなる!?
Enterprise AIとの賢いつき合い方
人工知能でよくある議論が「人間の立場はどうなるのか?」である。人工知能が人間を超えるとされる「2045年説」が正しいかどうかはともかく、そのための開発が進むのは間違いない。ただ、実現するのは30年ほど先の話。現時点では、人工知能と胸を張って呼べるほどの機能はないが、ビジネスの現場での活用は確実に進んでいる。今までの情報システムをより使いやすく、便利にする。システム開発の現場も、大きく変えていく。それがEnterprise AIだ。
●システム開発が変わる! 
日立製作所
平山淳一
研究開発グループ
知能情報研究部研究員 業務システムの歴史は、効率化の歴史でもある。ビジネスの現場にコンピュータが進出して以降、情報の記録やデータの処理など、コンピュータが得意とする分野を人間に変わって担ってきた。
十分な成果を上げてきた業務システムだが、成果を上げれば上げるほど“もっと”の要求が出てくる。さらなる効率化に向けて、日立製作所で取り組んでいるのが、人工知能を業務システムに適用するという取り組みだ。
「従来の業務システムは、設計された固定の手順、つまり仕様通りに動作していて、ビジネス環境の変化に対応するには、設計を変える必要があった」と、日立製作所の平山淳一・研究開発グループ知能情報研究部研究員は、これまでの業務システムの課題を挙げる。そこで日立は、物流業務において、需要変動や現場の改善活動を理解して、プログラムを自動更新する人工知能の搭載に取り組んだ(図)。
この取り組みは、人工知能によって物流倉庫の作業を指示するだけでなく、その結果を分析して、プログラムも自動更新するというところがポイント。これまでは現場の変化によって、業務システムの仕様を変更し、プログラムを修正するといった対応が必要だったが、その部分を人工知能が担ってくれる。いわば、“オート・アジャイル開発”である。「人工知能は、使えば使うほど賢くなる」と平山氏。人工知能を適用することで、稼働後に発生する現場の要望を反映するなどの追加開発が不要になるというわけだ。
●人工知能を部品として活用 業務システムに人工知能が有効だとしても、すべてのITベンダーが人工知能を開発するのは現実的ではない。業務システムを構築するにあたって、人工知能のエンジンを部品として使うのが理想的だ。
人工知能を駆使したビッグデータ解析事業を手がけるUBICは、同社のビジネスデータ分析システム「Lit i View AI助太刀侍」においてAPIのリリース準備を進めている。AI助太刀侍は、電子メールや日報などの電子データを解析し、潜在的なチャンスやリスクを人工知能が検知するクラウドサービス。APIを利用することで、さまざまな業務システムのデータを人工知能の分析対象とすることが可能になる。

UBICの村田圭司・BI Software Sales部部長(右)と古田 誠・プロダクトマーケティング部課長代理
「例えば、営業支援システムのデータから、顧客から新規の契約が取れそうだという予兆を検知することができる。契約が切られるという予兆の検知も、同様にできる。チャンスとリスクを予兆することで、すばやい対応ができるようになる」と、UBICの古田誠・プロダクトマーケティング部課長代理は語る。
人工知能に任せなくても、電子メールや日報などを確認すれば、チャンスやリスクを把握できるかもしれないが、膨大な情報量を人間が確認するのは現実的ではない。UBICの村田圭司・BI Software Sales部部長は、「人工知能では、例えば干草のなかの針だけでなく、“腐った干草”もみつけることができる。しかも、コンピュータは疲れることがなく、同じ動作の繰り返しが得意」と、人工知能が得意とする分野を任せるという考えだ。
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