ユーザー企業のIT投資
「製造業」に需要あり
IoTを見据えた提案がカギ
IT投資が活発な産業は2015年が「金融・保険業」だったのに対して、2016年が「製造業」と回答するITベンダーが多かった。工場内にある、さまざまな機器がネットワークにつながるIoTを視野に入れたシステムの導入、ドイツ政府が推進する「インダストリー 4.0」にユーザー企業が関心を高めていることが大きいといえる。
ITベンダー各社も、関連ビジネスへの着手や拡大を図ろうとしている。センサの開発に力を注ぐ、多くの機器がつながるようになることからビッグデータ関連のビジネスに力を注ぐSIerなど、さまざまだ。また、自動車関連では車載機器のネットワーク化という点で、ITベンダーとのパートナーシップを自動車メーカーが組むという動きがある。社内システムのリプレース需要にも新たな動きが出てきている。取引先とクローズにやり取りしたいとの考えから、オンプレミス型を導入したいとの要望が出ているという。
また、金融・保険業に関しても依然として活発な投資がありそうだ。FinTechに対する注目度も高く、金融・保険業を得意とするITベンダーの期待は大きい。医療・介護に関しては、IT投資が活発になると答えたITベンダーが1割程度にとどまるが、地域を包括したヘルスケア関連や高齢者在宅医療など、地方を切り口としたビジネスが活性化する可能性がある。教育に関しては、授業のIT化に向けて学生にタブレット端末をもたせるといったニーズが出ている。加えて、セキュリティの観点でVDI(仮想デスクトップインフラ)を導入するケースも多くなった。
海外ビジネス
計画値通りで現状維持へ
国内市場での可能性を模索
多くの日本企業が海外進出に取り組んでいるなか、ITベンダーも海外ビジネスの拡大に力を入れている。ビジネスはおおむね期待値通りで、2016年は現状維持というITベンダーが多い。
これは、2020年の東京五輪に向けて国内市場でシステムのリプレースや新しい製品・サービスの導入が進むとの見方が強いため。しかも、地方で需要が掘り起こせるとの見方も出ている。とくに海外に力を入れていくという状況ではないということだ。
海外ビジネスの重点地域は、「ASEAN」との回答が最も多かった。また、政治問題などまだまだ関係回復に懸念が残る中国については、「市場のポテンシャルは大きい」との認識に留めるITベンダーが増えている。「その他」の国で気になる答えとして、「ドバイ」があった。アジアやASEAN以外の国も視野に入れる傾向が出てきている。
新トレンドへの取り組み
「IoT」に商機あり
20%以上の売上比率を目指す
2015年に業界で新しいトレンドとして浮上した「IoT」「ビッグデータ」「AI(人工知能)」。これらに関して、新しいビジネスとして拡大を図るITベンダーが多い。しかも、3年後の売上比率を全体の20%以上に引き上げると回答したITベンダーが32%だった。新たなビジネスを大きく成長させようとしているのだ。
現在、新トレンドの売上比率は、1ケタ前半と、まだビジネスの柱になっていないというのが事実。しかし、「IoT」によって、非IT機器をネットワークでつなぐという新たな潮流が出てきて、センサの開発や提供など新たなビジネスが生まれ始めている。実際、半数近くのITベンダーが「IoT」と回答している。また、IoTが普及すれば、蓄積した膨大なデータを分析するという「ビッグデータ」の活用が生まれる。その分析にAIを使うという取り組みも出てくる。そのため、「IoT」「ビッグデータ」「AI」ともに力を入れると回答するITベンダーも多かった。
なお、3年後の売上比率で「回答なし」が多かったのは、公表しない/公表できないというよりも「現段階では未知数で、何ともいえない」というのが実情だ。
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