Special Feature
ラストチャンス! 一大商機、到来 Windows 10 移行が加速する
2017/12/06 09:00
週刊BCN 2017年11月27日vol.1704掲載
大塚商会
Windows 10はアップデート管理がカギ
大塚商会は、Windows 10の概要・企業展開について説明するワークショップから、導入計画の策定・支援コンサルティング、展開作業支援・キッティング、導入後のユーザー教育・ヘルプデスクまでをワンストップで行う「Windows 10 移行支援サービス」を提供している。サービスとしての大枠はWindows XP移行のときと大きく変わりはないが、とくにポイントとなるのがワークショップだ。
写真右から下條洋永部長代理、板垣智和課長、川田晃矢課長
Windows 10では、年2回の機能アップデートが行われる点で、従来OSとは大きく異なる。Windows 10の導入段階から運用を見越した計画を立て、場合によってはインフラの見直しを行う必要もある。機能展開管理などにあたり「SCCM(System Center Configuration Manager)」や「WSUS(Windows Server Update Services)」の導入が増えているという。下條洋永・マーケティング本部クラウドプロモーション課部長代理は、「Windows 10で一番気をつけないといけないのは、機能アップデートの制御。アップデート管理に関する懸念をどう払しょくしていくかがカギになる」と指摘する。
板垣智和・技術本部システム技術部門テクニカルソリューションセンターMSソリューション課課長よると、「この春頃から大手を中心に引き合いは活況。Windows XPのときと比較して、(顧客は)移行を前向きに捉えている」という。夏からは中小企業向けの展開も本格化。今後、日本マイクロソフトが11月に提供を開始した、「Windows 10」「Office 365」「Enterprise Mobility + Security(EMS)」を組み合わせた「Microsoft 365」シリーズのSMB向け製品「Microsoft 365 Business」の販売も加速させていく方針だ。
Windows 10への移行はすでに活況であるとしつつも、「今はまだ序章」であるという。川田晃矢・マーケティング本部クラウドプロモーション課課長は「働き方改革で使えるクラウドサービスやネットワークなどもまとめて提供できるのが当社の強み」だと語り、移行だけにとどまらないビジネスを展開していく考えを示す。
AOSデータ
OS移行後のデータ活用まで自社製品でカバー
AOSデータでは、PCのデータやアプリ、各種設定などをまとめてWindows 10 PCに移すことのできるデータ移行ツールを提供。50台以下向けの「ファイナルパソコン引越し Win 10特別版」と、大量移行向けの「ファイナルパソコン引越し enterprise」の2種類があり、enterpriseでは、移行するデータを細かく制御できる「ポリシーマネージャ」機能が利用できる。志田大輔取締役CTOによると、「ほぼGUIの設定をなぞるだけで簡単に移行できる」という。ユーザー企業自身での移行作業が難しい場合には、パートナーがサービスとして提供し、データ移行を支援する。
春山洋社長(左)と志田大輔取締役CTO
「この10月に入ってから本格的に検討が進んできている」と、春山洋社長は説明。今後加速するとみられるWindows 10への移行で期待するのは、データの移行だけではなく、移行後のデータ運用を支援するソリューションもあわせて提供することだ。
例えば、法人向けクラウドバックアップ「AOSBOX Business」に人工知能(AI)機能を搭載した「AOSBOX Intelligent」では、AIを使って、クラウドにバックアップしたデータの自動分類や、メタ情報、タグ付けを活用した検索により、目的のデータを簡単・瞬時にみつけることができる。セキュリティ面では、個人情報検索・運用ツール「プライバシーディフェンダー」やランサムウェア対策ソフト「ファイナルランサムディフェンダー」などで、企業のデータをセキュアな状態で保護する。
このように、データ運用に関連するさまざまなソリューションをもつことから、データの移行後を見据えた提案に力を入れていく方針。春山社長は、「移行を通じて、より多くのAOS製品をパートナーに知ってもらいたい」と期待を込める。
富士ソフト
インプレースアップグレードのニーズに応える
「XPの時と比べてマーケットの動きが早い」と話す、富士ソフトの片白健太・MS事業部事業企画部部長。XPの経験が生きているとのことだが、それだけでなく、EOSまで時間があることから、Windows 10移行後の運用のためのインフラ整備をあわせて行うというニーズが多く、「移行ツールを提供するだけでは、顧客のニーズが満たせなくなってきている」のだという。
片白健太部長(左)と大江聡一郎主任
富士ソフトでは、「Windows 10 アセスメントサービス」としてワークショップに力を入れる。「基本編」と「応用編」を用意しており、基本編では、Windows 10の展開・運用方法を説明する。応用編では、基本編で選んだ展開・運用方法をもとに、顧客の要望に応じたかたちで、より詳細な説明を行い、失敗しないWindows 10の導入・運用を支援している。
さらに、Windows XPからWindows 7への移行時にも提供した自動セットアップツールのWindows 10版「らくらくアップグレード for Windows 10(仮称)」を提供するとともに、データ移行ツールを新たに用意した。大江聡一郎・MS事業部ソリューション技術部ソリューションサポートグループ主任は、「Windows 10搭載PCをWindows 7にダウングレードして使い続けている顧客もかなりの数がいて、当社の試算では、サポート切れ直前まで、国内だけで600万台くらいまでたまるとみている。おそらく、直前になってWindows 10に切り替えるタイミングがやってくるだろう」と語る。「当社では、ツールを使って期間をかけずにインプレースアップグレードが行えるので、ギリギリまで使っていただける。その需要が来年、再来年にくるだろう」。両ツールの提案で、来年以降活発になるとみられるインプレースアップグレードのニーズに応えていく考えだ。「キッティングから運用まで、これまでのノウハウを生かしてトータルで提供できるのが強みだ」と、片白部長はアピールしている。
Windows 10
セキュリティも移行の目玉に!?
OSだけで、ここまでできる!
日本マイクロソフト
太田卓也
テクノロジー
ソリューション
プロフェッショナル
Windows 10のセキュリティと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは「Windows Defender」かもしれない。もともとウイルス対策機能として登場したものが、それだけにとどまらず、今ではブランド名として、Windowsセキュリティの代名詞ともなっている。
なかでも、マイクロソフトがとくに勧めるのが、「Enterprise E5」エディションで利用できる「Windows Defender Advanced Threat Protection(ATP)」だ。脅威が侵入した後の検知と対処を行う「EDR(Endpoint Detection and Response)」の機能をもち、標的型攻撃のような高度なサイバー攻撃への対策が可能。エージェントのインストールが不要で、OSのアップデートごとに機能が拡張する。今年10月の「Fall Creators Update」では、管理コンソール上でのWindows Defender全機能の統合管理や、セキュリティ脅威のスコアリングなどが可能になっている。さらに、次のバージョンでは、人工知能(AI)の技術を用いて、インシデントの対処を自動化する機能を実装する予定だ。

「マイクロソフトにセキュリティのイメージはなかったかもしれないが、今一番投資しているのはセキュリティだといってもいい。すべてマイクロソフト純正のもので揃えることができる時代になった」と、太田テクノロジーソリューションプロフェッショナルは強調する。「Windows 10で固めるとマイクロソフトがサポートしやすいし、コストも抑えられ、管理も一元化できる」といい、実際にWindows 10へ移行するタイミングで、マイクロソフトでセキュリティを固める顧客もいるとのことだ。
適切な設定で対策を打つ
FFRI
金居良治
取締役
最高技術責任者
セキュリティ本部長
同社は、日本マイクロソフトからの依頼を受けるかたちで、Windows10のセキュリティに関する二つのホワイトペーパーを公開している。そのなかで注目したのが、「ぜい弱性攻撃対策」と「Pass-the-Hash攻撃対策」の2点で、これらを防御する機能の搭載により、「攻撃者にとっても、攻撃のハードルが上がっている」という。ただし、こうした機能も「適切に設定しなければ十分な効果を発揮できない」と指摘し、脅威状況やセキュリティポリシーなどに応じて最適な運用を行うべきだとしている。
アンチウイルスと機能を補完し合う
Windows Defenderは代表的なウイルス対策機能。OSに標準搭載された機能であることからユーザーにとっては利用しやすい一方で、純粋なセキュリティベンダーが提供するアンチウイルス製品と比べると「性能面で劣っているのでは?」との疑問の声があったのは否めない。しかし、近年では性能が向上し、金居取締役は「メジャーベンダーに匹敵するレベルになってきている」と話す。そうなると、サードパーティ製のアンチウイルスソフトは不要ということにもなりかねず、ウイルス対策ソフトベンダーにとっては、アンチウイルスにとどまらない機能をもった製品を提供することが求められるだろう。
なお、FFRIが提供する次世代エンドポイントセキュリティ対策製品「FFRI yarai」は、アンチウイルスソフトと併用での利用を想定しており、製品として競合するとは捉えていないようだ。
記者の眼
Windows 10への移行では、駆け込み移行も散見されたWindows XPの時と比較して、早期に動いている企業が多いようす。各社の話によると、多くの企業では、今年半ば頃から移行へ向けた動きがみえ始め、来年以降に本格化していく見通しだ。Windows 10が事実上、最後のOSということになり、今後は機能向上を繰り返していく。つまり、ITベンダーにとっては、いかに長い目で顧客を支援し続けられるかが重要になる。今回の移行ビジネスは、単純にOSの移行それだけでなく、機能アップデートやセキュリティ、働き方改革など移行後の運用を見据えた提案ができるかが問われることとなりそうだ。
2020年1月、「Windows 7」のサポートが終了する。これに伴い、Windows 10への移行が今後ますます加速していくとみられ、ITベンダーにとっては商機が拡大することになるだろう。Windowsとして最後のバージョンになるとされるWindows 10。クライアント移行ビジネスはラストチャンスとなるかもしれない。(取材・文/前田幸慧)
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料) ログイン会員特典
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。 - 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…
