伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)
基幹特化型クラウドがヒット商材に
CTCの上期決算は、連結売上高、利益ともに過去最高を更新。「流通・産業」「情報通信」「公共」「金融・社会インフラ」の主要セグメントのすべてで売り上げを伸ばした。
CTCは売上高5000億円、時価総額5000億円の「二つの5000」を掲げており、うち時価総額は今年8月4日時点で到達。ただし、今年度(18年3月期)通期の売上高見通しは4250億円で、年商5000億円は未達になりそう。
同社の3か年中期経営計画は、今年度(18年3月期)が最終年度であることから、18年度以降、できるだけ早い時期に既存事業ベースの成長での年商5000億円達成を目指すとしている。
中計の重点施策の一つであるクラウド事業は、大きく成長した。CTCがIT資産を所有し、ユーザー企業向けにサービスとして提供する同社クラウド事業の売り上げは、昨年度(17年3月期)は前年度比26%増の208億円、今年度は同20%増の250億円を見込む。
なかでもSAPをはじめとする基幹業務システムに特化したCTC独自のIaaSの「CUVICmc2(キュービックエムシーツー)」の案件が累計18社/20件。うちこの上期だけで7社/8案件を受注するなど好調に推移している。この10月にはアビームコンサルティングのクラウドサービス「ABeam Cloud」の基盤の一つとして採用されるなど同業他社との協業も進む。
基幹業務システムに焦点をあてるCUVICmc2は、「案件あたりの収益性が高い」(菊地哲社長)と話す。アマゾンウェブサービス(AWS)などのパブリッククラウドを仕入れて売るタイプのIaaSは、どちらかといえば薄利多売型なのに対して、CUVICmc2は案件あたりまとまった収益が期待できる高収益事業に成長している。
18年度からスタートする次期中期経営計画では、次の成長をけん引する新しい事業の柱を明確にしていくとともに、「利益目標も明らかにしていきたい」(菊地社長)としている。
新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)
営業やR&Dの強化で持続的な成長へ
NSSOLは、親会社の新日鐵住金グループ向けと、主要セグメントの金融顧客向けのプロジェクトの一部がピークアウト。この上期は両顧客向けの売り上げがいずれも前年同期比でダウン。それにもかかわらず、流通サービスや公共公益の顧客、ITインフラのビジネスなどで補ったことで、上期連結売上高は前年同期比10.1%増、営業利益も2.5%増の増収増益となった。通期(18年3月期)の傾向も変わらず、新日鐵住金と金融の減収を他でカバーすることで、売上高は前年度比4.1%増の2420億円、営業利益は同5.4%増の227億円を見込んでいる。
直近4年間の連結売上高の推移を振り返ってみると、14年3月期が1800億円だったのに対して、今期2420億円(見込み)まで620億円も増える見通し。年平均で150億円余りも増えていることになる。
新日鐵住金グループと金融向けのプロジェクトの一部が多少ピークアウトしたからといって、「SEの稼働率が高止まりしている状態に変わりはない」(謝敷宗敬社長)と話す。営業面の施策も手一杯な側面があることから、今期は持続的な成長ができるよう営業力の強化のための投資を前年度比で8億円増やすとともに、研究開発費(R&D)も2億円上乗せする予定だ。
新サービスの開発にも意欲的に取り組んでおり、例えばAI関連ビジネスとして米DataRobot社の機械学習プラットフォームの販売を昨年7月からスタート。この上期末までに11社のユーザー企業から受注を獲得。また、ビッグデータ分析業務に必要な機能をパッケージ化した「Data Veraci@absonne(データヴラーチ・アット・アブソンヌ)」は、顧客から「投資対効果が高い」(謝敷社長)と評価を得ていると胸を張る。この10月にはシステム研究開発センター内に「AI研究開発センター」を新設。AI関連商材の開発に一段とアクセルを踏んでいく。
JBCCホールディングス
重点7事業で高収益SIerへと変身
ディストリビューション子会社を今年6月末に連結から外したJBCCホールディングスは、上期売上高が前年同期比16.3%の大幅減収となった。しかし、一方で粗利率が限られるディストリビューション事業をなくしたことで営業利益は同9.5%増加。今年度(18年3月期)通期の連結売上高は前年度比24.3%減の630億円、営業利益は同2.4%増の19億円の減収増益の見通しだ。
同社は利益重視へと戦略的に経営の舵を切っている。20年度までの4か年中期経営計画では、クラウドやSoE(価値創出型システム)、セキュリティなど、高収益が見込める7つの重点事業を設定。これら重点7事業の売り上げを20年度に直近の2.5倍の250億円、粗利益を3倍に相当する90億円に増やす目標を掲げている。
重点7事業は着実に成長させることで、20年度までの連結営業利益を年率平均13%で拡大。売上高は600億円程度とほぼ横ばいを維持しつつ、営業利益は27億円に伸ばしていく。
山田隆司社長は、「中期経営計画の初年度のスタートは好調だ」と手応えを感じている。中期経営計画の名称は「Transform2020(トランスフォーム=転換)」。その名称の通り、重点7事業を成長エンジンとして、高収益SIerへと事業構造を転換させていく。
「4000億円トリオ」の誕生へ
トップ集団を形成する層の厚み増す
ここ数年来続いている良好な事業環境を背景に、主要SIerは事業規模を一段と拡大させている。NTTデータは年商2兆円規模を射程内に収め、野村総合研究所と伊藤忠テクノソリューションズの年商「4000億円コンビ」に、新たにTISが加入して「4000億円トリオ」になる見通し。SCSKやNECネッツエスアイ、日本ユニシス、新日鉄住金ソリューションズの「2000~3000億円クラブ」勢の成長も力強い。富士ソフトを筆頭に年商1000億円前後の層も厚みを増している。
AIをはじめとするデジタル領域の新規技術の習得のため、R&Dや実証実験にかかるコストが増している。また、クラウド型サービス事業の基盤となるデータセンター(DC)やBPOセンター、セキュリティ運用センター(SOC)など、24時間体制で稼働しなければならない設備費用も重くのしかかる。これら技術や設備への投資負担に耐えられるよう、ある一定のビジネス規模があったほうが有利に働く。
NTTデータは、R&Dや実証実験にかかる当面の費用をざっと100億円を見積もる。この100億円を差し引いたうえで、中期経営計画の最終年度にあたる18年度(19年3月期)の営業利益目標を、15年度比で1.5倍の約1500億円に設定。これだけの規模の先行投資が可能なのは、2兆円というビジネス規模の大きさによるところが大きいのはいうまでもない。
新規のデジタル領域やクラウド型のサービスは、顧客のニーズが強い分野であり、商談も活発化している。積極的な先行投資によってライバルSIerよりも優位な立場に立てれば、「粗利の見込める優良案件を優先して受注することも可能」(SIer幹部)と、案件選別によって収益力の一段の向上にもつなげやすくなる。