TIS
ASEANトップクラスのIT企業連合体に
TISは、2021年3月期までの中期経営計画で連結売上高4300億円、営業利益率10%を掲げる。初年度の19年3月期の連結売上高は、前年度比3.7%増の4207億円、営業利益は16.2%増の380億円と「幸先のいいスタート」(安達雅彦副社長)となった。TISが強みとする決済関連サービスや基幹業務システムといった戦略ドメイン領域を重点的に伸ばしたことが競争力の向上につながった。昨年度(19年3月期)の戦略ドメイン領域の売上高に占める比率は、目標値を2ポイント上回る42%まで増えている。
ASEANを中心とした海外事業の足場固めも着実に進めている。TISは主に海外SIerとの資本業務提携を通じて地場市場へ進出。年商約418億円のインドネシア大手SIerに約30%出資し、年商115億円のタイ中堅SIerに約25%を出資するなどして、ASEAN地域における提携先を含めた事業規模はおよそ570億円まで拡大している。
持ち分法適用の会社が多いため、それがそのままTISの海外売上高になるわけではないものの、双方の強みを組み合わせることで「ASEANトップクラスのIT企業連合体の組成」(桑野徹会長兼社長)に向けて、戦略的投資を続けていく考え。
SCSK
DX需要を視野にASEAN拠点を増強
SCSKの昨年度(2019年3月期)連結売上高は前年度比6.5%増の3586億円、営業利益は10.9%増の383億円と、旧CSKとの合併以来7期連続で増収増益となった。今年度(20年3月期)までの5カ年中期経営計画の重点施策として掲げてきた「サービス提供型ビジネスへのシフト」では、自社製の業務パッケージやサービスを軸にビジネスを拡大。昨年度のサービス提供型ビジネスの売り上げは前年度比6%増の740億円まで拡大している。
中計の重点分野の一つであるAUTOSAR準拠の車載システム「QINeS(クインズ)」関連ビジネスでは、商談が長期化しており「向こう数年間は黒字化が難しい」(谷原徹社長)と、先行投資の状況が続いているという。QINeSを軸とする車載システム関連ビジネスの収益化は次の中計に持ち越しとなる見込み。
海外関連では、DX需要の開拓を視野にインドネシアやミャンマーでの現地法人の設立準備を進めている。18年10月にはベトナム大手SIerのFPTコーポレーションとの協業を発表。既存のシンガポール法人と合わせてASEAN地域への進出を本格化させていく。
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)
5G関連の追加受注を見込む
通信キャリア向けのビジネスに強い伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は昨年度(2019年3月期)、5G(第5世代移動通信システム)関連の受注が入り始めたことも追い風となり、期初予想を上回る増収増益決算となった。菊地哲社長は「今年度も5G関連の追加受注が見込める」と手応えを感じている。
5Gは4G時代に比べて汎用サーバーとソフトウェアの組み合わせによるNFV(ネットワーク機器の仮想化)化が進行している。従来の「製品販売の売り上げは限定的になっている」と、通信キャリア向けのビジネスに変化が起きていると指摘。変化を先取りするかたちでNFV対応に努めてきたことが受注増の要因となった。
20年度(21年3月期)までの3カ年中期経営計画では、クラウド・ITアウトソーシングビジネスと海外関連ビジネスの売上目標をそれぞれ600億円に設定。初年度に当たる19年3月期では前者が559億円と目標値に迫っているのに対して、後者は411億円にとどまる。ASEANを中心に戦略投資を継続することで目標達成を目指していく。
日立製作所
Lumada事業「2兆円規模」視野に
データを活用して価値創出へ
日立システムズや日立ソリューションズなどのSIerを傘下に置く日立製作所は、ユーザー企業のDXを推進していく上で中核的な商材となる「Lumada(ルマーダ)」事業の昨年度(2019年3月期)売上高が、前年度比12%増の1兆1270億円になった。
内訳は、ユーザー企業のデータをAIやアナリティクスを活用して価値創出へとつなげる「Lumadaコア事業」が前年度比46%増の3350億円で、主に情報・通信システム事業セグメントが担っている。関連SIの「Lumada SI事業」は2%増の7920億円で、社会・産業や電子装置、建機など各事業セグメントに分散する傾向があるという。
東原敏昭
社長兼CEO
国内比率が高いLumada事業だが、今後は海外でも本格的に伸ばしていくとともに、Lumadaコア事業を中計期間中に倍増させていく構えだ。情報・通信システム事業セグメントの昨年度売上高が2兆659億円で、Lumadaコア事業を倍増させることで、同セグメントの売上高は2兆4000億円規模に増える見込み。
足下からの延長線上で試算すると、21年度までの3カ年中期経営計画の最終年度には、Lumada事業が1兆6000億円規模に成長すると予想しているが、日立製作所の東原敏昭社長兼CEOは、「個人的には早期に2兆円規模にしていきたい」と、計画値を上回る勢いで伸ばしていきたいとしている。
売上高の大台突破が相次ぐ
情報サービス業の受注環境は「快晴」
天気でたとえれば、情報サービス業の受注環境は「快晴」だ。主要SIer上位50社の昨年度実績を見渡すと、多くの企業が増収増益基調で推移していることが分かる。NRIは初の年商5000億円を突破。富士ソフトも年商2000億円の大台に乗ってきた。シーイーシーは10年ぶりに年商500億円台に回復するなど大台突破が相次いだ。
最大手のNTTデータは、NTTコミュニケーションズの海外事業とディメンション・データが統合して7月から営業を始める新生NTT(通称:NTTリミテッド)との連携によって海外ビジネスを一段と強化。NTTデータは主に業務アプリケーション領域、NTTリミテッドはクラウド基盤やネットワーク構築を主に担うことでNTTグループの総合力を一層高める。NTTデータは「国内・APAC(アジア太平洋地域)」「EMEA・中南米」「北米」の三つの地域をバランスよく成長させていく方針だ。
JBCCホールディングス(JBグループ)は、製品卸販売の子会社イグアスを連結対象から外した影響で減収になっているが、粗利率の高いビジネスへのシフトを進めたことから昨年度の営業利益は前年度比27.7%増と大幅増となった。Windows 10への更新や、JBグループが強みとするIBM Power Systems(旧AS/400)の更改時期が重なったこともあり売り上げが増加。イグアスの要因を除けば昨年度は前年度比4.5%の増収だった。今年度はその反動減も加味して「保守的に見ている」(東上征司社長)と話す。
SIer幹部の多くは、今年度も良好な受注環境が続くと予測している。ユーザー企業のDXへの投資意欲は高止まりの状態。SIer自身のビジネスモデルも既存システムに偏重するのではなく、DX領域の比率を一段と高めていくことが成長の持続につながると期待されている。