ノベルワークス
関西企業のIT活用意欲を高める
ノベルワークスは、主にAWSやkintoneを使ったクラウド開発を手掛ける。2015年に大手SIerの案件にエンジニアとして携わってきた満村聡・代表取締役が大阪で創業。大規模システム開発の経験をもとに「顧客から直接仕事を請け負えることがしたい」(満村代表取締役)と思い、クラウドを使ったビジネスを手掛けることを決めたという。
ノベルワークス
満村 聡
代表取締役
kintoneやAWSを使ったシステム開発がメインで、最近は「kintoneを使った工事現場向けシステムの案件が多い」と満村代表取締役。ただ、方針として「マルチクラウドは常に選択肢に入っている」といい、要望に応じてより適していると判断すれば他のクラウドを提案する姿勢をとっている。
設立から数年ということもあり、「技術的な事例や実績は他のクラウドベンダーに負けていると思う」と謙遜するが、「どんな問題であっても最後までやり切り解決すること、正直に話すことにはプライドをもっている」と自社の強みを強調する。
海外のクラウド需要の
先取りを狙う
顧客の多くは関西の企業。中でも小規模の企業では「ITをあまり理解していないお客様が多い」と、近年は顧客のITリテラシーを高めるため、地元企業を対象としたセミナーや研修を積極的に実施している。
その一つとして、1週間かけてITやクラウドについて学ぶ研修を昨年初めて開催。クラウド全体の知識や情報の探し方などクラウド全般について実践的に学ぶ内容で、IT活用に関心を持った企業6社から6人が参加し好評を得た。今年は7月と11月に行う予定で、7月の研修は4社から8人が参加する予定。「こうした動きでボトムアップを図っていく」と満村代表取締役。また、セミナーの開催をきっかけとした引き合いを重視しており、同社のシステム開発案件を生み出す好循環にもつながっている。
現在、従業員数は約10人だが、近く入社予定の人員を含めて「AIやIoT、ビッグデータ、RPA、クラウドの全てに対応できる体制が整う。デザインやフロントの実装、インフラ、サーバーサイドも含めて全ての開発スキルを持った人がそろい、(ビジネスに)幅はできた」と満村代表取締役はみる。今後の事業の展開として、国内では「AI、IoTに関する案件を少なくとも5件は受注したい」と意気込む。
また、年内に海外への進出も計画している。「国内ではkintoneをはじめとしたクラウドは広まってきている。広まり切る前に、日本と同じような成長曲線を描きそうなところで展開していく」と満村代表取締役は狙いを語る。
まずは台湾とベトナムでkintoneを使ったSIビジネスを手掛けていく考えで、そのための人材も採用。「今後、人や言語がどんどん国を越えて、日本人しかいないという会社はほぼなくなるだろう。早い段階で垣根を越えるような展開をしていきたい」と力を込める。
フェンリル
デザイン重視のアプリ開発、インフラはAWS
アプリ開発のフェンリルは、スマートフォン/ウェブアプリのバックエンドのインフラにAWSを提案。専業のクラウドインテグレーターではないが、AWSのスタンダードコンサルティングパートナーとしても認定され、現在までに100社以上のAWSを活用した案件を手掛けてきている。
フェンリルは2005年に大阪で創業。東京、島根、名古屋、京都に支社を置いている。柏木泰幸社長が個人で作成したウェブブラウザー「Sleipnir(スレイプニール)」を展開する目的で設立し、08年からスマホ向けアプリの受託開発ビジネスを開始。首都圏の企業を中心に、現在までに400社600本以上のアプリを共同開発した実績がある。
特徴は、UI/UXのデザインへのこだわりだ。機能性よりも使い勝手を重視する方針から、デザインに力を入れている。在籍するデザイナーは約50人。「問い合わせの入り口として、UI/UXが優れたアプリを作りたいという要望が多い」と、河岸誠二・事業本部ウェブ共同開発部次長は話す。
フェンリル
河岸誠二
次長
AWSの活用は、12年秋のウェブ開発部門の立ち上げがきっかけだ。当初4人で部門は立ち上がったが、アプリ開発に当たり、従来は外注していたサーバーサイドの開発も含めて自社で完結できるようにしようと考えたが、「SIerではないので自前でサーバーを設置して、というのは現実的ではなかった」(河岸次長)。
そうした中で知ったのがAWSだ。AWSの監視サービスを手掛ける企業と出会ったこともあり、「夜間の監視は任せられることが分かり、当社にも親和性がある」(河岸次長)と感じたという。それをきっかけにAWSの活用を開始。16年にはAWSのパートナーネットワークにコンサルティングパートナーに加入した。
新規事業の
立ち上げを支援
フェンリルでは現在、サーバー提案時には基本的に全てAWSを提案している。「AWSを使って大きなトラフィックをスムーズにさばくようなものが得意」と河岸次長は話す。実例として、テレビの生放送番組のモバイルアプリのバックエンドの構築を担当し、番組放映中にサービス停止などが起こることなく安定したコンテンツ配信を実現したという。
同社では今後、自社プロダクトの提供実績を基に、新規事業に注力する方針。その一つが、AWSを活用したクラウドサービスの「Brushup」。イラストや動画、ドキュメントをやり取りするためのクラウドサービスで、こうした制作物を扱う広告やゲームのイラスト会社のほか、最近では学校などより幅広い業界で利用されるようになってきているという。
また、デザイン経営/デジタル戦略領域のコンサルティングサービスを提供する事業部「BX」を設立。コンサルティングからアプリの開発、運用/マーケティングまで、一貫して手掛け、企業の新規事業立ち上げによるデジタル戦略を支援していく方針だ。
シーズ
需要はクラウドファーストからクラウドオンリーへ
シーズは、AWSを使ったシステムの受託開発を中心にビジネスを展開する。ここまで紹介してきた企業とは異なり、京都を本社とする企業だ。
2000年の創業当初から受託開発ビジネスを展開し、デザインからシステム、サーバーまでワンストップで手掛ける。クラウドを使ったシステム開発のほか、自社サービスを提供している。その一つの大容量ファイル転送サービス「デカメール」は、特に印刷業界で多く利用されているという。
これまで安定した経営ができているのは「サーバーを強みとしたシステム開発とウェブ制作があるから」とクラウドソリューション事業部部長の原口秀人CTOは話す。サーバーの機器選定から構築、保守運用までを手掛け安定した収益を上げてきたという。
シーズ
原口秀人
CTO
自社の強みは「デザインからシステム、サーバーまで全てを自社で内製化してできる点だ」とした上で、「最新技術に注力しつつ、お客様に本当に必要なものを提供できる」と原口CTOはアピールする。
クラウドの運用・保守が
将来は自動化される?
現在手掛ける案件の95%がクラウドで、近年の動向としては「“クラウドファースト”を越えて“クラウドオンリー”になってきている」と原口CTOは分析する。この流れは2年ほど前から表れてきたといい、「金融機関がクラウドに舵を切ったことがきっかけなのでは」と指摘する。最近ではクラウドでしかできない案件が出てきているといい、その例として、サーバーレスアーキテクチャーを前提とした開発の依頼は増えてきているという。
今後のクラウドの進化については、「サーバーの運用や保守は、自社で運用するのではなく全てAWSに任せるようになるのではないか」と原口CTOは見ている。「サーバーレスやAI、機械学習もそうした流れからきていると思う。われわれとしてはサーバーの保守料金をいただくというビジネスモデルは利益が出しにくくなる半面、サーバーレスに向いているかどうかといった判断をバランスよく提案できるコンサルティングが求められるようになるのではないか」と指摘。「長年システム開発をやってきた観点から、ここはサーバーレスで、ここはサーバーでやりましょう、というような提案ができるのではないか。そこを強みに展開していきたい」と原口CTOは話す。