大塚商会
働き方改革は顧客課題を起点に「ストーリー」で提案
大塚商会では、働き方改革関連法の段階的施行などを受けて、「今年春から夏にかけて、生産性向上のための真の働き方改革に取り組もうとする中小企業が増えるはず」(大塚裕司社長)と見る。顧客が抱える課題に対して複数のIT商材を組み合わせた提案で、中小企業の働き方改革需要に応えていく。
特に20年4月以降、中小企業にも適用される残業時間の上限規制に対しては、「残業抑制」「テレワーク」「業務効率アップ」の3点を対応課題として提示。それぞれに対応する製品として、残業抑制では勤怠管理、テレワークではモバイルPCやリモートアクセス、業務効率アップでは、AI-OCRやRPA、チャットボットなどをそろえる。
中小企業への働き方改革提案にあたっては、製品ありきではなく顧客の課題を起点とし、単に製品や機能を説明するのではなく、「全体像を見せながらストーリー立てて提案することで、お客様に理解いただくことを意識している」と、井川雄二・マーケティング本部共通基盤セキュリティプロモーション部セキュリティプロモーション2課課長は話す。
井川雄二 課長
同社では、まず勤怠管理ソフトで勤怠状況を可視化、適正化することを「(働き方改革の)スタート」と位置付ける。勤怠を把握することで分かった“無駄”を減らすために、テレワークなどの柔軟に働ける環境を用意したり、業務効率を上げるためのさまざまな仕組みを提供したりするといった流れだ。顧客のIT導入状況に応じて提案内容は柔軟に変える。そうした、「(顧客に)必要なものを必要なタイミングでどの切り口からでも提案できる」ことが強みだと、井川課長は説明する。
また、顧客には同社自身の働き方改革事例も紹介し、提案においては「なるべく大塚商会が自社で実践したものをお客様に提供する」と井川課長。同社自身は大企業だが、中小企業ユーザーでも使える仕組みを自ら導入して実践するようにしているという。それにより、顧客のニーズや状況に合った提案を行っている。
SB C&S
ウェブ会議やRPAに高まる需要
SB C&Sでは働き方改革ビジネスにおいて、社内の業務効率化と、外出先や在宅でのテレワークの対応にフォーカス。製品としてはコミュニケーションツールや無線LAN、SIMフリーPC、RPAに注力し、パートナーが販売しやすい環境づくりを支援している。
最近は、コミュニケーションツールやウェブ会議システム、RPAの引き合いが伸びているという。中でも「Office 365の引き合いが圧倒的に多い」と、守谷克己・ICT事業本部 販売推進本部本部長兼ICT事業推進本部副本部長は話す。
守谷克己本部長(左)と菅野信義本部長
また、菅野信義・ICT事業本部MD本部本部長によると、数年前に働き方改革関連法案の議論が始まった頃から、ノートPCの販売が増加。高度な画像処理が求められるような業務での利用を除けば、「今では持ち運び可能なPCしか売れなくなってきている。基本的には、いわゆる『モダンPC』系にシフトしている状況にある」と言う。
時間外労働の上限規制対応には、長時間労働の是正や業務効率化による生産性向上が重要と捉え、それを支援するIT製品としてコミュニケーションツールやRPAが基本的には有効と見る。ただ、顧客ごとに状況が異なるため、「全てがそのパターンに当てはまるわけでなない」(菅野本部長)。例えば、RPAで業務自動化を検討する中で、どうしても人が対応しないといけない業務がある場合もある。そうした際には、社内のRPA部隊とBPO部隊が連携して対応に動くという。
パートナー支援では、少人数のハンズオントレーニングやセミナーを「ほぼ毎日、東京に限らず全国各地で行っている」(守谷本部長)。パートナーが提案できる商材ラインアップを増やすことにも力を入れている。
シネックスジャパン
UC/VCの活用で対面コミュニケーションを効率化
シネックスジャパンの伊藤弘泰・執行役員デジタル・トランスフォーメーション&マーケティング部門部門長兼プロダクトマネジメント部門長も、時間外労働の上限規制への対応に「生産性の向上」が重要と説く。ネットワークが整い、ITツールも充実化している中で「移動して、会って、話すという時代は終わっている」と言い、いかに対面でのコミュニケーションやオフラインの会議を減らし、ITツールを利用して効率化することが、働き方改革で求められると指摘する。
伊藤弘泰 執行役員
そうした考えのもと、同社では今年の戦略として、「ユニファイドソリューション(UC)/ビデオコミュニケーション(VC)」を注力領域の一つとする。マイクロソフトやグーグルなどの製品を中心に提案を強化している。
働き方改革関連法の施行を受けては、「Office 365」などのクラウドサービスやチャットツール、会議ソリューションの販売が好調で、「中小企業のお客様に対しても、リモートでの働き方を提案する動きが増えてきた」と伊藤執行役員は説明する。
提案の際は、自社の導入事例のほか、実際に製品を導入した顧客に成功体験を話してもらうことも重視。実際に実機を試してもらう機会も増やしており、今春にはさまざまなツールを体験できるショールームをつくることも予定している。
同社は今年、UC/VCのほか、業種別の専門性を持った体制を整え、特に文教、医療、製造業への提案を強化する。加えて、「働き方改革ではネットワークセキュリティが重要になる」(伊藤執行役員)と捉え、SD-WANやUTMなどを扱うネットワークセキュリティの専門チームの人員を増強。中小企業市場での商機拡大を見込んでいる。
ダイワボウ情報システム
推奨モデルのパッケージ化で中小のテレワーク普及を促進
ダイワボウ情報システムでは、テレワークを核に中小企業に対して働き方改革を提案している。19年5月には、発起メンバーの1社として「テレワーク導入推進コンソーシアム」を設立。文字通りテレワークの導入推進を目指した活動を全国で展開している。
その一環で行っているのが、「スマートテレワークパッケージ」の提供だ。テレワークに必要なITツールを推奨モデルとしてまとめたもので、モバイルPC、コラボレーションツール、勤怠管理システムとマイクロソフトの「Office 365」で構成。モバイルPCはHPの「EliteBook 830 G5」「ProBook 430 G6」とレノボの「ThinkPad X1 Carbon」「ThinkPad X280」、コラボレーションツールはシスコシステムズの「Webex」とマイクロソフトの「Teams」、勤怠管理システムはネオキャリアの「jinjer勤怠」とテレワークマネジメントの「F-Chair+」の中から選択できる。
さらに、東京海上日動火災保険が提供するテレワーク保険を付帯。テレワーク時に情報漏えいなどが起きた場合の費用負担の一部を補償することで、セキュリティ面も含めてテレワークを導入しやすくした形だ。谷水茂樹・経営戦略本部情報戦略部部長によると、提供を開始以降、「テレワークが仕組み化されていなかった小規模事業者からの問い合わせが多い」という。
谷水茂樹部長(左)と地福信広副部長
また、地福信広・経営戦略本部情報戦略部副部長兼情報戦略課課長は「どの業種においても共通しているのは、会議前の部屋・メンバーの調整や会議内容の共有に時間がかかること」と話し、「会議」を改革する提案にも注力していると説明。ウェブ会議やチャットの活用を提案し、時間や場所を問わない会議の実現とともに、会議の運営方法自体の見直しにもつなげているという。
谷水部長は、国のテレワーク施策や働き方改革関連法施行によって、大企業だけでなく中小企業でも働き方改革に向き合う動きが高まってきている一方、「東京と地方では情報量や助成の仕組みで格差がある」と指摘する。同社では、全国展開する拠点の活用やパートナーとの連携で、大規模展示会やセミナーを開催。特にハンズオンやトレーニングは「年間120回ほど」(地福副部長)実施しているという。そうした活動を通して、「東京と地方の環境格差をなくし、地方の中小企業経営者の方にも興味をもって検討いただける環境づくりを推進していく」と谷水部長は力を込める。
新型コロナが起爆剤に!?
テレワーク導入に急拡大の兆し
働き方改革に有効な手段の一つとされる「テレワーク」は、国も普及を促している。その一環で17年から毎年開催されている「テレワーク・デイズ」(17年は「テレワーク・デイ」として実施)は年々規模が拡大。19年は7月22日から9月6日にかけて開催し、計2887団体約68万人が参加し、交通混雑の緩和や業務効率化・コスト削減に効果が出た。
それでも、現状のテレワーク導入状況にはまだ課題がある。総務省が19年5月31日に公表した「平成30年通信利用動向調査」によると、従業員数100人以上の企業でテレワークを導入している・導入予定がある企業は18年の時点で26.3%にとどまる(グラフ参照)。経年でみると増加幅は大きいものの、導入しているのは大企業が中心で「中小企業での遅れがある」(総務省)とみられる。ただ、最近は働き方改革関連法施行などを受けて中小企業でも働き方改革に関心が高まっており、「問い合わせが多い」とするIT企業の声も聞かれる。
しかし現在では、働き方改革関連法以上に、テレワークの導入拡大を後押しする状況が生まれている。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大だ。
新型コロナ感染防止のため、多くの企業が従業員に対し在宅勤務やテレワークを推奨する措置を実施。従来のオフィス勤務を中心とした働き方を見直さざるを得なくなっている。
ウェブ会議システムなどのITツールを提供するベンダーも、テレワークに活用してもらおうと、製品の期間限定無償提供を相次ぎ発表。感染終息後の商機をにらむ狙いも見え隠れする。製品を取り扱うITディストリビューターにも問い合わせが多く寄せられ、ある企業担当者は、ウェブ会議システムやDaaSへの引き合いが「昨年も多かったが、今年はもっと多い」と話す。
またあるディストリビューターは、「(新型コロナの感染拡大で)全企業が働き方改革に興味を持つ環境になっている。働き方を変える、効率的な働き方を定着させることにおいては非常にいい機会になるのではないか」と指摘。ユーザー企業、IT企業両者にとって、新型コロナ感染拡大に伴う「働き方改革」を一過性のものに終わらせないかが重要となりそうだ。