デジタルトランスフォーメーションがIT業界のセールストークのためのキーワードではなくなり、進化し続けるデジタルテクノロジーを継続的に活用するという前提で社会システムそのものの再構築すら考えなければならない時代になりました。週刊BCNでは連載企画「イッポまえだのよろしくスタートアップ」で、イノベーションを担う注目のスタートアップ企業を取り上げてきましたが、彼らが果たすべき役割はより大きくなっています。新型コロナ禍により、法人向けIT市場におけるスタートアップの主戦場とも言えるクラウドサービスの需要はさらに高まっています。市場が新たなフェーズに到達したこのタイミングで、一旦この連載を締めくくります。フィナーレとして、2016年7月にスタートしたファーストシーズン、中断期間や単発の特集を挟んで19年8月に再開したセカンドシーズンを含めて振り返る総集編をお届けします。これからも、日本のIT業界はスタートアップとともにイッポ前へ!
(取材・文/前田幸慧、週刊BCN編集部)

目利きに自信アリ!? あの有名スタートアップもいち早く紹介!!
取材時から大きく飛躍した企業3選

 「イッポまえだのよろしくスタートアップ」では法人向けIT市場に軸足を置く126社のスタートアップ企業を取材してきましたが、実は記事掲載後、大きく飛躍した企業も少なくないのです。そんな中から3社を厳選して紹介します。今や法人向けIT市場のキープレイヤーに成長しているケースもありますよ!

スマートキャンプ 1636(2016年07月11日発行)号掲載
SaaS市場の裾野拡大でさらなる急伸も


 記念すべき連載第1回目の登場企業は法人向けクラウドサービスマッチング「BOXIL」を手がけるスマートキャンプでした。設立からちょうど2年が経ったものの、また社員数8人の少数精鋭だった頃の取材でした。現在も代表取締役会長を務める創業者の古橋智史さんにご登場いただきました。
 

 自身の会社勤めの経験や、先進国の中でも日本のホワイトカラーの労働生産性が低いという課題を踏まえ、営業の効率化を支援したいという思いがBOXILの開発・提供につながったというエピソードが印象的。「ゆくゆくはパッケージソフトや研修サービスなど、BtoBのあらゆる商材をBOXIL上でマッチングできるようにしていく」と熱く語ってくれました。

 今やBOXILは法人向けSaaSを無料で比較・検討し、資料請求できるサイトとして、ITユーザーがSaaSの導入を考える時にアクセスするサービスとして確固たる地位を築いている感があります。SaaSベンダーにも、自社でアプローチしきれていないリードを獲得できる有力なマーケティングプラットフォームとして評価される場面が増えています。17年にリードマネジメントサービス「BALES」、19年にインサイドセールス特化型CRM「Biscuet(現BALES CLOUD)」をリリースするなど、BOXILを補完するような商材・サービスにもビジネス領域を拡大しています。

 19年にはマネーフォワードグループに参画。プラットフォームとしての中立性を保ちつつ、SaaSの普及拡大に向けてさらにアクセルを踏む意向を示しました。新型コロナ禍はSaaS市場の裾野を拡大した側面もあり、BOXILの利用もさらに急激に伸びる可能性がありそうです。

ABEJA 1640(2016年08月08日発行)号掲載
小売りから介護・ヘルスケアにAI活用を拡大


 ディープラーニングを活用した画像認識技術に強みを持ち、2018年にはグーグルからも出資を受けた急成長AIスタートアップとして知られるABEJAを、本連載では16年に取材していました。
 

 当時同社が主力としていたのは、カメラ画像やセンサーデータを基に行う店舗分析ソリューション。顧客が来店してから店を出るまでに店内でどのような動線で行動したか、来店客の属性(性別・年齢)はどのような分布か、リピーターの比率はどれほどかといった情報を可視化できます。これまで多くの小売店ではポイントカードがマーケティング施策として活用されてきましたが、ポイントカードは商品を購入した顧客の傾向しか分かりません。画像を分析することで、顧客が「なぜ買ったか」に加え「なぜ買わなかったか」まで分かるのがABEJAの特徴です。

 そして同社は今年4月、SOMPOホールディングスと資本提携を結びました。SOMPOはABEJA株の2割強を取得。介護・ヘルスケア事業や損害保険事業で、機械学習を用いた予測モデルの構築に取り組むほか、SOMPOグループ全体のAI活用を加速していく役割を担います。

 プログラミング不要でビジネスに合わせたAIモデルの作成・運用が簡単にできる仕組みを提供する「ABEJA Platform」や、ABEJA Platformを利用した店舗解析サービスである「ABEJA Insight for Retail」もユーザーを積み重ねています。小売りから製造業、ヘルスケアまで、幅広い領域でAI活用を進めています。