全国の自治体情報システムの基盤となる、「ガバメントクラウド」の始動に向けた動きが本格化した。大手クラウド事業者2社の採用が決定したほか、先行して現行システムをクラウドへ移行する八つのプロジェクトがスタート。2025年度末までに全自治体の基幹システムをクラウド化するという構想の課題と、国産クラウドサービスの活躍の可能性を探る。
(取材・文/日高 彰)

 デジタル庁は10月26日、Amazon Web Services(AWS)とGoogle Cloud Platform(GCP)の2サービスをガバメントクラウド整備のために採用すると発表した。ガバメントクラウドは、政府・地方自治体の今後の新たな情報システム基盤となるもので、25年度末までにすべての地方自治体の基幹システムをこの上に移行することを目指している。

 また、本格稼働に先立つ「先行事業」として、22年度末までに全国11市町で基幹システムのガバメントクラウドへのリフト&シフトを実施する。オンプレミスを中心とする既存システムからクラウドへの移行ではさまざまな課題が発生することを想定し、まずは一部の自治体で先行して移行を行うことで、移行方法や費用対効果などを検証する。

自治体システムの基盤を全国規模で共通化

 住民記録や地方税など、地方自治体には法律に基づいて行われるさまざまな業務が存在する。しかし、それらの業務を実施するための情報システムは、各自治体がそれぞれ個別に仕様を策定し、ITベンダーに発注されているのが現状だ。このため、同じような機能を持つ業務システムが、全国でバラバラにできあがっていることになる。

 仕様が統一されていないため、データの形式は自治体ごと、業務アプリケーションごとに異なっており、リプレースのタイミングが来ても、他のベンダーのアプリケーションに乗り換えることは難しい。いわゆるベンダーロックインの状態となり、コストを下げにくくなるばかりか、例えば同じ住民に関する手続きにもかかわらず、業務が異なると住民情報の再入力が必要になるといったように、業務効率や住民サービスの観点でもデメリットが顕在化してきた。

 この問題を解決するために、政府は地方自治体の業務システムの標準化を推進している。今年5月には、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」が成立。この法律では、「住民基本台帳」「選挙人名簿管理」「固定資産税」など地方自治体における17の基幹業務について、データ形式やシステム連携に関する標準仕様を策定し、各自治体はこの仕様に準拠した業務アプリケーションを、原則カスタマイズなしで利用することと定めた。

 このようにアプリケーション側の仕様統一に向けた動きに合わせて、インフラ側の共通化を進めようとする取り組みが、ガバメントクラウドの整備である。
 

 自治体向けの基幹業務アプリケーションを開発するベンダーは、前述の標準仕様に基づくアプリケーションをガバメントクラウド上に構築する。ガバメントクラウドという一つのインフラを通じて複数のベンダーがアプリケーションを提供する形となり、各自治体はそれらの中から必要なものを選択して業務を行う(上図参照)。

 デジタル庁の資料によれば、ガバメントクラウドの活用によるメリットとして以下4点が挙げられている。まず、全自治体がインフラからアプリケーションまでを共同利用することによるコスト削減だ。国がクラウド基盤を一括調達することによるスケールメリットや、アプリケーションベンダー間の競争促進による価格低減効果が考えられる。副次的なメリットとして、ベンダー間の競争によってアプリケーションの使い勝手が向上することも期待できる。

 二つめに、システム構築の迅速化や拡張性だ。これまでは制度改正に伴うシステム改修が発生する度に、各自治体でベンダーに対する個別発注が必要だったが、システムが標準化・クラウド化されることでその負担が解消される。業務システムの拡張が必要になった場合も、ハードウェアの調達・導入の手間はなくなる。

 三つめには、データ移行や連携の柔軟性が挙げられている。従来はアプリケーションごとに異なる形式で保持していたデータを、標準化してクラウド上に格納することで、異なるアプリケーションからも参照しやすくなる。他のベンダーのアプリケーションへの移行が容易になるほか、アプリケーション間でのデータのやりとりのハードルも下がる。

 最後はセキュリティで、各自治体が個別にセキュリティ機器を導入したりシステムを監視するのに比べ、最新の技術と知見を投入できる大規模なクラウドサービスのほうが、高いセキュリティレベルを担保できると期待される。