――コロナ禍でも順調に売り上げを伸ばしている。
大きな打撃を受けたお客様もおり、当社の製品・サービスへの需要が下がることを懸念していた。しかし、こういう状況だからこそ、社内外の情報共有や業務のデジタル化を推進しなければいけないという流れもある。結果的に当社の事業にとってはプラスマイナスゼロか、少し追い風になっているかもしれない。
代表取締役社長
青野慶久
――目下重点を置いてきた施策は。
パッケージからクラウドへのシフトに注力してきた。中小企業向けの「サイボウズ Office」は、パッケージ版の新規ライセンス販売を終え、2027年のサポート終了をアナウンスするところまできた。大企業向けの「Garoon」も、売り上げ比率では既にクラウドのほうが大きくなっている。クラウドの取り扱いや、“伴走型”のSIビジネスによって、今まで以上に収益性を高められたパートナーも次々に出てきている。そのような成功例を紹介しながら、パートナーのビジネスモデルの転換も支援していきたい。
――ローコード/ノーコード開発ツールに注目が集まっている。
当社の製品の中で今一番成長しているのは「kintone」で、全体の売り上げに占める比率も非常に大きくなっている。事業の主軸がkintoneになるのは間違いない。約1年前からテレビCMを開始したこともあり、認知度は大きく高まった。これまで単一部門の数ユーザーで導入していた企業から、他部門にも拡大したいと声をかけられる機会も増えた。組織のビジネス基盤になることで、kintoneはますます成長していけると考えている。
現場の改善意欲とkintoneは相性がいい
――地方自治体による相次ぐkintoneの導入も話題になった。
自治体は、当社にとっては提案に行くことすら難しい領域だったが、現場の公務員の方々が自らシステムをスピーディーに作れるということが伝わり、大規模な自治体を含め全国で導入が進んでいる。日本のデジタル化をしっかり支えていきたい。
――働き方改革や内製化など、近年の市場トレンドが事業戦略にうまく合致している。
日本の現場力を考えると、情報システムのすべてをベンダー丸投げにするのは非常にもったいない。現場には改善意欲のある人がいるのに、これまでは改善ツールを渡せていなかった。kintoneは自分たちでどんどん仕事を良くできるので、現場のエキスパートの方とすごく相性がいい。
緊急事態宣言が明けて、テレワークを終了すると言い出した企業があると聞いている。これはちょっと怖い動きだ。もちろん、出社したい人は出社すればいいが、テレワークを禁止する必要はない。そこはなんとか食い止めたい。22年の大きなテーマは、デジタル化を「後戻りさせない」こと。必ず前進させる。