Special Feature
SIerの海外戦略、進出を加速させる大手3社
2023/02/09 09:00
週刊BCN 2023年02月06日vol.1956掲載
NTTデータ、野村総合研究所(NRI)、TISのSIer大手3社が海外ビジネスを伸ばしている。NTTデータはデータセンター(DC)シェアで世界第3位のNTTリミテッドを傘下に収め、世界規模でDCネットワーク網を提供できる体制を整えた。NRIはオーストラリアに続いて北米市場への進出を加速させており、追加のM&Aも視野に入れながら特色あるビジネスモデルの構築を急ぐ。TISは資本業務提携をしている地場SIerと協業してインドネシアの交通決済サービス領域への参入を果たしている。欧米、オーストラリア、ASEANの世界主要市場でビジネスを伸ばす大手3社の動きを追った。
(取材・文/安藤章司)
NTTデータ
NTTデータは2022年10月、旧ディメンションデータとNTTコミュニケーションズの海外事業などを統合したNTTリミテッド(本社は英国)を傘下に収めた。NTTリミテッドは世界20カ国・地域に93拠点、141棟のDC設備を運用し、世界第3位のDCのシェアを持つ。23年3月期は前年度の約1.5倍に相当する25億ドル(3250億円)を投じる計画を立ててDCの増設や新設を進めている。NTTデータは国内では16カ所のDCを運用しており、SIerとしては大規模なDC設備を持つものの、海外で本格的なDCビジネスを手がけるのは今回が初めて。NTTデータのグローバル戦略の大きな転換点となった。
企業経営にとって蓄積したデータが持つ価値が日増しに大きくなり、国や地域の経済安全保障の観点からもデータを域内で管理したいという要望が強くなっていることが、海外事業再編の背景に挙げられる。NTTリミテッドは欧州、北米、ASEAN、インドなどにDCを置いており、NTTデータの既存のSIで生み出したデータの保管先になりうる。NTTリミテッドのDC上にプライベートクラウドを構築し、NTTデータが責任を持って運用するケースも増える見込みだ。実際、NTTデータが国内で運営するDCの優良顧客には、官公庁や金融機関などデータの扱いに慎重なユーザーが多い。
一方、昨今のクラウド移行の潮流のなかで米Microsoft(マイクロソフト)や米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)といった大規模クラウド事業者がNTTリミテッドのDC基盤を利用し、その上でNTTデータのSI部門が「Microsoft Azure」やAWSに業務アプリケーションを構築するという関係も生まれるだろう。
NTTデータ 本間 洋 社長
NTTデータの本間洋社長はSI事業とNTTリミテッドの関係を「“つくる力”と“つなぐ力”」と表現する。SIはユーザー企業の業務アプリを「つくる力」であり、ネットワーク構築に強みを持つ旧ディメンションデータや長距離国際の通信キャリアであるNTTコミュニケーションズ海外事業の流れを汲むNTTリミテッドは「つなぐ力」を担う。DCを基盤としたSIやアプリ開発、クラウドへの接続性、マネージドサービスに至るまで一気通貫のフルスタックの強みを生かして競争優位性を高める。
野村総合研究所
NRIは、米国東部インディアナ州に本社を置くSIerのCore BTS(コアBTS)を21年末にグループに迎え入れたことをきっかけに、北米市場でのSIビジネスに本格参入した。コンサルティング事業や中国でのオフショア開発での海外事業は手広く行っているものの、SI事業で海外事業を始めたのは16年にオーストラリアの地場SIerであるASGを傘下に収めたことが実質的なスタート。北米SIへの本格進出はオーストラリアに続く第2の挑戦となる。
NRI 此本臣吾 会長兼社長
オーストラリアでは、ASGを含めて8社のM&Aを実施。オーストラリアのビジネスに関連して加えたニュージーランドと英国の2社を合わせると、わずか7年のあいだに計10社のM&Aを実行した。ASGを核として、ITアウトソーシングや金融バックオフィス業務、ソフト品質検査エンジニアリングなどの事業ポートフォリオを精力的に拡張してきた結果、「追加のM&Aなしでも自立的な成長ができる体制を構築できた」と、此本臣吾会長兼社長は手応えを感じている。
北米でもコアBTSを核として、主にM&Aによって事業ポートフォリオを拡張し、競争力を高めていく“オーストラリアモデル”を実践する構えだが、オーストラリアの成功体験をそのまま横展開するわけではないようだ。此本会長兼社長が着目しているのは“地場密着のDX”という特色あるビジネスモデルだ。ここで言うDXとは、先進的なデジタル技術を駆使したデジタルビジネスを想定しており、ITシステムを継続的にアップデートすることでサービスを拡充するタイプの案件獲得を重視する。
主な顧客対象は従業員数で数千人から5000人程度の中堅・準大手のユーザー企業で、ITシステムを日常的に改修するデジタルビジネスの領域まで十分に内製化できていないケースに焦点を当てる。北米のユーザー企業は内製化比率が高いことで知られているが、「それでも日々ソフトを開発して、更新していくことが求められるDX領域まで自前でカバーできるかといえば、必ずしもそうではない」というのが此本会長兼社長の見立てだ。
現状のコアBTSは、ネットワーク構築を強みとした米国東部の地場中堅SIerの位置づけだ。ネットワーク基盤構築で培った顧客との関係を発展させ、アジャイル開発できめ細かい開発に対応できる体制強化を急ぐとともに、並行して追加のM&Aによって米国の中部・南部地域への進出を検討している。
米国東部から中南部への面的な展開によって、M&Aした子会社同士のクロスセルを推進し、規模の拡大に弾みをつける。また、同時に情報セキュリティやデータ分析、南米でのオフショア開発などサービス面での拡充も視野に入れる。オーストラリアではM&Aを矢継ぎ早に実施し、短期間で自力で成長できるまでこぎ着けたが、「北米はIT市場の規模が大きく、競合他社も多いため、より慎重に進めていきたい」(此本会長兼社長)と、特色ある地域密着DXを切り口に着実に地歩を固めていく構えだ。
NRIの22年4~9月期における海外売上高はコアBTSがフルで連結対象になったこともあり前年同期比88.3%増の629億円と大きく伸びた。23年3月期を最終年度とする4カ年中期経営計画で掲げた海外売上高1000億円の達成を射程内に入れる。ただし、営業利益率で見ると国内が上期18.3%であるのに対し、海外は同3.7%と低い水準にとどまる。オーストラリアでは国内のNRIのビジネス同様に高付加価値路線を歩み始めているが、北米は今後のM&Aによるのれん代やPMI(Post Merger Integration、M&A後の組織再構築)などに伴う利益率の押し下げ要因も想定され、NRIらしい高収益路線に転じるまではまだ少し時間がかかりそうだ。TIS
TISは強みとするキャッシュレス決済の分野でASEANへの進出を加速させている。22年7月には、TISが一部出資しているインドネシアのAINO(アイノ)と共同開発した交通決済パッケージ「Acasia(アカシア)」が、首都ジャカルタの交通決済サービス「ジャクリンコ」の基盤システムとして採用が決まったと発表。都市交通のバスや地下鉄、高架式ライトレール、通勤電車などに乗車するとき、スマホに表示された二次元コードによる決済が可能になる。
TIS 岡本安史 社長
クレジットカード決済の構築実績が多数あるTISは、自社でも独自のキャッシュレス決済基盤の「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」を開発している。AINOは13年に設立された比較的新しい地場SIerで、TIS同様に決済サービスに力を入れていることから、両社の得意とする分野を持ち寄るかたちでAcasiaを共同開発した。ジャクリンコへの採用によってTISの一部出資先でシンガポールのGrabホールディングスがジャカルタで提供している配車サービスの決済もできるようになった。
TISはASEANを中心に資本業務提携を進めており、岡本安史社長は「ジャクリンコへの採用は提携戦略の成果の一つになった」と手応えを感じている。TISの少数出資から始まっているものの、ビジネス面での相乗効果が大きくなったタイミングで両社がメリットがあると判断すれば、TISグループに入るパターンも想定している。タイの有力SIerのMFEC(エムフェック)は14年に資本業務提携をしたのち20年にTISグループ入りした。TISではこうした資本業務提携やM&Aを組み合わせることで、26年をめどに年商1000億円規模の「ASEANトップクラスのIT企業連合体」へと成長させる方針だ。
(取材・文/安藤章司)

NTTデータ
“つくる力”と“つなぐ力”を結集
NTTデータは2022年10月、旧ディメンションデータとNTTコミュニケーションズの海外事業などを統合したNTTリミテッド(本社は英国)を傘下に収めた。NTTリミテッドは世界20カ国・地域に93拠点、141棟のDC設備を運用し、世界第3位のDCのシェアを持つ。23年3月期は前年度の約1.5倍に相当する25億ドル(3250億円)を投じる計画を立ててDCの増設や新設を進めている。NTTデータは国内では16カ所のDCを運用しており、SIerとしては大規模なDC設備を持つものの、海外で本格的なDCビジネスを手がけるのは今回が初めて。NTTデータのグローバル戦略の大きな転換点となった。企業経営にとって蓄積したデータが持つ価値が日増しに大きくなり、国や地域の経済安全保障の観点からもデータを域内で管理したいという要望が強くなっていることが、海外事業再編の背景に挙げられる。NTTリミテッドは欧州、北米、ASEAN、インドなどにDCを置いており、NTTデータの既存のSIで生み出したデータの保管先になりうる。NTTリミテッドのDC上にプライベートクラウドを構築し、NTTデータが責任を持って運用するケースも増える見込みだ。実際、NTTデータが国内で運営するDCの優良顧客には、官公庁や金融機関などデータの扱いに慎重なユーザーが多い。
一方、昨今のクラウド移行の潮流のなかで米Microsoft(マイクロソフト)や米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)といった大規模クラウド事業者がNTTリミテッドのDC基盤を利用し、その上でNTTデータのSI部門が「Microsoft Azure」やAWSに業務アプリケーションを構築するという関係も生まれるだろう。
NTTデータの本間洋社長はSI事業とNTTリミテッドの関係を「“つくる力”と“つなぐ力”」と表現する。SIはユーザー企業の業務アプリを「つくる力」であり、ネットワーク構築に強みを持つ旧ディメンションデータや長距離国際の通信キャリアであるNTTコミュニケーションズ海外事業の流れを汲むNTTリミテッドは「つなぐ力」を担う。DCを基盤としたSIやアプリ開発、クラウドへの接続性、マネージドサービスに至るまで一気通貫のフルスタックの強みを生かして競争優位性を高める。
野村総合研究所
“地場密着のDX”の需要をつかむ
NRIは、米国東部インディアナ州に本社を置くSIerのCore BTS(コアBTS)を21年末にグループに迎え入れたことをきっかけに、北米市場でのSIビジネスに本格参入した。コンサルティング事業や中国でのオフショア開発での海外事業は手広く行っているものの、SI事業で海外事業を始めたのは16年にオーストラリアの地場SIerであるASGを傘下に収めたことが実質的なスタート。北米SIへの本格進出はオーストラリアに続く第2の挑戦となる。
オーストラリアでは、ASGを含めて8社のM&Aを実施。オーストラリアのビジネスに関連して加えたニュージーランドと英国の2社を合わせると、わずか7年のあいだに計10社のM&Aを実行した。ASGを核として、ITアウトソーシングや金融バックオフィス業務、ソフト品質検査エンジニアリングなどの事業ポートフォリオを精力的に拡張してきた結果、「追加のM&Aなしでも自立的な成長ができる体制を構築できた」と、此本臣吾会長兼社長は手応えを感じている。
北米でもコアBTSを核として、主にM&Aによって事業ポートフォリオを拡張し、競争力を高めていく“オーストラリアモデル”を実践する構えだが、オーストラリアの成功体験をそのまま横展開するわけではないようだ。此本会長兼社長が着目しているのは“地場密着のDX”という特色あるビジネスモデルだ。ここで言うDXとは、先進的なデジタル技術を駆使したデジタルビジネスを想定しており、ITシステムを継続的にアップデートすることでサービスを拡充するタイプの案件獲得を重視する。
主な顧客対象は従業員数で数千人から5000人程度の中堅・準大手のユーザー企業で、ITシステムを日常的に改修するデジタルビジネスの領域まで十分に内製化できていないケースに焦点を当てる。北米のユーザー企業は内製化比率が高いことで知られているが、「それでも日々ソフトを開発して、更新していくことが求められるDX領域まで自前でカバーできるかといえば、必ずしもそうではない」というのが此本会長兼社長の見立てだ。
現状のコアBTSは、ネットワーク構築を強みとした米国東部の地場中堅SIerの位置づけだ。ネットワーク基盤構築で培った顧客との関係を発展させ、アジャイル開発できめ細かい開発に対応できる体制強化を急ぐとともに、並行して追加のM&Aによって米国の中部・南部地域への進出を検討している。
米国東部から中南部への面的な展開によって、M&Aした子会社同士のクロスセルを推進し、規模の拡大に弾みをつける。また、同時に情報セキュリティやデータ分析、南米でのオフショア開発などサービス面での拡充も視野に入れる。オーストラリアではM&Aを矢継ぎ早に実施し、短期間で自力で成長できるまでこぎ着けたが、「北米はIT市場の規模が大きく、競合他社も多いため、より慎重に進めていきたい」(此本会長兼社長)と、特色ある地域密着DXを切り口に着実に地歩を固めていく構えだ。
NRIの22年4~9月期における海外売上高はコアBTSがフルで連結対象になったこともあり前年同期比88.3%増の629億円と大きく伸びた。23年3月期を最終年度とする4カ年中期経営計画で掲げた海外売上高1000億円の達成を射程内に入れる。ただし、営業利益率で見ると国内が上期18.3%であるのに対し、海外は同3.7%と低い水準にとどまる。オーストラリアでは国内のNRIのビジネス同様に高付加価値路線を歩み始めているが、北米は今後のM&Aによるのれん代やPMI(Post Merger Integration、M&A後の組織再構築)などに伴う利益率の押し下げ要因も想定され、NRIらしい高収益路線に転じるまではまだ少し時間がかかりそうだ。
TIS
ジャカルタ交通決済を支える
TISは強みとするキャッシュレス決済の分野でASEANへの進出を加速させている。22年7月には、TISが一部出資しているインドネシアのAINO(アイノ)と共同開発した交通決済パッケージ「Acasia(アカシア)」が、首都ジャカルタの交通決済サービス「ジャクリンコ」の基盤システムとして採用が決まったと発表。都市交通のバスや地下鉄、高架式ライトレール、通勤電車などに乗車するとき、スマホに表示された二次元コードによる決済が可能になる。
クレジットカード決済の構築実績が多数あるTISは、自社でも独自のキャッシュレス決済基盤の「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」を開発している。AINOは13年に設立された比較的新しい地場SIerで、TIS同様に決済サービスに力を入れていることから、両社の得意とする分野を持ち寄るかたちでAcasiaを共同開発した。ジャクリンコへの採用によってTISの一部出資先でシンガポールのGrabホールディングスがジャカルタで提供している配車サービスの決済もできるようになった。
TISはASEANを中心に資本業務提携を進めており、岡本安史社長は「ジャクリンコへの採用は提携戦略の成果の一つになった」と手応えを感じている。TISの少数出資から始まっているものの、ビジネス面での相乗効果が大きくなったタイミングで両社がメリットがあると判断すれば、TISグループに入るパターンも想定している。タイの有力SIerのMFEC(エムフェック)は14年に資本業務提携をしたのち20年にTISグループ入りした。TISではこうした資本業務提携やM&Aを組み合わせることで、26年をめどに年商1000億円規模の「ASEANトップクラスのIT企業連合体」へと成長させる方針だ。
NTTデータ、野村総合研究所(NRI)、TISのSIer大手3社が海外ビジネスを伸ばしている。NTTデータはデータセンター(DC)シェアで世界第3位のNTTリミテッドを傘下に収め、世界規模でDCネットワーク網を提供できる体制を整えた。NRIはオーストラリアに続いて北米市場への進出を加速させており、追加のM&Aも視野に入れながら特色あるビジネスモデルの構築を急ぐ。TISは資本業務提携をしている地場SIerと協業してインドネシアの交通決済サービス領域への参入を果たしている。欧米、オーストラリア、ASEANの世界主要市場でビジネスを伸ばす大手3社の動きを追った。
(取材・文/安藤章司)
NTTデータ
NTTデータは2022年10月、旧ディメンションデータとNTTコミュニケーションズの海外事業などを統合したNTTリミテッド(本社は英国)を傘下に収めた。NTTリミテッドは世界20カ国・地域に93拠点、141棟のDC設備を運用し、世界第3位のDCのシェアを持つ。23年3月期は前年度の約1.5倍に相当する25億ドル(3250億円)を投じる計画を立ててDCの増設や新設を進めている。NTTデータは国内では16カ所のDCを運用しており、SIerとしては大規模なDC設備を持つものの、海外で本格的なDCビジネスを手がけるのは今回が初めて。NTTデータのグローバル戦略の大きな転換点となった。
企業経営にとって蓄積したデータが持つ価値が日増しに大きくなり、国や地域の経済安全保障の観点からもデータを域内で管理したいという要望が強くなっていることが、海外事業再編の背景に挙げられる。NTTリミテッドは欧州、北米、ASEAN、インドなどにDCを置いており、NTTデータの既存のSIで生み出したデータの保管先になりうる。NTTリミテッドのDC上にプライベートクラウドを構築し、NTTデータが責任を持って運用するケースも増える見込みだ。実際、NTTデータが国内で運営するDCの優良顧客には、官公庁や金融機関などデータの扱いに慎重なユーザーが多い。
一方、昨今のクラウド移行の潮流のなかで米Microsoft(マイクロソフト)や米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)といった大規模クラウド事業者がNTTリミテッドのDC基盤を利用し、その上でNTTデータのSI部門が「Microsoft Azure」やAWSに業務アプリケーションを構築するという関係も生まれるだろう。
NTTデータ 本間 洋 社長
NTTデータの本間洋社長はSI事業とNTTリミテッドの関係を「“つくる力”と“つなぐ力”」と表現する。SIはユーザー企業の業務アプリを「つくる力」であり、ネットワーク構築に強みを持つ旧ディメンションデータや長距離国際の通信キャリアであるNTTコミュニケーションズ海外事業の流れを汲むNTTリミテッドは「つなぐ力」を担う。DCを基盤としたSIやアプリ開発、クラウドへの接続性、マネージドサービスに至るまで一気通貫のフルスタックの強みを生かして競争優位性を高める。
(取材・文/安藤章司)

NTTデータ
“つくる力”と“つなぐ力”を結集
NTTデータは2022年10月、旧ディメンションデータとNTTコミュニケーションズの海外事業などを統合したNTTリミテッド(本社は英国)を傘下に収めた。NTTリミテッドは世界20カ国・地域に93拠点、141棟のDC設備を運用し、世界第3位のDCのシェアを持つ。23年3月期は前年度の約1.5倍に相当する25億ドル(3250億円)を投じる計画を立ててDCの増設や新設を進めている。NTTデータは国内では16カ所のDCを運用しており、SIerとしては大規模なDC設備を持つものの、海外で本格的なDCビジネスを手がけるのは今回が初めて。NTTデータのグローバル戦略の大きな転換点となった。企業経営にとって蓄積したデータが持つ価値が日増しに大きくなり、国や地域の経済安全保障の観点からもデータを域内で管理したいという要望が強くなっていることが、海外事業再編の背景に挙げられる。NTTリミテッドは欧州、北米、ASEAN、インドなどにDCを置いており、NTTデータの既存のSIで生み出したデータの保管先になりうる。NTTリミテッドのDC上にプライベートクラウドを構築し、NTTデータが責任を持って運用するケースも増える見込みだ。実際、NTTデータが国内で運営するDCの優良顧客には、官公庁や金融機関などデータの扱いに慎重なユーザーが多い。
一方、昨今のクラウド移行の潮流のなかで米Microsoft(マイクロソフト)や米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)といった大規模クラウド事業者がNTTリミテッドのDC基盤を利用し、その上でNTTデータのSI部門が「Microsoft Azure」やAWSに業務アプリケーションを構築するという関係も生まれるだろう。
NTTデータの本間洋社長はSI事業とNTTリミテッドの関係を「“つくる力”と“つなぐ力”」と表現する。SIはユーザー企業の業務アプリを「つくる力」であり、ネットワーク構築に強みを持つ旧ディメンションデータや長距離国際の通信キャリアであるNTTコミュニケーションズ海外事業の流れを汲むNTTリミテッドは「つなぐ力」を担う。DCを基盤としたSIやアプリ開発、クラウドへの接続性、マネージドサービスに至るまで一気通貫のフルスタックの強みを生かして競争優位性を高める。
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- TIS ジャカルタ交通決済を支える
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