Special Feature

視界良好の電機3社 好結果の22年度決算からさらなる成長へ

2023/05/15 09:00

週刊BCN 2023年05月15日vol.1968掲載

 SI事業を手がける大手電機メーカー3社の2022年度決算は、国内IT需要の盛り上がりを背景に各社とも好結果に終わった。それぞれに課題は残るものの、23年度も引き続き成長が予想され、視界は良好。各社は売上高だけではなく、利益率の向上による飛躍を目指し、ソリューション・サービスの強化を図る方針を示す。
(取材・文/藤岡 堯、日高 彰、齋藤秀平)
 

富士通
営業益は過去最高、中計目標は未達 データドリブンの加速と海外事業立て直しが急務

 富士通は売上高に当たる売上収益が前年比3.5%増の3兆7137億円、営業利益が同53.1%増の3356億円、純利益が同17.8%増の2151億円だった。今年1月31日に発表した業績見込みには届かなかったものの、営業利益は前年から1100億円以上積み増して過去最高となり、会社全体の営業利益率も9.0%と大きく改善した。しかし、中期経営計画の数値目標として最も重視していた「22年度中にテクノロジーソリューション事業で営業利益率10%」を達成することはできなかった。
 

   「大変残念であり、経営者として大きな責任を感じている」。4月27日の決算説明会で目標未達について問われた時田隆仁社長は、こう悔しさをにじませた。主力のシステム構築ビジネスである「テクノロジーソリューション事業」の営業利益率は8.3%に終わった。時田氏が社長に就任した19年6月以来、会社の収益性は大きく改善したが、新型コロナ禍や為替の急激な変動といった外部要因もあり、あと一歩届かなかった。
 
富士通 時田隆仁 社長

 ただ、同社は昨年10月に発表した上期決算時点で「今のところ年間計画達成を諦めるほどネガティブな材料は出ていない」(磯部武司・取締役執行役員CFO)と判断しており、12月に実施した本紙のインタビューに対して、時田社長も同様の考えを示していた。時田社長は決算説明会で「経営の中でしっかりと確度をもった見通しができなかった。データドリブン経営をもっと進める必要がある。その点については大きな反省だ」と述べ、見込みの甘さを認めた。

 未達の原因としては、昨年来続く円安が調達コストを押し上げたこと、年度中に見込んでいた製品販売が次年度にずれ込んだことなどを挙げた。世界的な半導体不足によって21年度以降深刻化していた、部材供給遅延による製品納入の遅れは22年末までにおおむね解消したが、その間にx86サーバーなど他社の機種に代替可能な製品の販売が減少。23年に入ってからの受注は大きく回復したというが、一部の納入時期が4月以降となったことで、22年度中の利益への貢献が期待を下回った。

 富士通は「OneFujitsuプログラム」を掲げ、海外拠点を含む全社の基幹業務システムの標準化を進めており、既に顧客管理システムに関しては31カ国・2万人が使用する「OneCRM」に統合し、商談の状況や進捗をグローバルで共通的に把握できるようにしている。また、現在ERPについても統合プロジェクトを推進している。これまで行っていたような、部門・部署ごとにサイロ化した異なるデータを「Excel」で集計するといった業務を撤廃し、リアルタイムにビジネスの状況を把握できるようにするだけでなく、グループ全体での業務プロセスの標準化も図ろうとしている。既に一部の海外拠点で新しい「OneERP+」が稼働しており、24年度中のグローバルでの導入を目指している。このような仕組みが整えば、“経営の精度”をより高め、従来よりも早いタイミングで次の一手を打てるようになるとしている。

 海外事業の立て直しも、重要な課題としてあらためて浮き彫りとなった。時田社長は就任直前まで英ロンドンの拠点を担当しており、海外ビジネスの拡大および収益性改善が急務となっていた富士通にとって、その経験が買われてのトップ抜擢となった面があった。しかし、22年度決算で発表された海外におけるテクノロジーソリューション事業の営業利益率は0.7%と、辛くも黒字を確保する水準にとどまっている。

 受託型ではなくオファリング型でDXにつながるソリューションを提供する、富士通の「Uvance(ユーバンス)」ビジネスでは、欧州を中心にデジタルワークスタイルの提案が受け入れられる場面が増えているといい、PCやサーバーの販売や保守運用といった従来の事業スタイルから、Uvanceのような高付加価値のビジネスへのシフトをどれだけ進められるかが成長のかぎとなる。

 オフショア開発拠点の「グローバルデリバリーセンター」や、国内のシステム開発部隊を集約して発足した「ジャパン・グローバルゲートウェイ」の本格始動によって、時田体制に移行してから約4年の間にテクノロジーソリューション事業の収益性は改善され、“ITベンダー”から“DX支援企業”への変革は確実に進んでいる。ただ、時田社長が「中堅民需市場はオンプレミスのビジネスが大きく占めており、クラウドリフトや新たなソリューションの提案を十分にできていなかった」と振り返るように、いまだ電機メーカーとしてのビジネスが占める部分が少なくないのも事実。富士通は5月24日に25年度まで3年間の新たな中期経営計画を発表する予定。さらなる収益力向上を持続的に行っていくための戦略をどう描くかが注目される。
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