Special Feature
ニュータニックスが見せたシンプリシティの追求 3年ぶりの対面グローバルイベントを開催
2023/06/15 09:00
週刊BCN 2023年06月12日vol.1972掲載
【米シカゴ発】米Nutanix(ニュータニックス)は5月9・10日(米国時間)の2日間、米シカゴで、年次カンファレンス「.NEXT 2023」を3年ぶりに対面で開催した。テーマは「Run Everywhere. It's simply what we do.(あらゆるアプリケーションをあらゆる場所で稼働させる。それもシンプルなやり方で)」。近年同社が繰り返し伝えてきた「あらゆる場所」「シンプル」といったメッセージをあらためてキーワードに据え、クラウドの複雑さを解消することを自社の使命としていることを再度宣言したかたちだ。本稿では現地での取材をもとに、同社が描く「シンプルな世界」へのロードマップと戦略を俯瞰する。
(取材・文/五味明子 編集/日高 彰)
ハイブリッドマルチクラウド環境を一元管理する新たなクラウドサービス。さまざまなロケーションで運用されているNutanixクラスターを、単一のコンソールから一元管理するグローバルコントロールプレーンとして機能する。ライセンス管理も一元化できる。既存のローカルコントロールプレーンである「Nutanix Prism」を補完するソリューション。当初はSaaSでの提供だが、近い将来にKubernetesやオンプレミスもサポートする予定。
Nutanix Multicloud Snapshot Technology
「Nutanix Objects」「Amazon S3」「Azure Blobs」といったオブジェクトストレージにスナップショットを直接書き込むことが可能に(S3およびS3互換ストレージからサポート開始)。また、保存されたスナップショットから任意のNutanix環境への復元もできるようになり、被災時などにおけるディザスタリカバリーを容易に実現。
Nutanix Data Service for Kubernetes
Kubernetes上のステートフルコンテナに、データ保護やモビリティ、ポリシーベースの制御といった「Nutanix AOS」の機能を提供。開発者は使い慣れたKubernetesコマンドやAPIから、インフラ管理者は使い慣れたPrism Centralから操作が可能。OpenShiftおよびNutanix Kubernetes Engineからサポート開始。
Snowflakeとの連携強化
データをクラウドに移行しなくても、Snowflakeの分析サービス(外部テーブル)が実行できるようになり、ペタバイト級のデータに対しても高速なクエリー実行が可能に。また、地理的に分散したストレージ(Nutanix Objects)でも単一のグローバル名前空間でアクセス可能にすることで、データのサイロ化を防ぐ。
Project Beacon
製品/サービスではなく、「真のハイブリッドマルチクラウド」の実現に向けて発表した中長期のPaaSビジョン。アプリケーションだけでなく、アプリケーション実行に欠かせない存在であるデータベースのインフラ間のシームレスな移行をめざす。コントロールプレーンはニュータニックスがクラウドサービスとして提供するが、Nutanix Cloud Clusters(NC2)を必要とせず、EC2やAzure Virtual Machineといった環境でネイティブに動作する。プロジェクト期間は2年ほどを予定しており、当初はNutanix Database Service(NDB)のサポートから開始する。
ラジブ・ラマスワミ CEO
同社はもともと、HCI(ハイバーコンバージドインフラストラクチャー)のハードウェアベンダーとして“ワンプラットフォーム”戦略を打ち出してきたが、現在はパブリッククラウド、オンプレミスのデータセンター、エッジなど、運用モデルが異なるあらゆるIT環境(同社は「ハイブリッドマルチクラウド」と呼んでいる)を一つのプラットフォームで管理し、どこからでもアプリケーション/ワークロードの稼働や移行を可能にするという、より拡大したワンプラットフォーム戦略を展開中だ。
オープニングの基調講演に登壇したラマスワミCEOも、冒頭で「One platform to run apps and manage data anywhere(アプリケーションの稼働とデータの管理をどこからでも可能にする単一のプラットフォーム)」を掲げており、ワンプラットフォームが同社の製品戦略のコアであることは変わりないとしている。
もちろん、複数のインフラをワンプラットフォームとしてシームレスに運用するのは簡単なことではなく、現時点で実現できることは限られている。だが今回の.NEXTでは、これまでは机上の論理にとどまっていたワンプラットフォームを具現化するためのソリューションが、ポートフォリオとして一定レベルに達した印象がある。
左頁下に列挙したのが、今回のカンファレンスで発表された主要なアップデートの概要だ。これらを見ると、ハイブリッドマルチクラウドの領域におけるニュータニックスならではの特徴が浮き上がってくる。
リー・キャスウェル シニアバイス プレジデント
特筆すべき点は、アプリケーションやデータを可能な限りインフラから「分離」することで、アーキテクチャーのシンプル化を図っている点だ。プロダクト&ソリューションマーケティング担当のリー・キャスウェル・シニアバイスプレジデントは、筆者とのインタビューで「インフラの複雑化やサイロ化が進んでしまう最大の要因の一つは、アプリケーションが一つのクラウドや環境にタイトにひも付いていることにある。これをまず分離するのがシンプル化へのわれわれのアプローチ」と語っており、そのためには「NC2」や「NDB」といった自社サービスにこだわるよりも、Kubernetesやオブジェクトストレージなど業界標準となっているサービスとの親和性を高めることを意識しているという。
特に、今回発表されたPaaSビジョンの「Project Beacon」は、アプリケーションだけでなくデータベースに対しても顧客に“選択の自由”を提供することを目指しており、“分離によるシンプル化”は同社の今後の製品展開を読み解く上で重要なキーワードであることは間違いないだろう。
また、今回発表されたアップデートは将来の拡張も含めたグランドデザインを提示しつつ、サポート対象を限定したスモールスタートでの提供を開始している点も注目したい。これは「サービスのローンチにおいて、理想のイメージは描くが、まずは小さくスタートし、顧客の反応を見ながら方向性を調整する」(キャスウェル・シニアバイスプレジデント)という、ニュータニックスという企業をよく表しているアプローチである。
「ニュータニックスはHCIのアプライアンスベンダー」――実は日本のユーザーやパートナーの中でも、このようなイメージを抱いている企業は少なくない。カンファレンス期間中にインタビューしたラマスワミCEO、そして日本法人ニュータニックス・ジャパンの金古毅コーポレート・バイスプレジデント兼社長も、日本市場に深く根付いてしまった「ハードウェアベンダー」というイメージを拭い去るのは容易ではないと語っている。
ニュータニックス・ジャパン 金古 毅 社長
では、あらためてニュータニックスとは何の会社なのか。筆者がラマスワミCEOにこの質問をぶつけると、迷うことなく「ニュータニックスとは世界でもっともシンプルなインフラ環境を提供できる“ソフトウェアの会社”だ」という答えが返ってきた。「われわれはもう、ハードウェアの会社ではない。ソフトウェアで顧客の“Run Everywhere”の実現を支援する」と、ソフトウェアカンパニーであることをことさらに強調している。
このとき同じ部屋にいた他国の報道関係者にとっては「何をいまさら」という質問と回答だったかもしれないが、その後にインタビューした金古社長は「ラマスワミCEOは日本市場が“HCIのハードウェアベンダー”という思い込みから解放されていないことをよく理解している。われわれも本気でそのイメージからの脱却を図らなければならない」と語る。
シンプリシティを特徴としているだけあって、顧客からの評価は非常に高く、カンファレンスでは複数の海外の顧客企業から「IT人材がいない企業でも簡単に使える」「UIがシンプルで使いやすい」という声を聞いた。しかし、そのシンプリシティに特化したアプローチが、まだ日本市場ではすんなりと受け入れられるには至っていない。他国と比較してSIをメインとするパートナー企業が多いこともあり、「シンプルなソリューションの普及を好まないパートナーが一定数存在することは否めない。(サーバーと専用ストレージ機器を組み合わせる)3ティアソリューションのほうが支持されているという状況は正直、もどかしい」(金古社長)という難しさがある。
また、ハイブリッドマルチクラウドというトレンド自体が、日本ではまだ本格化していないという点も、ニュータニックス製品の日本市場での普及を遅らせている要因となっている。米国ではパブリッククラウドへの急激なワークロード移行が進んだ後にオンプレミスへの回帰的な動きが始まったが、「日本ではまだクラウド移行そのものが米国ほどには進んでいない」(金古社長)ため、ハイブリッドマルチクラウドをカバーするというニュータニックスの戦略への理解が進みにくいという問題もある。
その一方で、金古社長は「このまま生産性が上がらない状態では、日本の産業がだめになってしまうという危機感を強く持つ日本企業は確実に増えている。そういう企業やパートナーがわれわれに相談を持ちかけてくることが増えてきた」と、日本企業に変化の兆しが現れていることを指摘する。「具体的に手応えを感じているのは金融業。加えて大企業から“話を聞きたい”と言われる機会が増えてきた。当社の製品は触ったら必ず良さをわかってもらえる。例えば、NC2は(クラウドへの移行に際してアプリケーションの)リファクタリングがいらないが、使ってみればその良さをさらに実感できるはず。Nutanixの良さを理解してくれた顧客やパートナーによる新しいエコシステムをつくっていきたい。日本のエンタープライズに使ってもらう準備はできている」(金古社長)。
キャスウェル・シニアバイスプレジデントへのインタビュー時、「Project Beacon」の名前の由来について聞いてみた。暗い海を渡る船舶に光と信号を届ける灯台の明かり(beacon)になぞらえて命名したといい、「複雑化するハイブリッドマルチクラウドの世界をシンプルにするための先導役として、ニュータニックスがその役割を果たしたい」と答えている。
複雑化する一方のITインフラを、ワンプラットフォームでシンプルにする。言葉で言うのは簡単だが、本当に実現できると信じているか。そう聞くと、キャスウェル・シニアバイスプレジデントは「もちろんだ。クラウドのオペレーティングモデルは各社ごとに違うが、われわれのコアはデータセントリックであり、データを中心にアーキテクチャーを構成してソリューションを提供する。そのやり方がシンプリシティを実現すると信じている」と笑いながら、しかし確信に満ちた表情で答えた。ハイブリッドマルチクラウドの世界に「シンプリシティ」という信号を送り続けるニュータニックス。その灯りを日本企業に届ける準備は整いつつあるようだ。
(取材・文/五味明子 編集/日高 彰)

.NEXT 2023での主要な発表内容
Nutanix Centralハイブリッドマルチクラウド環境を一元管理する新たなクラウドサービス。さまざまなロケーションで運用されているNutanixクラスターを、単一のコンソールから一元管理するグローバルコントロールプレーンとして機能する。ライセンス管理も一元化できる。既存のローカルコントロールプレーンである「Nutanix Prism」を補完するソリューション。当初はSaaSでの提供だが、近い将来にKubernetesやオンプレミスもサポートする予定。
Nutanix Multicloud Snapshot Technology
「Nutanix Objects」「Amazon S3」「Azure Blobs」といったオブジェクトストレージにスナップショットを直接書き込むことが可能に(S3およびS3互換ストレージからサポート開始)。また、保存されたスナップショットから任意のNutanix環境への復元もできるようになり、被災時などにおけるディザスタリカバリーを容易に実現。
Nutanix Data Service for Kubernetes
Kubernetes上のステートフルコンテナに、データ保護やモビリティ、ポリシーベースの制御といった「Nutanix AOS」の機能を提供。開発者は使い慣れたKubernetesコマンドやAPIから、インフラ管理者は使い慣れたPrism Centralから操作が可能。OpenShiftおよびNutanix Kubernetes Engineからサポート開始。
Snowflakeとの連携強化
データをクラウドに移行しなくても、Snowflakeの分析サービス(外部テーブル)が実行できるようになり、ペタバイト級のデータに対しても高速なクエリー実行が可能に。また、地理的に分散したストレージ(Nutanix Objects)でも単一のグローバル名前空間でアクセス可能にすることで、データのサイロ化を防ぐ。
Project Beacon
製品/サービスではなく、「真のハイブリッドマルチクラウド」の実現に向けて発表した中長期のPaaSビジョン。アプリケーションだけでなく、アプリケーション実行に欠かせない存在であるデータベースのインフラ間のシームレスな移行をめざす。コントロールプレーンはニュータニックスがクラウドサービスとして提供するが、Nutanix Cloud Clusters(NC2)を必要とせず、EC2やAzure Virtual Machineといった環境でネイティブに動作する。プロジェクト期間は2年ほどを予定しており、当初はNutanix Database Service(NDB)のサポートから開始する。
シンプル化の具体的な道筋を発表
複雑化/多様化が急速に進むITインフラをシンプル化しようとする動きは、インフラ製品を提供する各社が競うように加速しており、ニュータニックスに限らず、米VMware(ヴイエムウェア)や米Red Hat(レッドハット)なども数年前から訴求しているテーマである。2020年12月にCEOに就任したラジブ・ラマスワミ氏は、世界中の顧客やパートナーと直接対面する初めての機会となる今回の.NEXTで、“シンプルな世界”における優位性をどのように示したのか。
同社はもともと、HCI(ハイバーコンバージドインフラストラクチャー)のハードウェアベンダーとして“ワンプラットフォーム”戦略を打ち出してきたが、現在はパブリッククラウド、オンプレミスのデータセンター、エッジなど、運用モデルが異なるあらゆるIT環境(同社は「ハイブリッドマルチクラウド」と呼んでいる)を一つのプラットフォームで管理し、どこからでもアプリケーション/ワークロードの稼働や移行を可能にするという、より拡大したワンプラットフォーム戦略を展開中だ。
オープニングの基調講演に登壇したラマスワミCEOも、冒頭で「One platform to run apps and manage data anywhere(アプリケーションの稼働とデータの管理をどこからでも可能にする単一のプラットフォーム)」を掲げており、ワンプラットフォームが同社の製品戦略のコアであることは変わりないとしている。
もちろん、複数のインフラをワンプラットフォームとしてシームレスに運用するのは簡単なことではなく、現時点で実現できることは限られている。だが今回の.NEXTでは、これまでは机上の論理にとどまっていたワンプラットフォームを具現化するためのソリューションが、ポートフォリオとして一定レベルに達した印象がある。
左頁下に列挙したのが、今回のカンファレンスで発表された主要なアップデートの概要だ。これらを見ると、ハイブリッドマルチクラウドの領域におけるニュータニックスならではの特徴が浮き上がってくる。
特筆すべき点は、アプリケーションやデータを可能な限りインフラから「分離」することで、アーキテクチャーのシンプル化を図っている点だ。プロダクト&ソリューションマーケティング担当のリー・キャスウェル・シニアバイスプレジデントは、筆者とのインタビューで「インフラの複雑化やサイロ化が進んでしまう最大の要因の一つは、アプリケーションが一つのクラウドや環境にタイトにひも付いていることにある。これをまず分離するのがシンプル化へのわれわれのアプローチ」と語っており、そのためには「NC2」や「NDB」といった自社サービスにこだわるよりも、Kubernetesやオブジェクトストレージなど業界標準となっているサービスとの親和性を高めることを意識しているという。
特に、今回発表されたPaaSビジョンの「Project Beacon」は、アプリケーションだけでなくデータベースに対しても顧客に“選択の自由”を提供することを目指しており、“分離によるシンプル化”は同社の今後の製品展開を読み解く上で重要なキーワードであることは間違いないだろう。
また、今回発表されたアップデートは将来の拡張も含めたグランドデザインを提示しつつ、サポート対象を限定したスモールスタートでの提供を開始している点も注目したい。これは「サービスのローンチにおいて、理想のイメージは描くが、まずは小さくスタートし、顧客の反応を見ながら方向性を調整する」(キャスウェル・シニアバイスプレジデント)という、ニュータニックスという企業をよく表しているアプローチである。
国内で根強い「ハードウェア企業」の像
ここで日本市場におけるニュータニックスの存在感を見ていきたい。「ニュータニックスはHCIのアプライアンスベンダー」――実は日本のユーザーやパートナーの中でも、このようなイメージを抱いている企業は少なくない。カンファレンス期間中にインタビューしたラマスワミCEO、そして日本法人ニュータニックス・ジャパンの金古毅コーポレート・バイスプレジデント兼社長も、日本市場に深く根付いてしまった「ハードウェアベンダー」というイメージを拭い去るのは容易ではないと語っている。
では、あらためてニュータニックスとは何の会社なのか。筆者がラマスワミCEOにこの質問をぶつけると、迷うことなく「ニュータニックスとは世界でもっともシンプルなインフラ環境を提供できる“ソフトウェアの会社”だ」という答えが返ってきた。「われわれはもう、ハードウェアの会社ではない。ソフトウェアで顧客の“Run Everywhere”の実現を支援する」と、ソフトウェアカンパニーであることをことさらに強調している。
このとき同じ部屋にいた他国の報道関係者にとっては「何をいまさら」という質問と回答だったかもしれないが、その後にインタビューした金古社長は「ラマスワミCEOは日本市場が“HCIのハードウェアベンダー”という思い込みから解放されていないことをよく理解している。われわれも本気でそのイメージからの脱却を図らなければならない」と語る。
シンプリシティを特徴としているだけあって、顧客からの評価は非常に高く、カンファレンスでは複数の海外の顧客企業から「IT人材がいない企業でも簡単に使える」「UIがシンプルで使いやすい」という声を聞いた。しかし、そのシンプリシティに特化したアプローチが、まだ日本市場ではすんなりと受け入れられるには至っていない。他国と比較してSIをメインとするパートナー企業が多いこともあり、「シンプルなソリューションの普及を好まないパートナーが一定数存在することは否めない。(サーバーと専用ストレージ機器を組み合わせる)3ティアソリューションのほうが支持されているという状況は正直、もどかしい」(金古社長)という難しさがある。
また、ハイブリッドマルチクラウドというトレンド自体が、日本ではまだ本格化していないという点も、ニュータニックス製品の日本市場での普及を遅らせている要因となっている。米国ではパブリッククラウドへの急激なワークロード移行が進んだ後にオンプレミスへの回帰的な動きが始まったが、「日本ではまだクラウド移行そのものが米国ほどには進んでいない」(金古社長)ため、ハイブリッドマルチクラウドをカバーするというニュータニックスの戦略への理解が進みにくいという問題もある。
その一方で、金古社長は「このまま生産性が上がらない状態では、日本の産業がだめになってしまうという危機感を強く持つ日本企業は確実に増えている。そういう企業やパートナーがわれわれに相談を持ちかけてくることが増えてきた」と、日本企業に変化の兆しが現れていることを指摘する。「具体的に手応えを感じているのは金融業。加えて大企業から“話を聞きたい”と言われる機会が増えてきた。当社の製品は触ったら必ず良さをわかってもらえる。例えば、NC2は(クラウドへの移行に際してアプリケーションの)リファクタリングがいらないが、使ってみればその良さをさらに実感できるはず。Nutanixの良さを理解してくれた顧客やパートナーによる新しいエコシステムをつくっていきたい。日本のエンタープライズに使ってもらう準備はできている」(金古社長)。
キャスウェル・シニアバイスプレジデントへのインタビュー時、「Project Beacon」の名前の由来について聞いてみた。暗い海を渡る船舶に光と信号を届ける灯台の明かり(beacon)になぞらえて命名したといい、「複雑化するハイブリッドマルチクラウドの世界をシンプルにするための先導役として、ニュータニックスがその役割を果たしたい」と答えている。
複雑化する一方のITインフラを、ワンプラットフォームでシンプルにする。言葉で言うのは簡単だが、本当に実現できると信じているか。そう聞くと、キャスウェル・シニアバイスプレジデントは「もちろんだ。クラウドのオペレーティングモデルは各社ごとに違うが、われわれのコアはデータセントリックであり、データを中心にアーキテクチャーを構成してソリューションを提供する。そのやり方がシンプリシティを実現すると信じている」と笑いながら、しかし確信に満ちた表情で答えた。ハイブリッドマルチクラウドの世界に「シンプリシティ」という信号を送り続けるニュータニックス。その灯りを日本企業に届ける準備は整いつつあるようだ。
【米シカゴ発】米Nutanix(ニュータニックス)は5月9・10日(米国時間)の2日間、米シカゴで、年次カンファレンス「.NEXT 2023」を3年ぶりに対面で開催した。テーマは「Run Everywhere. It's simply what we do.(あらゆるアプリケーションをあらゆる場所で稼働させる。それもシンプルなやり方で)」。近年同社が繰り返し伝えてきた「あらゆる場所」「シンプル」といったメッセージをあらためてキーワードに据え、クラウドの複雑さを解消することを自社の使命としていることを再度宣言したかたちだ。本稿では現地での取材をもとに、同社が描く「シンプルな世界」へのロードマップと戦略を俯瞰する。
(取材・文/五味明子 編集/日高 彰)
ハイブリッドマルチクラウド環境を一元管理する新たなクラウドサービス。さまざまなロケーションで運用されているNutanixクラスターを、単一のコンソールから一元管理するグローバルコントロールプレーンとして機能する。ライセンス管理も一元化できる。既存のローカルコントロールプレーンである「Nutanix Prism」を補完するソリューション。当初はSaaSでの提供だが、近い将来にKubernetesやオンプレミスもサポートする予定。
Nutanix Multicloud Snapshot Technology
「Nutanix Objects」「Amazon S3」「Azure Blobs」といったオブジェクトストレージにスナップショットを直接書き込むことが可能に(S3およびS3互換ストレージからサポート開始)。また、保存されたスナップショットから任意のNutanix環境への復元もできるようになり、被災時などにおけるディザスタリカバリーを容易に実現。
Nutanix Data Service for Kubernetes
Kubernetes上のステートフルコンテナに、データ保護やモビリティ、ポリシーベースの制御といった「Nutanix AOS」の機能を提供。開発者は使い慣れたKubernetesコマンドやAPIから、インフラ管理者は使い慣れたPrism Centralから操作が可能。OpenShiftおよびNutanix Kubernetes Engineからサポート開始。
Snowflakeとの連携強化
データをクラウドに移行しなくても、Snowflakeの分析サービス(外部テーブル)が実行できるようになり、ペタバイト級のデータに対しても高速なクエリー実行が可能に。また、地理的に分散したストレージ(Nutanix Objects)でも単一のグローバル名前空間でアクセス可能にすることで、データのサイロ化を防ぐ。
Project Beacon
製品/サービスではなく、「真のハイブリッドマルチクラウド」の実現に向けて発表した中長期のPaaSビジョン。アプリケーションだけでなく、アプリケーション実行に欠かせない存在であるデータベースのインフラ間のシームレスな移行をめざす。コントロールプレーンはニュータニックスがクラウドサービスとして提供するが、Nutanix Cloud Clusters(NC2)を必要とせず、EC2やAzure Virtual Machineといった環境でネイティブに動作する。プロジェクト期間は2年ほどを予定しており、当初はNutanix Database Service(NDB)のサポートから開始する。
(取材・文/五味明子 編集/日高 彰)

.NEXT 2023での主要な発表内容
Nutanix Centralハイブリッドマルチクラウド環境を一元管理する新たなクラウドサービス。さまざまなロケーションで運用されているNutanixクラスターを、単一のコンソールから一元管理するグローバルコントロールプレーンとして機能する。ライセンス管理も一元化できる。既存のローカルコントロールプレーンである「Nutanix Prism」を補完するソリューション。当初はSaaSでの提供だが、近い将来にKubernetesやオンプレミスもサポートする予定。
Nutanix Multicloud Snapshot Technology
「Nutanix Objects」「Amazon S3」「Azure Blobs」といったオブジェクトストレージにスナップショットを直接書き込むことが可能に(S3およびS3互換ストレージからサポート開始)。また、保存されたスナップショットから任意のNutanix環境への復元もできるようになり、被災時などにおけるディザスタリカバリーを容易に実現。
Nutanix Data Service for Kubernetes
Kubernetes上のステートフルコンテナに、データ保護やモビリティ、ポリシーベースの制御といった「Nutanix AOS」の機能を提供。開発者は使い慣れたKubernetesコマンドやAPIから、インフラ管理者は使い慣れたPrism Centralから操作が可能。OpenShiftおよびNutanix Kubernetes Engineからサポート開始。
Snowflakeとの連携強化
データをクラウドに移行しなくても、Snowflakeの分析サービス(外部テーブル)が実行できるようになり、ペタバイト級のデータに対しても高速なクエリー実行が可能に。また、地理的に分散したストレージ(Nutanix Objects)でも単一のグローバル名前空間でアクセス可能にすることで、データのサイロ化を防ぐ。
Project Beacon
製品/サービスではなく、「真のハイブリッドマルチクラウド」の実現に向けて発表した中長期のPaaSビジョン。アプリケーションだけでなく、アプリケーション実行に欠かせない存在であるデータベースのインフラ間のシームレスな移行をめざす。コントロールプレーンはニュータニックスがクラウドサービスとして提供するが、Nutanix Cloud Clusters(NC2)を必要とせず、EC2やAzure Virtual Machineといった環境でネイティブに動作する。プロジェクト期間は2年ほどを予定しており、当初はNutanix Database Service(NDB)のサポートから開始する。
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