Special Feature
製造業を支える愛知のITビジネス 中小のDX支援や世界を目指す動きも
2023/08/21 09:00
週刊BCN 2023年08月21日vol.1981掲載
世界最大級の自動車メーカーであるトヨタ自動車を筆頭に、自動車を中心とした製造業が基幹産業の愛知県。ITビジネスは、製造業のDXを支える立場で堅調に推移している。IT企業の中には、受託開発だけでなく自社開発したシステムでDXが遅れているとされる中小の製造業を支援する動きも出ている。名古屋発の自動運転スタートアップは、世界を見据えて開発を加速する。製造業を軸とした愛知県のITビジネスの現状をリポートする。
(取材・文/堀 茜)
愛知県情報サービス産業協会
愛知県情報サービス産業協会には7月現在、253社が加盟し、会員企業は従業員100人以下の中小規模が多くを占める。コロナ禍で名古屋市内の営業所を閉鎖するなどした企業もあり、一時的に会員数は減少したが、今年に入り新たな加盟も増えている。古川博史会長は「会員企業の業績は、売り上げ、利益ともに堅調に推移している。コロナ禍の影響もほとんどなく、むしろどの会社も人手不足が大きな課題だ」と現状を説明。コロナ禍でも売り上げが好調だった背景を、同協会は大手製造業を中心に、生産性向上のため積極的にIT投資をしていくという流れがあったと分析する。
愛知県情報サービス 産業協会 古川博史 会長
会員企業の業務内容は、自動車メーカーを中心とした製造業の大規模プロジェクトの中で、2次請け3次請けで受託開発を行うケースが多い。特にトヨタ関連の割合が大きい。「トヨタ関連の仕事は開発に必要な人数も規模が大きいため、人材の抱え込みや奪い合いが起きているのが現状」(古川会長)だ。
業界全体が好調な中、中小の会員企業を中心に、採用活動が厳しくなっているとの声が寄せられることから、同協会では、人材という観点で会員企業を支援する活動を強化。採用支援委員会で大学や専門学校の就職担当窓口と意見交換する場を設けたり、在籍している社員のスキルアップのために人材育成委員会でDXリテラシーをテーマにした講演会を実施したりしている。
現状のビジネスは、「営業をしなくても、仕事はあるぐらいの繁忙状況にある」(古川会長)一方、大企業からの2次請け3次請けを脱却しようと、自社での独自システム開発など新しい動きを模索する企業も出てきている。同協会では、将来的にユーザー企業では対応できない専門的な部分、よりプロフェッショナルな技術を提供することが必要になるとしながらも、人材不足もあり目の前の仕事への対応で手いっぱいで、新しい取り組みまで手が回らない会員も多いとみており、勉強会の開催などで新規事業への取り組みを後押ししたい考えだ。
県内の製造業におけるDXの現状について、古川会長は「大企業と中小では、取り組みに差がある」と分析する。町工場など中小企業にDX推進でアプローチしても、ITに投資するところまでまだ至っていない企業が多いとの印象が強いという。製造業を支えるという立場から、「導入しやすいところからDXを支援していきたい」(古川会長)と協会としても中小企業のDXを支援する考えを示した。
マイクロリンク
製造業の現場では、大企業を中心にDXが進んでいるが、中小企業は資金面などを理由になかなか新しいソリューションを取り入れられない現状がある。そうした中、低コストの独自システムで中小企業の製造現場のDXを後押ししているのが、名古屋市のソフトウェア開発企業のマイクロリンクだ。
マイクロリンク 久野尚博 社長
製造業の生産管理システムなどの受託開発を数多く手掛けている同社は、独自開発した初期費用0円で製造現場の「見える化」を実現するSaaSソリューション「IoT GO」を提供している。工作機械の稼働状況を可視化でき、1台の見える化にかかる料金は、カメラなど必要機器のリース代やシステム利用料などすべて含めて月額1万円。久野尚博社長は「低価格で導入のハードルが低く、SaaSなので、合わなければ止めることもできる。とりあえずやってみようと中小の製造業に受け入れられている」と分析する。
IoT GOの導入によって、工場のライン稼働状況を全社員がモニターで確認できるようになる。従業員300人規模の工場に導入した事例では、生産性の向上により年間2億円の経費削減を実現した。久野社長は「経営者が、このラインは70%動いているなと感覚値で思っていても、実際は40%しか動いていないということはよくある。データで運用状況を可視化することで、中小企業でもデータドリブンな経営判断が可能になるので、非常にメリットは大きい」とアピールする。
同社は、システムに興味をもった企業向けに説明会を毎月開催。同社の親会社が金属加工メーカーで、IoT GOを稼働させているため、その状況を事例として紹介している。毎回10~20社ほどの参加があり、見学会に参加した企業は、無料でシステムをトライアル利用することができる。効果を検証してから導入できる点もポイントで、トライアル後に本格導入する企業がほとんどだという。
同社では、全体最適化としてすべての機械へIoT GOの導入を提唱しているが、事業規模によって工作機械の台数が数十台と多い場合、SaaSのサブスクリプションサービスだと継続的な利用コストが高いという声が顧客の中にあった。そこで、今年からシステムの買い切り版の提供もスタート。30台以上の導入だとより低コストで運用が可能になり、買い切り版の場合は希望に合わせたカスタマイズができる点も好評を得ている。
また、工作機械だけでなく、社内の業務すべてを見える化する「IoT GO DX」の提供もスタート。社員1人当たり月額500円でサービスが利用でき、IoT GOとの連携も可能で、人の動きも含めて業務のサイロ化を防ぐ効果が期待できるとする。
契約企業は愛知県内の製造業が多いが、SaaSのため、オンラインで商談し、県外企業が利用するケースも増えてきている。久野社長は「DXを考えている中小企業に広く価値を伝えていきたい」と意気込む。
同県内では、自動車産業を支える部品メーカーなど中小の製造業が多いが、同社がIoT GOを発売した2018年に比べ、「中小製造業で、生産性を上げるためにDXに取り組まなければという機運は格段に上がっている」(久野社長)。同社は、中小企業でも取り入れやすい低価格のサービスでDXを支援し、製造業の発展を支えていく考えだ。ティアフォー
自動車が基幹産業の愛知県から、最新技術を世界に向けて発信しようとしているのが、ティアフォーだ。名古屋大学発のスタートアップ企業である同社は、「自動運転の民主化」をミッションに掲げ、自動運転の社会実装を実現するために多くの企業と連携を深めている。
同社は、オープンソースの自動運転用ソフトウェア「Autoware」の開発を主導。自動運転車両の開発を目指す自動車メーカーや、自動運転向けのソリューションを開発するIT企業などが開発プラットフォームとして利用している。交通事業者や自治体と協業し、自動運転の実装に向けた実証実験も全国各地で展開している。
自動運転システム基盤「Pilot.Auto」と、実際の車両を走らせることなくクラウド環境で自動運転のシミュレーションができる「Web.Auto」をプロダクトとして提供しており、顧客企業が自動運転の製品化やサービス化をより早く低コストで実現できるよう支援している。
ティアフォー 三好 航 執行役員
自動運転普及の意義について、同社では▽交通事故の死者を減らす▽物流で課題となっているドライバー不足に対応する▽交通弱者が多い過疎地の交通網の整備-などを挙げる。三好航・執行役員CSO/経営戦略室長は、「当社だけではできることに限りがあるし、スピードも遅くなる。技術を広く公開することで自動運転の社会実装を早期に実現し、社会問題の解決を加速したい」と狙いを説明。量産型の自動運転車両の自社開発はせず、パートナー企業との協業によって、自動運転の普及を目指す方針。
パートナー関係の取り組みでは、愛知県内の多くの企業と協業している。名古屋市のアイサンテクノロジーはティアフォーの株主でもあり、「自動運転の実装のために非常に重要なパートナー企業の1社」(三好執行役員)。アイサンテクノロジーは、ティアフォーが開発した自動運転用のカメラを代理店として販売したり、自動運転の車両や運用技術を使ったサービス化の役割を担ったりと、多方面で連携している。三好執行役員は「当社はコアとなる技術を開発して提供することに注力し、サービス化や実装するところはパートナーと協力する戦略を取っている」とスタンスを語った。
ティアフォーは2018年、Autowareの開発を推進する非営利団体「The Autoware Foundation」を設立した。国内外の大企業のほか、スタートアップ企業、大学など幅広い組織が参加し、加盟団体は年々増加。現在は60団体以上が参画し、IT企業も多く名を連ねる。
同団体の活動は、ワーキンググループで自動運転技術の開発方針や、ロードマップの策定を議論。参加企業は自社の自動運転ビジネスを考えつつ、新技術を具体化していくための方向性づくりにも影響を及ぼすことができるのがメリットになるという。
企業規模や業種は問わず、一定のメンバーシップフィーを支払うか、開発に貢献する人材を提供すれば、どんな企業でも参加できる。三好執行役員は「多くの企業や人が関われば関わるほど、自動運転の開発と実装が加速する」として加盟企業の増加を歓迎する。今後は、海外に日本発の自動運転エコシステムを広げることにフォーカス。現在、米国にある同団体の拠点に加え、アジアや欧州にも展開していく方針だ。
日本政府は、自動運転の普及について25年までに国内50カ所、27年までに100カ所で無人自動運転サービスを実施することを目標としている。三好執行役員は「その過半を取りにいきたい」と話し、自動運転のリーディングカンパニーを目指す考えだ。実装に向け今後法整備が進むことを見据え、安全面を担保するセキュリティソリューションなどについて「セキュリティ専門ベンダーと連携することも含め、最適なかたちを目指していきたい」と展望した。
(取材・文/堀 茜)

愛知県情報サービス産業協会
IT人材育成を強化 受託開発以外を模索する企業も
愛知県情報サービス産業協会には7月現在、253社が加盟し、会員企業は従業員100人以下の中小規模が多くを占める。コロナ禍で名古屋市内の営業所を閉鎖するなどした企業もあり、一時的に会員数は減少したが、今年に入り新たな加盟も増えている。古川博史会長は「会員企業の業績は、売り上げ、利益ともに堅調に推移している。コロナ禍の影響もほとんどなく、むしろどの会社も人手不足が大きな課題だ」と現状を説明。コロナ禍でも売り上げが好調だった背景を、同協会は大手製造業を中心に、生産性向上のため積極的にIT投資をしていくという流れがあったと分析する。
会員企業の業務内容は、自動車メーカーを中心とした製造業の大規模プロジェクトの中で、2次請け3次請けで受託開発を行うケースが多い。特にトヨタ関連の割合が大きい。「トヨタ関連の仕事は開発に必要な人数も規模が大きいため、人材の抱え込みや奪い合いが起きているのが現状」(古川会長)だ。
業界全体が好調な中、中小の会員企業を中心に、採用活動が厳しくなっているとの声が寄せられることから、同協会では、人材という観点で会員企業を支援する活動を強化。採用支援委員会で大学や専門学校の就職担当窓口と意見交換する場を設けたり、在籍している社員のスキルアップのために人材育成委員会でDXリテラシーをテーマにした講演会を実施したりしている。
現状のビジネスは、「営業をしなくても、仕事はあるぐらいの繁忙状況にある」(古川会長)一方、大企業からの2次請け3次請けを脱却しようと、自社での独自システム開発など新しい動きを模索する企業も出てきている。同協会では、将来的にユーザー企業では対応できない専門的な部分、よりプロフェッショナルな技術を提供することが必要になるとしながらも、人材不足もあり目の前の仕事への対応で手いっぱいで、新しい取り組みまで手が回らない会員も多いとみており、勉強会の開催などで新規事業への取り組みを後押ししたい考えだ。
県内の製造業におけるDXの現状について、古川会長は「大企業と中小では、取り組みに差がある」と分析する。町工場など中小企業にDX推進でアプローチしても、ITに投資するところまでまだ至っていない企業が多いとの印象が強いという。製造業を支えるという立場から、「導入しやすいところからDXを支援していきたい」(古川会長)と協会としても中小企業のDXを支援する考えを示した。
マイクロリンク
見える化SaaSで中小製造業のDXを支援
製造業の現場では、大企業を中心にDXが進んでいるが、中小企業は資金面などを理由になかなか新しいソリューションを取り入れられない現状がある。そうした中、低コストの独自システムで中小企業の製造現場のDXを後押ししているのが、名古屋市のソフトウェア開発企業のマイクロリンクだ。
製造業の生産管理システムなどの受託開発を数多く手掛けている同社は、独自開発した初期費用0円で製造現場の「見える化」を実現するSaaSソリューション「IoT GO」を提供している。工作機械の稼働状況を可視化でき、1台の見える化にかかる料金は、カメラなど必要機器のリース代やシステム利用料などすべて含めて月額1万円。久野尚博社長は「低価格で導入のハードルが低く、SaaSなので、合わなければ止めることもできる。とりあえずやってみようと中小の製造業に受け入れられている」と分析する。
IoT GOの導入によって、工場のライン稼働状況を全社員がモニターで確認できるようになる。従業員300人規模の工場に導入した事例では、生産性の向上により年間2億円の経費削減を実現した。久野社長は「経営者が、このラインは70%動いているなと感覚値で思っていても、実際は40%しか動いていないということはよくある。データで運用状況を可視化することで、中小企業でもデータドリブンな経営判断が可能になるので、非常にメリットは大きい」とアピールする。
同社は、システムに興味をもった企業向けに説明会を毎月開催。同社の親会社が金属加工メーカーで、IoT GOを稼働させているため、その状況を事例として紹介している。毎回10~20社ほどの参加があり、見学会に参加した企業は、無料でシステムをトライアル利用することができる。効果を検証してから導入できる点もポイントで、トライアル後に本格導入する企業がほとんどだという。
同社では、全体最適化としてすべての機械へIoT GOの導入を提唱しているが、事業規模によって工作機械の台数が数十台と多い場合、SaaSのサブスクリプションサービスだと継続的な利用コストが高いという声が顧客の中にあった。そこで、今年からシステムの買い切り版の提供もスタート。30台以上の導入だとより低コストで運用が可能になり、買い切り版の場合は希望に合わせたカスタマイズができる点も好評を得ている。
また、工作機械だけでなく、社内の業務すべてを見える化する「IoT GO DX」の提供もスタート。社員1人当たり月額500円でサービスが利用でき、IoT GOとの連携も可能で、人の動きも含めて業務のサイロ化を防ぐ効果が期待できるとする。
契約企業は愛知県内の製造業が多いが、SaaSのため、オンラインで商談し、県外企業が利用するケースも増えてきている。久野社長は「DXを考えている中小企業に広く価値を伝えていきたい」と意気込む。
同県内では、自動車産業を支える部品メーカーなど中小の製造業が多いが、同社がIoT GOを発売した2018年に比べ、「中小製造業で、生産性を上げるためにDXに取り組まなければという機運は格段に上がっている」(久野社長)。同社は、中小企業でも取り入れやすい低価格のサービスでDXを支援し、製造業の発展を支えていく考えだ。
ティアフォー
自動運転の民主化へオープンソースで開発加速
自動車が基幹産業の愛知県から、最新技術を世界に向けて発信しようとしているのが、ティアフォーだ。名古屋大学発のスタートアップ企業である同社は、「自動運転の民主化」をミッションに掲げ、自動運転の社会実装を実現するために多くの企業と連携を深めている。同社は、オープンソースの自動運転用ソフトウェア「Autoware」の開発を主導。自動運転車両の開発を目指す自動車メーカーや、自動運転向けのソリューションを開発するIT企業などが開発プラットフォームとして利用している。交通事業者や自治体と協業し、自動運転の実装に向けた実証実験も全国各地で展開している。
自動運転システム基盤「Pilot.Auto」と、実際の車両を走らせることなくクラウド環境で自動運転のシミュレーションができる「Web.Auto」をプロダクトとして提供しており、顧客企業が自動運転の製品化やサービス化をより早く低コストで実現できるよう支援している。
自動運転普及の意義について、同社では▽交通事故の死者を減らす▽物流で課題となっているドライバー不足に対応する▽交通弱者が多い過疎地の交通網の整備-などを挙げる。三好航・執行役員CSO/経営戦略室長は、「当社だけではできることに限りがあるし、スピードも遅くなる。技術を広く公開することで自動運転の社会実装を早期に実現し、社会問題の解決を加速したい」と狙いを説明。量産型の自動運転車両の自社開発はせず、パートナー企業との協業によって、自動運転の普及を目指す方針。
パートナー関係の取り組みでは、愛知県内の多くの企業と協業している。名古屋市のアイサンテクノロジーはティアフォーの株主でもあり、「自動運転の実装のために非常に重要なパートナー企業の1社」(三好執行役員)。アイサンテクノロジーは、ティアフォーが開発した自動運転用のカメラを代理店として販売したり、自動運転の車両や運用技術を使ったサービス化の役割を担ったりと、多方面で連携している。三好執行役員は「当社はコアとなる技術を開発して提供することに注力し、サービス化や実装するところはパートナーと協力する戦略を取っている」とスタンスを語った。
ティアフォーは2018年、Autowareの開発を推進する非営利団体「The Autoware Foundation」を設立した。国内外の大企業のほか、スタートアップ企業、大学など幅広い組織が参加し、加盟団体は年々増加。現在は60団体以上が参画し、IT企業も多く名を連ねる。
同団体の活動は、ワーキンググループで自動運転技術の開発方針や、ロードマップの策定を議論。参加企業は自社の自動運転ビジネスを考えつつ、新技術を具体化していくための方向性づくりにも影響を及ぼすことができるのがメリットになるという。
企業規模や業種は問わず、一定のメンバーシップフィーを支払うか、開発に貢献する人材を提供すれば、どんな企業でも参加できる。三好執行役員は「多くの企業や人が関われば関わるほど、自動運転の開発と実装が加速する」として加盟企業の増加を歓迎する。今後は、海外に日本発の自動運転エコシステムを広げることにフォーカス。現在、米国にある同団体の拠点に加え、アジアや欧州にも展開していく方針だ。
日本政府は、自動運転の普及について25年までに国内50カ所、27年までに100カ所で無人自動運転サービスを実施することを目標としている。三好執行役員は「その過半を取りにいきたい」と話し、自動運転のリーディングカンパニーを目指す考えだ。実装に向け今後法整備が進むことを見据え、安全面を担保するセキュリティソリューションなどについて「セキュリティ専門ベンダーと連携することも含め、最適なかたちを目指していきたい」と展望した。
世界最大級の自動車メーカーであるトヨタ自動車を筆頭に、自動車を中心とした製造業が基幹産業の愛知県。ITビジネスは、製造業のDXを支える立場で堅調に推移している。IT企業の中には、受託開発だけでなく自社開発したシステムでDXが遅れているとされる中小の製造業を支援する動きも出ている。名古屋発の自動運転スタートアップは、世界を見据えて開発を加速する。製造業を軸とした愛知県のITビジネスの現状をリポートする。
(取材・文/堀 茜)
愛知県情報サービス産業協会
愛知県情報サービス産業協会には7月現在、253社が加盟し、会員企業は従業員100人以下の中小規模が多くを占める。コロナ禍で名古屋市内の営業所を閉鎖するなどした企業もあり、一時的に会員数は減少したが、今年に入り新たな加盟も増えている。古川博史会長は「会員企業の業績は、売り上げ、利益ともに堅調に推移している。コロナ禍の影響もほとんどなく、むしろどの会社も人手不足が大きな課題だ」と現状を説明。コロナ禍でも売り上げが好調だった背景を、同協会は大手製造業を中心に、生産性向上のため積極的にIT投資をしていくという流れがあったと分析する。
愛知県情報サービス 産業協会 古川博史 会長
会員企業の業務内容は、自動車メーカーを中心とした製造業の大規模プロジェクトの中で、2次請け3次請けで受託開発を行うケースが多い。特にトヨタ関連の割合が大きい。「トヨタ関連の仕事は開発に必要な人数も規模が大きいため、人材の抱え込みや奪い合いが起きているのが現状」(古川会長)だ。
業界全体が好調な中、中小の会員企業を中心に、採用活動が厳しくなっているとの声が寄せられることから、同協会では、人材という観点で会員企業を支援する活動を強化。採用支援委員会で大学や専門学校の就職担当窓口と意見交換する場を設けたり、在籍している社員のスキルアップのために人材育成委員会でDXリテラシーをテーマにした講演会を実施したりしている。
現状のビジネスは、「営業をしなくても、仕事はあるぐらいの繁忙状況にある」(古川会長)一方、大企業からの2次請け3次請けを脱却しようと、自社での独自システム開発など新しい動きを模索する企業も出てきている。同協会では、将来的にユーザー企業では対応できない専門的な部分、よりプロフェッショナルな技術を提供することが必要になるとしながらも、人材不足もあり目の前の仕事への対応で手いっぱいで、新しい取り組みまで手が回らない会員も多いとみており、勉強会の開催などで新規事業への取り組みを後押ししたい考えだ。
県内の製造業におけるDXの現状について、古川会長は「大企業と中小では、取り組みに差がある」と分析する。町工場など中小企業にDX推進でアプローチしても、ITに投資するところまでまだ至っていない企業が多いとの印象が強いという。製造業を支えるという立場から、「導入しやすいところからDXを支援していきたい」(古川会長)と協会としても中小企業のDXを支援する考えを示した。
(取材・文/堀 茜)

愛知県情報サービス産業協会
IT人材育成を強化 受託開発以外を模索する企業も
愛知県情報サービス産業協会には7月現在、253社が加盟し、会員企業は従業員100人以下の中小規模が多くを占める。コロナ禍で名古屋市内の営業所を閉鎖するなどした企業もあり、一時的に会員数は減少したが、今年に入り新たな加盟も増えている。古川博史会長は「会員企業の業績は、売り上げ、利益ともに堅調に推移している。コロナ禍の影響もほとんどなく、むしろどの会社も人手不足が大きな課題だ」と現状を説明。コロナ禍でも売り上げが好調だった背景を、同協会は大手製造業を中心に、生産性向上のため積極的にIT投資をしていくという流れがあったと分析する。
会員企業の業務内容は、自動車メーカーを中心とした製造業の大規模プロジェクトの中で、2次請け3次請けで受託開発を行うケースが多い。特にトヨタ関連の割合が大きい。「トヨタ関連の仕事は開発に必要な人数も規模が大きいため、人材の抱え込みや奪い合いが起きているのが現状」(古川会長)だ。
業界全体が好調な中、中小の会員企業を中心に、採用活動が厳しくなっているとの声が寄せられることから、同協会では、人材という観点で会員企業を支援する活動を強化。採用支援委員会で大学や専門学校の就職担当窓口と意見交換する場を設けたり、在籍している社員のスキルアップのために人材育成委員会でDXリテラシーをテーマにした講演会を実施したりしている。
現状のビジネスは、「営業をしなくても、仕事はあるぐらいの繁忙状況にある」(古川会長)一方、大企業からの2次請け3次請けを脱却しようと、自社での独自システム開発など新しい動きを模索する企業も出てきている。同協会では、将来的にユーザー企業では対応できない専門的な部分、よりプロフェッショナルな技術を提供することが必要になるとしながらも、人材不足もあり目の前の仕事への対応で手いっぱいで、新しい取り組みまで手が回らない会員も多いとみており、勉強会の開催などで新規事業への取り組みを後押ししたい考えだ。
県内の製造業におけるDXの現状について、古川会長は「大企業と中小では、取り組みに差がある」と分析する。町工場など中小企業にDX推進でアプローチしても、ITに投資するところまでまだ至っていない企業が多いとの印象が強いという。製造業を支えるという立場から、「導入しやすいところからDXを支援していきたい」(古川会長)と協会としても中小企業のDXを支援する考えを示した。
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