Special Feature
拡大する日立のLumada事業 デジタル化の波を捉えて成長を加速
2023/10/30 09:00
週刊BCN 2023年10月30日vol.1990掲載
日立製作所が手掛けるLumada事業が拡大している。国内外で顧客のニーズを取り込み、売上高に当たる売上収益は順調に伸長。利益率の向上にも一役買っており、「日立全体の成長をけん引するようになっている」(小島啓二・執行役社長兼CEO)との状況だ。今後はデジタル化の波を捉えて成長を加速させる考えで、パートナーとの関係強化などに注力している。
(取材・文/齋藤秀平)
日立は、2008年のリーマン・ショックに端を発する世界経済の混乱による影響によって、08年度の最終損益で、当時の国内の製造業として過去最大となる7873億円の赤字を計上した。その後、抜本的な事業改革を進め、データとテクノロジーを活用して社会課題の解決を目指す社会イノベーション事業に注力する中、16年5月にLumada事業を開始した。
日立にとって、Lumada事業が重要な位置付けであることは、日立が発信する情報などを見るとよく分かる。ただ、日立による「お客様のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーの総称」との紹介では、具体的に何を指すのか分からない人もいるだろう。
江口智也 担当部長
これに対し、Lumada事業の戦略を担うデジタルエンジニアリングビジネスユニットStrategy & Planning Lumada Strategyの江口智也・担当部長は「日立が国内外で蓄積してきたAIツールやメソドロジー(方法論)、ユースケース、ソリューションを活用しながら進めているのがLumada事業だ」とし、「日立がこれまでに培ってきたものが全て詰まっていると考えてもらっていい」と付け加える。
日立が22年4月に発表した「2024中期経営計画」では、Lumada事業は今後の成長の中心と位置付けられた。以降、小島社長兼CEOが翌23年4月の22年度通期決算説明会で「Lumada事業が日立全体の成長をけん引するようになっている」と話すなど、日立の中でLumada事業の存在感は着実に高まっている。
実際にLumada事業がどのように推移しているのか見ていきたい。各年度の売上収益は、16年度が9000億円、17年度が1兆60億円、18年度が1兆1270億円、19年度が1兆370億円(定義見直し前の売上収益は1兆2210億円)、20年度が1兆1100億円、21年度が1兆3780億円(同1兆6090億円)、22年度が1兆9600億円と、おおむね右肩上がりを継続。23年度は2兆2800億円、24年度は2兆6500億円が目標だ。
全社の売上収益に対するLumada事業の割合は、21年度が21%、22年度が26%で、目標が達成できれば、23年度は29%、24年度は33%となる見通し。日立はその先についても見据えており、将来的に全社の売上収益の過半を占めるまで伸ばすことを狙っている。
また、調整後営業利益に一部の償却費を足し戻すなどしたAdjusted EBITAの率では、Lumada事業は21年度に12%、22年度に14%となり、いずれも日立全体の数字(21年度は9.9%、22年度は9.5%)を上回った。23年度は15%(日立全体の見込みは10.2%)、24年度は16%(同12%)と、引き続き全体より高い水準の維持を目指す。
24年度に売上収益2兆6500億円を実現するためには、21年度からのCAGRは24%となる。江口担当部長は「若干、野心的な目標」としつつ、「伸びていくことが期待できる市場だからこそ、日立の成長にもつなげられる」とみている。
高い成長を目指す中、Lumada事業では、どのようなビジネスを展開しているのか。江口担当部長は「売って終わりではない」ことが特徴だと強調し、「ある顧客に製品などを売り、その後に得られるデータから新しい課題が分析できる。そうすると、また新しい提案が可能で、顧客に別のものを買ってもらえる。この成長サイクルを回している」と説く。
江口担当部長は、実際の事例の一つとして、製造プロセスの革新を挙げる。具体的には、▽デザイン思考で製造プロセスの最適化を検討▽ロボティクスSIで製造プロセスソリューションを実装▽生産現場向けデジタルツイン「IoTコンパス」で生産設備のデータを可視化・分析▽遠隔監視と予兆保全で保守コストを削減―の各取り組みを進めながら、ビジネスプロセスの変革を実現したと説明。顧客の経営課題を理解した上で、ITなどを使った解決方法を創出・実装し、さらに、運用・保守をして次の課題を見つけるというサイクル全体で収益の拡大につなげたとアピールする。
このほか、米McDonald's(マクドナルド)の事例として、世界で6800万人が利用するデジタルメニューボードやモバイルアプリ、Webサイト、セルフオーダーシステムをユーザー視点でデザインしたことを紹介。「従来のITの世界は効率化がメインで、いかにデータを活用してコストを削減できるかといった部分が大きかった」とした上で、「これからは日立から見た顧客が幸せになれるような価値を提供すれば、日立の顧客の売り上げが増え、かつ日立との協創関係が深まるようになる」と語る。
Lumada事業の国内と海外の売上収益の比率は、20年度は海外が30%、国内が70%だったが、22年度は半々となり、海外の伸びが目立っている。その中で、21年に買収した米GlobalLogic(グローバルロジック)が一定の役割を果たしている。江口担当部長は「グローバルロジックは、顧客が求めているものをスピーディにかたちにすることに長けている。顧客からすると、素早く意思決定ができるため、引き合いは非常に増えている」と胸を張る。
グローバルロジックの22年度の業績は、売上収益が前年度比84%増の2073億円。Adjusted EBITA率は21.8%と高い収益性を維持した。顧客のニーズに的確に対応してきたことに加え、江口担当部長は「グローバルロジックは、元々、自動車やリテールなどに強みがあった。日立と組むことによって、エネルギーなど、今まで知見がなかった新しいマーケットに打って出られるようになったことも成長の要因になっている」と補足する。
パートナーとの取り組みでは、例えば、生成AIの安全・有効な社内外での利活用の推進を目的に、23年5月に新設した「Generative AIセンター」で、アライアンスプログラムのパートナーである日本マイクロソフトと協力。セキュリティや知的財産などの専門知識を組み合わせ、リスクをコントロールしながら、ユースケースや価値創出を支援するコンサルティングサービスを提供する。ほかにも、クラウド事業の拡大に向けて、米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)や米Equinix(エクイニクス)との協業を強化している。
江口担当部長は「昨今のテクノロジー変革の部分については、パートナーと協力しながら進めている」と話す。パートナーの業種はITが目立っているが、「それだけにとどめたくない」とも。現在、工場の最適化をテーマに、IT以外の企業とも話を進めているとし、顧客や社会の課題を起点とした協力関係の構築にも力点を置いているとの考えを示す。
アライアンスプログラムは、便宜上、イノベーションパートナーとソリューションプロバイダー、テクノロジープロバイダーの三つに分類。各パートナーに対しては、ポータルサイトでユースケースやパートナーの情報などを共有しており、そこから新たな案件が生まれることあるという。ただ、ビジネスの中心は、製品やサービスなどを軸とするソリューションプロバイダーとテクノロジープロバイダー絡み。多様な協創が必要なイノベーションパートナーとの関係で成果が出るのはもう少し先になる模様だ。
アライアンスプログラムの今後の方向性については、パートナーの数をむやみに増やしていくことよりも、「顧客や社会が抱える課題を解決する上で、同じ思いを持っているパートナーを求めていく」(江口担当部長)ことを重視する。日立や各パートナーの力によって新しい価値を生み出し、より幅広い社会課題の解決につなげていく方針だ。
(取材・文/齋藤秀平)

日立の全てが詰まっている
まずはLumada事業についておさらいしておく。名称は、照らす、解明する、輝かせるを意味する英語のIlluminateとDataを組み合わせた造語で、日立は「お客様のデータに光をあて、輝かせることで、新たな知見を引き出し、経営課題の解決や事業の成長に貢献していくという思いを込めている」としている。日立は、2008年のリーマン・ショックに端を発する世界経済の混乱による影響によって、08年度の最終損益で、当時の国内の製造業として過去最大となる7873億円の赤字を計上した。その後、抜本的な事業改革を進め、データとテクノロジーを活用して社会課題の解決を目指す社会イノベーション事業に注力する中、16年5月にLumada事業を開始した。
日立にとって、Lumada事業が重要な位置付けであることは、日立が発信する情報などを見るとよく分かる。ただ、日立による「お客様のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーの総称」との紹介では、具体的に何を指すのか分からない人もいるだろう。
これに対し、Lumada事業の戦略を担うデジタルエンジニアリングビジネスユニットStrategy & Planning Lumada Strategyの江口智也・担当部長は「日立が国内外で蓄積してきたAIツールやメソドロジー(方法論)、ユースケース、ソリューションを活用しながら進めているのがLumada事業だ」とし、「日立がこれまでに培ってきたものが全て詰まっていると考えてもらっていい」と付け加える。
日立が22年4月に発表した「2024中期経営計画」では、Lumada事業は今後の成長の中心と位置付けられた。以降、小島社長兼CEOが翌23年4月の22年度通期決算説明会で「Lumada事業が日立全体の成長をけん引するようになっている」と話すなど、日立の中でLumada事業の存在感は着実に高まっている。
実際にLumada事業がどのように推移しているのか見ていきたい。各年度の売上収益は、16年度が9000億円、17年度が1兆60億円、18年度が1兆1270億円、19年度が1兆370億円(定義見直し前の売上収益は1兆2210億円)、20年度が1兆1100億円、21年度が1兆3780億円(同1兆6090億円)、22年度が1兆9600億円と、おおむね右肩上がりを継続。23年度は2兆2800億円、24年度は2兆6500億円が目標だ。

全社の売上収益に対するLumada事業の割合は、21年度が21%、22年度が26%で、目標が達成できれば、23年度は29%、24年度は33%となる見通し。日立はその先についても見据えており、将来的に全社の売上収益の過半を占めるまで伸ばすことを狙っている。
また、調整後営業利益に一部の償却費を足し戻すなどしたAdjusted EBITAの率では、Lumada事業は21年度に12%、22年度に14%となり、いずれも日立全体の数字(21年度は9.9%、22年度は9.5%)を上回った。23年度は15%(日立全体の見込みは10.2%)、24年度は16%(同12%)と、引き続き全体より高い水準の維持を目指す。
売って終わりではないビジネス
日立は、Lumada事業を進める際、拡大するデジタル市場に特に焦点を当てている。江口担当部長によると、幅広い業種をターゲットにする中で、デジタル化の進展に伴い年平均成長率(CAGR)16~20%超の成長が見込める通信・メディアやリテール、自動車、ヘルスケアなどの市場を中心に、各企業にアプローチしているという。24年度に売上収益2兆6500億円を実現するためには、21年度からのCAGRは24%となる。江口担当部長は「若干、野心的な目標」としつつ、「伸びていくことが期待できる市場だからこそ、日立の成長にもつなげられる」とみている。
高い成長を目指す中、Lumada事業では、どのようなビジネスを展開しているのか。江口担当部長は「売って終わりではない」ことが特徴だと強調し、「ある顧客に製品などを売り、その後に得られるデータから新しい課題が分析できる。そうすると、また新しい提案が可能で、顧客に別のものを買ってもらえる。この成長サイクルを回している」と説く。
江口担当部長は、実際の事例の一つとして、製造プロセスの革新を挙げる。具体的には、▽デザイン思考で製造プロセスの最適化を検討▽ロボティクスSIで製造プロセスソリューションを実装▽生産現場向けデジタルツイン「IoTコンパス」で生産設備のデータを可視化・分析▽遠隔監視と予兆保全で保守コストを削減―の各取り組みを進めながら、ビジネスプロセスの変革を実現したと説明。顧客の経営課題を理解した上で、ITなどを使った解決方法を創出・実装し、さらに、運用・保守をして次の課題を見つけるというサイクル全体で収益の拡大につなげたとアピールする。
このほか、米McDonald's(マクドナルド)の事例として、世界で6800万人が利用するデジタルメニューボードやモバイルアプリ、Webサイト、セルフオーダーシステムをユーザー視点でデザインしたことを紹介。「従来のITの世界は効率化がメインで、いかにデータを活用してコストを削減できるかといった部分が大きかった」とした上で、「これからは日立から見た顧客が幸せになれるような価値を提供すれば、日立の顧客の売り上げが増え、かつ日立との協創関係が深まるようになる」と語る。
Lumada事業の国内と海外の売上収益の比率は、20年度は海外が30%、国内が70%だったが、22年度は半々となり、海外の伸びが目立っている。その中で、21年に買収した米GlobalLogic(グローバルロジック)が一定の役割を果たしている。江口担当部長は「グローバルロジックは、顧客が求めているものをスピーディにかたちにすることに長けている。顧客からすると、素早く意思決定ができるため、引き合いは非常に増えている」と胸を張る。
グローバルロジックの22年度の業績は、売上収益が前年度比84%増の2073億円。Adjusted EBITA率は21.8%と高い収益性を維持した。顧客のニーズに的確に対応してきたことに加え、江口担当部長は「グローバルロジックは、元々、自動車やリテールなどに強みがあった。日立と組むことによって、エネルギーなど、今まで知見がなかった新しいマーケットに打って出られるようになったことも成長の要因になっている」と補足する。
課題を起点とした関係に力点
Lumada事業を進めるに当たり、日立が持つ方法とナレッジ、人の三つは大きな強みになっている。ただ、日立だけで解決できない課題もあり、その部分についてはパートナーとの協力は欠かせない。20年にスタートした「Lumadaアライアンスプログラム」では、開始当初のパートナーの数は24社だったが、現在は60社ほどに増えており、各パートナーとの関係は順調に強化できているという。パートナーとの取り組みでは、例えば、生成AIの安全・有効な社内外での利活用の推進を目的に、23年5月に新設した「Generative AIセンター」で、アライアンスプログラムのパートナーである日本マイクロソフトと協力。セキュリティや知的財産などの専門知識を組み合わせ、リスクをコントロールしながら、ユースケースや価値創出を支援するコンサルティングサービスを提供する。ほかにも、クラウド事業の拡大に向けて、米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)や米Equinix(エクイニクス)との協業を強化している。
江口担当部長は「昨今のテクノロジー変革の部分については、パートナーと協力しながら進めている」と話す。パートナーの業種はITが目立っているが、「それだけにとどめたくない」とも。現在、工場の最適化をテーマに、IT以外の企業とも話を進めているとし、顧客や社会の課題を起点とした協力関係の構築にも力点を置いているとの考えを示す。
アライアンスプログラムは、便宜上、イノベーションパートナーとソリューションプロバイダー、テクノロジープロバイダーの三つに分類。各パートナーに対しては、ポータルサイトでユースケースやパートナーの情報などを共有しており、そこから新たな案件が生まれることあるという。ただ、ビジネスの中心は、製品やサービスなどを軸とするソリューションプロバイダーとテクノロジープロバイダー絡み。多様な協創が必要なイノベーションパートナーとの関係で成果が出るのはもう少し先になる模様だ。
アライアンスプログラムの今後の方向性については、パートナーの数をむやみに増やしていくことよりも、「顧客や社会が抱える課題を解決する上で、同じ思いを持っているパートナーを求めていく」(江口担当部長)ことを重視する。日立や各パートナーの力によって新しい価値を生み出し、より幅広い社会課題の解決につなげていく方針だ。
日立製作所が手掛けるLumada事業が拡大している。国内外で顧客のニーズを取り込み、売上高に当たる売上収益は順調に伸長。利益率の向上にも一役買っており、「日立全体の成長をけん引するようになっている」(小島啓二・執行役社長兼CEO)との状況だ。今後はデジタル化の波を捉えて成長を加速させる考えで、パートナーとの関係強化などに注力している。
(取材・文/齋藤秀平)
日立は、2008年のリーマン・ショックに端を発する世界経済の混乱による影響によって、08年度の最終損益で、当時の国内の製造業として過去最大となる7873億円の赤字を計上した。その後、抜本的な事業改革を進め、データとテクノロジーを活用して社会課題の解決を目指す社会イノベーション事業に注力する中、16年5月にLumada事業を開始した。
日立にとって、Lumada事業が重要な位置付けであることは、日立が発信する情報などを見るとよく分かる。ただ、日立による「お客様のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーの総称」との紹介では、具体的に何を指すのか分からない人もいるだろう。
江口智也 担当部長
これに対し、Lumada事業の戦略を担うデジタルエンジニアリングビジネスユニットStrategy & Planning Lumada Strategyの江口智也・担当部長は「日立が国内外で蓄積してきたAIツールやメソドロジー(方法論)、ユースケース、ソリューションを活用しながら進めているのがLumada事業だ」とし、「日立がこれまでに培ってきたものが全て詰まっていると考えてもらっていい」と付け加える。
日立が22年4月に発表した「2024中期経営計画」では、Lumada事業は今後の成長の中心と位置付けられた。以降、小島社長兼CEOが翌23年4月の22年度通期決算説明会で「Lumada事業が日立全体の成長をけん引するようになっている」と話すなど、日立の中でLumada事業の存在感は着実に高まっている。
実際にLumada事業がどのように推移しているのか見ていきたい。各年度の売上収益は、16年度が9000億円、17年度が1兆60億円、18年度が1兆1270億円、19年度が1兆370億円(定義見直し前の売上収益は1兆2210億円)、20年度が1兆1100億円、21年度が1兆3780億円(同1兆6090億円)、22年度が1兆9600億円と、おおむね右肩上がりを継続。23年度は2兆2800億円、24年度は2兆6500億円が目標だ。
全社の売上収益に対するLumada事業の割合は、21年度が21%、22年度が26%で、目標が達成できれば、23年度は29%、24年度は33%となる見通し。日立はその先についても見据えており、将来的に全社の売上収益の過半を占めるまで伸ばすことを狙っている。
また、調整後営業利益に一部の償却費を足し戻すなどしたAdjusted EBITAの率では、Lumada事業は21年度に12%、22年度に14%となり、いずれも日立全体の数字(21年度は9.9%、22年度は9.5%)を上回った。23年度は15%(日立全体の見込みは10.2%)、24年度は16%(同12%)と、引き続き全体より高い水準の維持を目指す。
(取材・文/齋藤秀平)

日立の全てが詰まっている
まずはLumada事業についておさらいしておく。名称は、照らす、解明する、輝かせるを意味する英語のIlluminateとDataを組み合わせた造語で、日立は「お客様のデータに光をあて、輝かせることで、新たな知見を引き出し、経営課題の解決や事業の成長に貢献していくという思いを込めている」としている。日立は、2008年のリーマン・ショックに端を発する世界経済の混乱による影響によって、08年度の最終損益で、当時の国内の製造業として過去最大となる7873億円の赤字を計上した。その後、抜本的な事業改革を進め、データとテクノロジーを活用して社会課題の解決を目指す社会イノベーション事業に注力する中、16年5月にLumada事業を開始した。
日立にとって、Lumada事業が重要な位置付けであることは、日立が発信する情報などを見るとよく分かる。ただ、日立による「お客様のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーの総称」との紹介では、具体的に何を指すのか分からない人もいるだろう。
これに対し、Lumada事業の戦略を担うデジタルエンジニアリングビジネスユニットStrategy & Planning Lumada Strategyの江口智也・担当部長は「日立が国内外で蓄積してきたAIツールやメソドロジー(方法論)、ユースケース、ソリューションを活用しながら進めているのがLumada事業だ」とし、「日立がこれまでに培ってきたものが全て詰まっていると考えてもらっていい」と付け加える。
日立が22年4月に発表した「2024中期経営計画」では、Lumada事業は今後の成長の中心と位置付けられた。以降、小島社長兼CEOが翌23年4月の22年度通期決算説明会で「Lumada事業が日立全体の成長をけん引するようになっている」と話すなど、日立の中でLumada事業の存在感は着実に高まっている。
実際にLumada事業がどのように推移しているのか見ていきたい。各年度の売上収益は、16年度が9000億円、17年度が1兆60億円、18年度が1兆1270億円、19年度が1兆370億円(定義見直し前の売上収益は1兆2210億円)、20年度が1兆1100億円、21年度が1兆3780億円(同1兆6090億円)、22年度が1兆9600億円と、おおむね右肩上がりを継続。23年度は2兆2800億円、24年度は2兆6500億円が目標だ。

全社の売上収益に対するLumada事業の割合は、21年度が21%、22年度が26%で、目標が達成できれば、23年度は29%、24年度は33%となる見通し。日立はその先についても見据えており、将来的に全社の売上収益の過半を占めるまで伸ばすことを狙っている。
また、調整後営業利益に一部の償却費を足し戻すなどしたAdjusted EBITAの率では、Lumada事業は21年度に12%、22年度に14%となり、いずれも日立全体の数字(21年度は9.9%、22年度は9.5%)を上回った。23年度は15%(日立全体の見込みは10.2%)、24年度は16%(同12%)と、引き続き全体より高い水準の維持を目指す。
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- 売って終わりではないビジネス
- 課題を起点とした関係に力点
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