──近年は「RISE with SAP」と「GROW with SAP」を中心に、クラウド移行の支援に注力してきた。2024年の感触を聞く。
非常に手応えを感じる年だった。RISEはどちらかと言えば大手を中心とした既存顧客が、オンプレミスからのクラウドシフトで採用するケースが多く、新規も増えている。GROWは中堅・中小規模の顧客はもちろん、RISEを採用する大手企業が、関連会社や海外子会社で導入する流れが広がっている。
鈴木洋史
代表取締役社長
グローバルの業績では24年1~9月のクラウドERPの収益が34%増となった。アジア・パシフィック・ジャパンは40%ほど伸び、中でも日本が非常に貢献している。世界的に見ても、日本のクラウド事業は伸長している。一方で、システムのコアな部分をクリーンに保ち、カスタマイズを必要最低限に抑えて活用する「クリーンコア」戦略を、もっと推進しなければならない。
──パートナー戦略の現状はどうか。
中堅・中小のお客様の新規契約に関しては、100%再販モデルというかたちで進めており、25年も変わらない。加えて、パートナー自身が案件創出から契約、プロジェクト導入までを一貫して取り組むビジネスが、23年と比べて2倍以上に増えている。SAPのマーケティングや営業の手法をパートナーに伝授し、推進する体制を整えており、そこが機能しているとも言える。この部分は25年も加速させたい。
SaaSスイートの展開に注力
──「2025年の崖」とも言われるように、レガシーシステムのクラウド移行への期待は高い。市場をどう取り込むか。
25年はクラウドERPで最先端のAI機能を活用する動きが、実業務の中で本格化する。ここを、ど真ん中に立って推進していく。さらに、われわれはさまざまなSaaSソリューションも提供しており、これを企業の変革を支える「スイート」として展開することを考えている。特にクリーンコア戦略の実践にはビジネスの手法そのものを変える必要があり、その推進のためのツールチェーンとして、プロセスマイニングの「Signavio」、アーキテクチャー管理の「LeanIX」、アダプションの「WalkMe」などを一緒に提案し、顧客の企業変革を支援する姿勢を前面に打ち出したい。
──AIに関する取り組みの展望は。
先述の通り、AIをビジネスで本格的に活用する年になる。クラウドERPやツールチェーンが整備されていく中で、きれいなデータがそろい、AIの真価が発揮できるようになる。AIデジタルアシスタントの「Joule」の日本語対応も25年早期に予定する。
AIは日本の競争力を復活させるドライバーになると感じている。最先端のテクノロジーを駆使しながら、仕事のやり方を抜本的に変えて生産性を大きく向上させ、日本の強みであるものづくりやサービスの品質が世界を席巻できるようお手伝いをしたい。