国内の企業向けページプリンタ市場は、年々減少の一途をたどっている。市場全体にプリンタが行き渡りつつあることが要因だ。こうした悪環境のなか、国内プリンタメーカーは販売を促進すべく知恵を絞っている。ここへきて有力な訴求材料になってきたのは、一般オフィス向けで環境(エコ)とコスト削減などを提案し、ユーザー企業に「付加価値」を与える戦略だ。また、新たなプリンタ用途の発掘にも力を入れる。その一環として、未成熟な特定業種・業務に狙いを定め、その特定業種を得意とするSIerとの連携を強めている。

「用途提案」で新規開拓も

オセロゲームのような争奪戦

 調査会社IDC Japanによると、2008年7~9月期の企業向けレーザープリンタ全体の出荷台数は、前年同期比8.9%の21万5000台になった。カラーレーザープリンタの出荷台数は、世界同時不況の影響を受け、同2.4%減となり6万4000台と3四半期ぶりに減少へ転じた。同社はその理由について「レーザープリンタのリプレイス需要が一巡した」と見解を示している。

 ただ、メーカー側の見方は若干異なっている。エプソン販売は「これまでプリンタ購入の半数は『新規』だったが、ここへきて『リプレイス』が増え、6割を占めるようになった」という。サーバーなど他のIT機器販売と似た傾向で、すでに行き渡っているユーザー企業先のプリンタに狙いを定め、まるで「オセロゲーム」のように、白駒を黒駒に変える熾烈な争奪戦が起こっているのだ。

 かつてプリンタメーカーは、印刷速度や印刷画質、後工程など技術開発競争を繰り広げてきた。「他社より高機能・高耐久・高容量」という言葉は、ユーザー企業にリプレースや新規購入を促す際に訴求しやすい材料だった。最近はプリンタの機能性が、どのメーカー製品をとっても似たり寄ったりになった感がある。このため各メーカーは、機能性に加えて、用途に応じた機能やサービスを売りにした販売促進策を打ち出し、一定の成果をあげてきた。

 ところが、昨秋の「リーマン・ショック」で日本経済全体の市況が急落したことから、作戦自体を修正。時代のニーズに即して「環境(エコ)」と「コスト削減」を実現するプリンタという触れ込みで、あの手この手を繰り広げているのだ。

 国内ページプリンタ市場で「オセロゲーム状態」が起きているのは、特に成熟している一般オフィスだ。各プリンタメーカーは、一般オフィス向けに「エコとコスト削減」を訴えたり、ドットインパクトプリンタの代替として帳票印刷用の高速プリンタを提案する一方で、まだプリンタが行き渡っていない医療や小売・流通などをターゲットに定めて拡販を図っている。

割高感の払拭に懸命

 「エコとコスト削減」の展開としてカシオ計算機は、2005年から環境配慮型の販売戦略を展開している。「回収協力トナー」という仕組みでは、対象プリンタに付属するトナーカートリッジを同社が貸与し、中身のトナーだけをユーザー企業が購入する。ユーザー企業側から見ると、「一般トナー」に比べ低価格で購入でき、消耗品全体のコスト削減ができる。「エコ」と「コスト削減」を同時に実現できる取り組みとして、受注の増加につながっている。

 この不況を“追い風”としているプリンタメーカーもある。理想科学工業は今年2月に発売した次世代高速カラープリンタ「ORPHIS(オルフィス)Xシリーズ」を大量に帳票印刷する業種向けに売り込んでいる。「インクジェットプリンタ+超高速印刷」であることで「コスト削減と高生産性を実現できる」とアピールし、医療業界などに向けたSIerとの販売を急いでいる。同Xシリーズは、大手プリンタメーカーのプリンタ市場でバッティングすることの少ない製品として販売管理系システムなどと一緒に導入を提案している。

 中小企業市場に強みをもつエプソン販売は昨年末から年始にかけて、主に一般オフィスを対象に「お得祭り!!」と称する期間限定の特価セールを実施した。このイベントは好評を博し、一部機種で在庫切れが発生するほどの成果をあげた。同社によると、「ユーザーは、プリンタに割高感を抱いていた。キャンペーンはこうした意識を払拭する効果があった」という。これを受け同社は5月11日以降、「標準価格」でなく一部製品を除き「オープンプライス」に表示を切り替えている。

 プリンタメーカー各社は、それぞれの持ち味を活かした拡販策を展開し、市場の活性化に力を注いでいるのだ。


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