2011年10月1日、個人・法人向けに無停電電源装置(UPS)を提供するエーピーシー・ジャパンは、社名を「シュナイダーエレクトリック」に変更した。ただし、多くのユーザーから厚い信頼を得てきた「APC」ブランドについては、今後も継続して名乗っていく。その「APC」を引っさげ、同社は「BCN AWARD 2012」UPS部門で旧エーピーシー・ジャパン時代を含め、4年連続4回目の最優秀賞を獲得した。波瀾万丈だった2011年の状況と今後の販売戦略について、営業本部の妻鹿行雄本部長に話を聞いた。

UPS部門

震災後の電力事情で需要は昨年比2ケタ増に

営業本部
営業統括本部長
妻鹿 行雄 氏
 UPSは、本体にバッテリを内蔵し、電源の異常時にITシステムを正常にシャットダウンするための電力を供給し、データを保護する装置のこと。急な停電などが発生した際に活躍するが、電源の確保を目的とする非常用電源とは性質が異なる。企業向けサーバーなどで導入するケースが多い装置だ。妻鹿本部長は、「2011年は東日本大震災の発生や計画停電の影響から、多くのユーザーがUPSに高い関心を示した一年だった」と振り返る。震災後の電力事情の変化によって、「コンシューマ市場で爆発的に需要が高まった」という。妻鹿本部長は、「2011年のUPS市場は、当初、昨年比で7~8%増といわれていた。しかし、実際には2ケタ増の伸びをみせている」と説明する。

 コンシューマ向け製品では、とくに小型モデルが伸びている。同社がエントリーモデルと位置づける「SurgeArrest 雷ガードタップ+電源バックアップ」は、低価格でシンプルな機能が好評で、ラインアップのなかで最も販売台数を伸ばした。このほか、上位モデルの「APC ES 550」や「APC RS 550」もトップシェアのけん引役となった。

 6月には、拡張バッテリに対応し、長時間のバックアップができる「APC Smart-UPS XL 500」および「APC RS XL 500」を発売した。震災直後から開発を急ぎ、電力需要が高まる夏前のリリースに間に合わせた。液晶テレビやブルーレイディスク(BD)レコーダーなど、幅広いデジタル機器に利用できるのが特徴で、今後の伸びが期待できるという。

 製品だけではない。同社がUPS市場で強いのは、1万社を超える販売パートナーと連携しているからだ。パートナーは、IT系ベンダーや量販店以外にも、ECサイトや設備メーカー、FA(ファクトリーオートメーション)関連メーカーなど、多岐にわたる。これら多業種の販売パートナーとの連携によって、幅広い市場開拓ができるわけだ。妻鹿本部長は、「旧エーピーシー・ジャパンから続く1万社を超えるパートナーとのビジネスは、当社の最大の強みであり、誇りだと感じている」と熱く語る。

(左から)APC Smart-UPS XL 500、APC RS 550、SurgeArrest 雷ガードタップ+電源バックアップ

コンシューマ市場に注力 次世代エネルギー対応も

 シュナイダーエレクトリックは、2011年10月に営業部門を改編し、販売パートナーのビジネスを最大限サポートする体制を整えた。それまで、データセンター(DC)事業と中小型UPSに分かれていた営業部門を集約して、販売パートナーの窓口を一本化した。「営業部門を統一することで、パートナーとの情報共有をよりスムーズに行うことができる」と、妻鹿本部長の期待は大きい。

 2012年のUPS市場について、妻鹿本部長は「およそ7%増になるだろう」と読みながら、「さらに今後5年間、市場は拡大傾向を続けていく」と弾く。そして拡大する市場で、今後はコンシューマ市場に力を入れて展開する。

 その背景には、デジタル機器で記録したデータを保護するために、UPSを購入するユーザーが増えていることが挙げられる。妻鹿本部長は、「コンシューマ市場では『もしもの災害・停電に備えて、UPSで電源を保護しよう』というメッセージを中心に訴求していく」と説明する。具体的には、広告宣伝やマーケティングを強化するほか、量販店への巡回活動を強化。専任の営業部隊を設置し、量販店でのデモを積極的に実施するという。

 さらに、新たな事業展開として、次世代エネルギーの需要に応えるために、太陽光など再生可能エネルギーに対応したUPSを訴求し、市場拡大を狙う。また、長時間給電を実現するために、リチウム電池を採用したバッテリの開発を検討しているところだ。シュナイダーエレクトリックのUPS市場での優位性は、不動のものになりつつある。


UPS部門
メーカー別販売数量シェア
(2011年1~12月)
Valuation

 東日本大震災の影響で、2011年はUPSの認知と需要が大きくはね上がった。電力事情の悪化もあって大容量製品が増え、平均単価が上昇。夏以降、前年同月比で販売台数が20%前後の増加に対し、販売金額は40%超の基調で伸びている。利用シーンはデジタル家電にも広がり、市場そのものも拡大している。
(BCNアナリスト・道越一郎)