Special Issue

エーピーシー・ジャパン UPS事業拡大を加速

2011/02/03 19:55

週刊BCN 2011年01月31日vol.1368掲載

 米国に本社を置くAPCの日本法人、エーピーシー・ジャパン(APC、シリル・ブリッソン社長)は、2011年のBCN AWARDのUPS(無停電電源装置)部門でトップシェアを獲得し、最優秀賞に輝いた。法人向け展開に強い同社だが、市場の回復とコンシューマ需要の高まりなどを受け、ECサイトや家電量販店の販売チャネルを強化しながら、個人向け事業の売上比率の向上に取り組んでいる。

UPS部門

キーワードは新しい事業領域の開拓

高性能IT機器やデジタル家電の普及で
UPSの個人需要が拡大


妻鹿行雄 UPS事業部
チャネル営業本部 本部長
 APCによれば、2010年のUPS市場は前年から約10%の伸びをみせ、いわゆるゲリラ豪雨の影響で販売台数が急増した08年とほぼ同じレベルまで戻ってきたという。UPS事業部チャネル営業本部の妻鹿行雄本部長は、「なかでも、コンパクトタイプの販売が順調だった」と最近の傾向を語る。10年の小型・中容量機種の伸び率はおよそ20%と、市場全体の伸び率の2倍程度に及んだという。

 APCは、以前から家庭・SOHO向け小型機種のラインアップを充実させており、10年は製品展開と市場のニーズが合致したことが、売り上げの拡大につながった。なかでも、コンパクトなボディで実勢価格5000円前後の低価格モデル「SurgeArrest 雷ガードタップ+電源バックアップ」が売れ筋となった。そのほか「APC ES 550」や「APC RS 550」も売り上げに貢献した。

 これまで、「SurgeArrest 雷ガードタップ+電源バックアップ」をはじめとする小型機種は、学校や自治体など公共案件の割合が大きかった。しかし最近は、PCやテレビを中心に高性能なIT機器やデジタル家電が普及し、落雷や停電による電源障害から機器そのものやデータを保護する意識が高まりつつある。ターゲットは、コンシューマーまで広がっているのだ。妻鹿本部長は、「地デジ化によるテレビの買い替えや、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電も高性能化が進み、個人市場のポテンシャルが非常に大きくなっている。11年は、さらにUPSの認知度向上に取り組み、コンシューマーマーケットの開拓を急ぐ」と意欲を示す。

 ECサイトでの販売に注力すると同時に、家電量販店での販売にも力を入れていくという販売チャネルの強化施策は、こうしたコンシューマー向け活動の一環だ。家電量販店との結びつきを強化し、自社製品の売り場面積の拡大に加え、テレビなどの周辺機器売り場でUPSを販売することを目指している。妻鹿本部長は「店頭販売はまだまだ可能性があるので、拡大に向けて努力する」と注力を約束する。

(左から)SurgeArrest 雷ガードタップ+ 電源バックアップ、APC RS 550、APC ES 550

ウェブや紙の販促ツールで
パートナーを支援


UPS部門
メーカー別販売数量シェア
(2010年1~12月)
Valuation

 UPS(無停電電源装置)は、サーバー向けの製品というイメージが強い。しかし、08年7月~8月の天候不順によって一般家庭にもその存在が認知され、市場は一気に拡大した。09年こそ前年比で台数、金額とも2ケタ減まで縮小したが、10年は08年とほぼ同じ水準まで戻った。デジタル家電の普及に伴い、パソコンやレコーダー、ゲーム機のデータ保護という目的をコンシューマーに訴求することで、市場は拡大する可能性がある。
(BCNアナリスト・森 英二)
 APCの2011年は、コンシューマー市場開拓だけではない。事業計画では、UPS販売の柱となる領域として、コンシューマー向けの「デジタル家電」に加え、工場の生産工程を自動化する「FA(ファクトリー・オートメーション)」「ネットワーク回線」「監視カメラ」「ブレードサーバー・仮想OS」の五つを挙げ、それぞれの領域でソリューションの展開に注力していく。

 展開にあたって重視するのは、営業・マーケティングやパートナー戦略の強化だ。例えば、パートナー戦略強化に関しては、10年3月から、パートナー向けウェブサイトのコンテンツの充実に取り組んでいる。最適なUPSを簡単に選定できるUPS構成ツールを提供するなど、「パートナーが自社製品をより販売しやすくすることによって、登録してくれるパートナーの数を増やしていく」(妻鹿本部長)のが狙いだ。

 さらに10年12月には、各領域のソリューションを紹介するパートナー向け販売支援ツール(冊子)を提供。ウェブや紙の販促ツールによる支援で、「パートナーとの関係強化を図ると同時に、UPS市場そのものの活性化を狙う」(妻鹿本部長)という。

 もちろん、既存の事業領域でも、企業のIT投資の回復を足がかりに、事業の拡大を狙う。APCでは、11年は小型・中型のサーバールームをもつ企業や公共施設で、ローエンドサーバーからハイエンドサーバーへ買い替えが進み、サーバーを保護するためにUPSの購入が増えるとみている。企業や公共施設を積極的に狙っていく方針だ。

 妻鹿本部長は、11年のUPS市場を「およそ16%の伸びをみせる」と読み、コンシューマ市場をはじめとした事業領域の拡大で、APCの成長率を市場の伸びを超えるレベルまで引き上げることを目標に掲げる。
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外部リンク

エーピーシー・ジャパン=http://www.apc.com/