2011年11月、独自開発のクラウド基盤「cybozu.com」を発表して事業の軸足をクラウドに置く姿勢を明確に打ち出したサイボウズ。cybozu.comは大きく発展し、今やグループの売り上げの半分を占めるまでになった。さらに、グローバルでの事業展開も進み、中国やアジア地域で着実に顧客を獲得している。米国展開も順調に推移し、存在感が高まっている。17年には区切りとなる設立20周年を迎えるサイボウズ。「グループウェアは、まだ、本格的な普及期になっていない。それが働き方改革が遅れている理由でもあることを世の中に訴求し、問題提起したい」と語る青野慶久社長。栗山圭太営業本部長とともに今後の抱負を語ってもらった。

 「cybozu.comの導入企業数は、1万7000社を超えた。この数年の増加ペースは、パッケージ版が最も売れていた頃と同じレベル」と青野社長はいう。とくに好調なのがkintoneだ。SIへの教育に継続して取り組んできた結果、パートナーが作成する機能拡張のプラグインのレベルが一気に上がってきているという。
 

栗山圭太
執行役員営業本部長

 「パートナー数も増えたが、とくにローカル市場に根差した有力なパートナーが増えたことが大きく、地方でのビジネス拡大に寄与している。これは(パッケージの)グループウェア時代にはなかったこと。彼らは技術力があり、JavaScriptが使いこなせる。kintoneをもっていくとすぐに使い始めて、たちまちkintoneを自分たちが使い易いようにカスタマイズしてしまう」と栗山本部長は語る。

 サイボウズのパートナーは3年前までは、ほぼ首都圏に限られていたという。それが16年には国内全体へと大きく拡大した。17年は数の拡大から質への重視に軸足を置いたパートナー戦略を進める方針だ。

海外事業は順調に拡大 米国でブランドを確立する

 もう一つのポイントが海外だ。

 サイボウズのグローバルビジネスは、中国をはじめとするアジア地域と米国に加えて、16年にはオーストラリアにも進出している。なかでも、中国が順調に伸びている。中国の顧客は、すでに約700社にまで拡大。また、ASEANではシンガポール、ベトナム、タイ、インドネシア、フィリピン、ミャンマーの6か国でkintoneを販売しており、顧客数は100社を超えている。現在も、ASEAN全体で月に8社程度のペースで増えている。顧客の多くは現地の日系企業が占めているものの、ローカル企業での採用も着実に増加している。アジア地域では、15年11月にアジアパートナープログラムを制定し、1国1社の体制を維持してパートナーとの関係を深掘りしていることも販売増に寄与している。

 一方、北米市場への注力も本格化させる。すでに70社程度の顧客を獲得し、なかには誰もが知っているスマートデバイスメーカーも含まれている。
 

青野慶久
代表取締役社長

 「17年はグローバルビジネスにおける重要な年になる。とくに、北米はITのフラッグシップ国で、最も競争が厳しい市場。そのなかで支持されれば、グローバル市場全体へのインパクトが大きい。それだけに売り上げよりもブランドの確立を最優先する。米国の体制は現在15人だが、17年はこれを倍増させる。日本のソフトウェア企業で、これだけの体制を敷く企業はほとんどないはず」と青野社長は本気度を示す。

 米国ではPaaS、とくにAPaaS(Application PaaS)の市場が拡大している。このタイミングでkintoneが参入できたことは大きい。販売については、これまでの直販を維持しつつ、エコシステムを育てていく。

パートナーと組んで働き方改革を推進

 青野社長は、米国と比較して日本はクラウド化のペースが非常に遅いという。その背景にあるのが働き方の差だ。米国やオーストラリアは在宅勤務もあたりまえで、定時以降に残る人はほぼいない。業務を行うには、クラウドを活用した情報共有が必須だ。「だからこそ、日本は働き方改革に手を付けなければならない。それはIT業界にとってもプラス」というのだ。

 日本でも、「一億総活躍社会」の実現に向けて、働き方改革が声高に叫ばれるようになってきた。だが、青野社長は日本のIT企業には、肝心のノウハウがないという。

 「われわれには10年以上に渡って蓄積してきた、業務改革、システム化、クラウド活用のノウハウがある。私自身、国のプロジェクトにも参加して、ことあるごとに提言もしてきた。そのノウハウをフルに生かし、パートナーの方々に普及させていく。働き方改革への関心が高まっている今、サイボウズと組めばおいしいですよ、と訴えたい」と力を込める。

 栗山本部長も、「今、大企業の部門案件が一番ホット」だという。実は大企業の部門は、中小企業よりもシステム化が遅れている。実態はほとんどが紙ベースで、せいぜいExcel止まり。これは業務改革のためシステム化を情シスに求めても、より大きなプロジェクトが優先され、常に後回しになっていたためだ。

 青野社長は、「このようにシステム化が遅れているから、いつまで経っても残業がなくならない」と指摘する。

 「その課題がようやくクローズアップされるようになってきた。課題はセキュリティだったが、kintoneでそれもクリアになった。17年は部門案件が倍増するだろう。まずは部分最適から入り、全体最適まで取り組んでいきたい」と栗山本部長は語る。大企業のグループウェア導入ではカスタマイズがキーワードになるが、サイボウズでは、大企業向けグループウェア「Garoon」を17年からカスタマイズを可能にする。「Garoonはパッケージソフトから、カスタマイズのためのコンポーネントになる」(栗山本部長)という。

 働き方改革は、サイボウズ最大のイベント「Cybozu Days 2016 東京」のテーマでもあった。「cybozu.com カンファレンス」から名称を変更、育児や介護を抱える方など、さまざまな背景をもった人たちが「共に生きる」チームになるためのヒントを紹介した。

 「会場を幕張メッセという遠方に移したにもかかわらず、2日間で約3000人の方に来場いただいた。大阪会場も加えると前年を超えるほどの盛況となった。とくに、kintone hive(kintoneユーザーの情報交換の場)やGaroonチームによる『俺たちのポータル』のセッションが好評で、カスタマイズ性が評価された」と青野社長は手応えを感じている。

 順調に拡大を続けるcybozu.comだが、サイボウスでは他社のクラウド型グループウェアをどのように捉えているのだろうか。

 その問いに青野社長は、「他社とは競争というよりも共闘だと考えている。クラウドは価格帯も機能もさまざまなサービスが存在していても、サーバー不要のため、ユーザーが試しに使ってみることができる。それだけにユーザーが自分の好みでサービスの最適な使い分けができるよう、環境を整えるのがパートナーの方々、つまりクラウドインテグレータの役割」としている。
 

「Connect」を継続してエコシステムをより強固に

 17年の基本方針は、16年に打ち出した「Ready for Next Jump ~ Connect」の「Connect」を継続して取り組むことだ。パートナーや顧客とのつながり、パートナー同士、顧客同士のつながりを広げていくことを、さらに進めてエコシステムをより強固なものにしていくことを目指す。

 「個別には16年に取り組んだkintoneの業種戦略で蓄積した事例とノウハウがかなりあるので、17年はそれをパートナー各社に展開する組織を立ち上げる」と栗山本部長。

 具体例の一つに、小売業における本部からの通達業務があり、専用パッケージとの競合に勝利した。変更に対するkintoneの高い柔軟性と、目的外利用も可能な点が評価されたためで、多店舗展開しているさまざまなチェーン店に展開できるという。

 また、17年はサイボウズの設立20周年という節目の年にあたる。

 「私の考えでは、グループウェアは本格的な普及期になっていないと考えている。それが働き方改革が遅れている理由でもあることを世の中に訴求し、問題提起したい。そのためのイベントも企画しているので、期待してほしい」と青野社長は力強く宣言する。