次世代ものづくりソリューション「Meister シリーズ」を2016年4月にリリースした東芝。ものづくりで培ってきた長年の経験やノウハウ、さまざまな要素技術をソリューションに盛り込み、日系企業をはじめとするグローバルな製造業ユーザーへの展開を強化していこうとしている。東芝インダストリアルICTソリューション社の製造・産業・社会インフラソリューション事業部の 岡田俊輔事業部長と製造商品企画部の甲斐武博部長に話を聞いた。

日本の「匠」の技を海外へ グローバル製造業の課題を解決

 次世代ものづくりソリューション「Meister シリーズ」には現在、以下のソリューションがラインアップされている。

(1)製造現場から情報を収集するためのIoTソリューション「Meister IoT」
(2)情報を蓄積するプラットフォーム「Meister DigitalTwin」
(3)情報を可視化する「Meister Visualizer」
(4)ビッグデータ分析技術で情報活用を支援する「Meister Analysys」
(5)遠隔監視・モニタリングに対応した「Meister Visualizer Suite for O&M」
 
 

甲斐武博
製造・産業・社会インフラ
ソリューション事業部
製造商品企画部
部長

 これらのソリューションには、世界中の拠点で半導体からプラント設備まで多種多様な製品を製造するグローバル製造業としての東芝の知見に加え、IoTやビッグデータなどさまざまな要素技術に関する実績やノウハウが反映されているという。「製造現場で、20~30年にわたって使い続けられている装置や設備のIoTデータを収集することもできる。多彩なメーカーの機器からのデータ収集や、リアルタイム性の高いデータ活用など、現場ならではの要件もお客様から寄せられており、それぞれに適した情報蓄積・可視化・分析手段をソリューション化している」と甲斐部長は説明する。

 Meisterシリーズを活用すると、製造業にまつわるさまざまな課題を解決することが可能だ。例えばグローバル製造業では、マザープラントで生産体制を確立させた後、他地域の工場に生産を展開・移管する企業も多いが、展開先の歩留まりが思うように伸びないケースがある。「日本の工場には、まだ『匠』のような人材がおり、その技が生産を支えている側面がある。そういった『匠』のいない海外工場では、日本と同じ設備や装置を導入して、まったく同じ動作パラメータを設定してもうまくいくとは限らず、そのギャップに悩む製造業は多い」と甲斐部長は話す。

 歩留まりを下げる不良品の発生要因はさまざまだ。これに対し原材料や部材の状態、工場内の環境条件などまで加味してパラメータを調整するなど、多彩な手法を駆使して不良品を回避できるのが、「匠」の技である。Meisterシリーズのソリューションにより、そういった部分にまで踏み込んだ情報の分析・活用が可能になるのである。

世界の製造業が集中するアジアセミナーに関心が集まる

岡田俊輔
製造・産業・社会インフラ
ソリューション事業部
事業部長

 東芝はIoTに関連する、さまざまな団体やプロジェクトにも参加しており、MeisterシリーズはIoTや情報活用プラットフォームとして実証にも用いられている。岡田事業部長は、「ものづくり改革は、自社グループ内でもさまざまな取り組みを進めてきた。ユーザー企業側との共創の取り組みも積極的に行っている」と語る。

 こうした製造業の改革の取り組みは、世界各国で進んでいる。「インダストリー4.0」だけではなく、世界の製造業が集中するアジア各国にも起こっており、例えば中国では「中国製造2025」、タイでは「Thailand4.0」として、同じような取り組みを進めている。このような潮流を捉え、東芝はアジアでセミナーなどの活動を開始しており、「16年12月には上海で『中国製造2025の動向・展望と東芝の次世代ものづくりセミナー』を開催。中国製造2025をテーマに、当社をはじめとする日本企業の次世代ものづくりへの取り組みなどを紹介した。関心は非常に高く、40数社が参加、すでに具体的な相談や引き合いもいただいている。3月にはバンコクで、Thailand4.0をテーマとした同様のセミナーを開催した。グローバルに展開する日系企業はもちろん、他のグローバル企業や現地企業の皆様にも、Meisterシリーズをはじめとするソリューションを通じて製造業の改革を進めていただきたい」と岡田事業部長は話す。

「モノ×ICT×人」で目指す東芝の「人を想うIoT」

 次世代の製造業について東芝は、IoTはもちろんのこと、AIを活用した一歩先の将来像を描いている。

 「かつてのM2M(Machine to Machine)に続く第2ステージ、モノ×ICTによるスマート化が進んでいるのがIoTの現状。当社では、ICTは人や社会のために生かすべきものという考えから、第3ステージとして『モノ×ICT×人』をイメージし、技術開発に取り組んでいる。すでに提供中の、東芝コミュニケーションAI『RECAIUS(リカイアス)』などがその一例だ。人の声や表情などをICTで理解し、モノがそれに応じて動く、といった世界の実現につながる」と甲斐部長は説明する。

 製造業のIoT活用は、現状では主に「ものづくり」の領域にフォーカスされているが、東芝では今後、ユーザーに新たな体験を提供する「ものづかい」の領域にも広げたソリューションの展開を計画しているという。『次世代ものづくり』の実現に向けた東芝のMeisterシリーズによるものづくり変革の取り組みに、ますます期待が高まる。