AIがもたらす新たな顧客体験をセミナーとソリューション展示で紹介

 日本マイクロソフトは6月22日、東京・千代田区の紀尾井カンファレンスで「AI×広告宣伝フォーラム ―人工知能がもたらす新たな顧客体験―」を開催、博報堂などが協力した。フォーラムでは、AIの最新技術を活用して消費者にインタラクティブかつパーソナライズされた広告体験を提供、次の購買行動へと誘う宣伝・広告手法についてセミナーで紹介するとともに、AIを活用した広告宣伝ソリューションの体験・展示も行われ、多くの参加者の関心を集めていた。

コグニティブサービスで
変わるユーザー体験

 セッションに登壇した日本マイクロソフトの西脇資哲・エバンジェリスト業務執行役員は、「コグニティブサービスで変わるユーザー体験」と題して講演した。
 
201708031751_6.jpg

日本マイクロソフト
西脇資哲
エバンジェリスト
業務執行役員

 西脇エバンジェリストは冒頭、「AIにおけるコグニティブ(知覚)とは、センサやカメラ性能の話ではない。その後ろにある大量の知能を結びつけるものだ」と強調した。コグニティブサービスによって、「人間と何ら変わりのない知恵、それ以上のものを手に入れることができた。次は、引き出した知恵を使い、セールスや広告、売り場のレイアウトにどのように活用していくかだ。それによって、ユーザー体験が大きく変わってくる」とした。

  次いで、人工知能の進化と深層学習の登場について触れ、「人工知能は機械学習、深層学習によって自ら学習できるようになった。例えば、ネコの画像を複数覚えさせれば、それらの画像から、(イヌなどと違う)ネコと判断すべき特徴(特徴量)を自ら把握できるようになった」とした。さらに西脇エバンジェリストは、その具体例として、「マイクロソフトのコグニティブサービスを使い、プロが美味しい/美味しくないと判断したキュウリとナスの断面画像を100枚用意して覚えさせた。そして、キュウリやナスの断面をカメラで撮影して判断させたところ、瞬時に美味しい/美味しくないを正確に判断した」と説明した。

マイクロソフトのAIは世界最高レベル

 また、西脇エバンジェリストは、「皆さんの企業、業界が積み重ねてきた知恵やノウハウを覚えさせることもできる。AI技術では、各社がしのぎを削っているが、マイクロソフトは2015年に深層学習技術でトップを獲得、16年に音声認識技術でも世界記録(5.9%)を達成した」とアピール。人は会話で8%くらいのミスをするため、それを超える認識率なら人を超えたことになる。AIは目や耳の代わりとなり、膨大な知識をもって、そこから検索することもできるようになったという。

 実例として、人の表情やアクションを読み取る例や、マクドナルドのドライブスルーで細かなオーダーをリアルタイム解析してオーダーシートを作成する例を紹介した。これによりコスト削減だけでなく、個別にサイネージを変更したり、クーポンを提供したりといった対応も可能になる。

 自動翻訳も非常に高度化。ほぼリアルタイムに会話を理解して、もとの日本語を英語に翻訳するだけでなく、同時に数十か国語にも翻訳して配信することもできるようになっている。

 また、東京サマーランドでは、多くの来場者の属性と満足度を把握することで、精度の高いマーケティングや効率的なオペレーションに役立てている。

 「AIをさらに使い易くするのがコグニティブ。その目、耳、言葉、知識、膨大なインターネット上の情報を使って、私たちのユーザー体験が大きく変わっていく。それをご理解いただきたい」と締めくくった。

AIが広告を進化させる

 続くセッションでは、AIがどのように広告の未来を進化させていくかをテーマにパネルディスカッションを行った。

 西脇エバンジェリストのほか、博報堂の須田和博・ビジネスインキュベーション局スダラボエグゼクティブ・クリエイティブディレクター、日本マイクロソフトの上代晃久・コンシューマー&パートナーグループマーケティング統括本部デジタルマーケティングリードの3人が参加。司会を月刊「宣伝会議」の谷口優編集長が務めた。
 
201708031751_7.jpg

博報堂
須田和博
ビジネスインキュベーション局
スダラボ エグゼクティブ・
クリエイティブディレクター

 最初の議題は広告とAIの関係。企業は膨大な広告予算を投じており、その効果的な活用は長年のテーマ。昔からITは広告の効果測定には使われてきたが、それは報告や上層部を納得させるためのものになっている。しかし、本来はどのように広告して、いかにユーザーを喜ばせるユーザー体験やカスタマジャーニーを可視化するかに使うべきで、そこでAIやITの活用機会はさらに増えるという。

 「従来の広告はキャッチーなコピーとイメージで、ユーザーをフックしようとするがそれはAIではない。また、キャッチーでなくともフックのタイミングは多い」(西脇エバンジェリスト)、「本来は、もっとユーザーに寄り添うものなのに、クリック数というわかりやすいものが優先されている」(上代デジタルマーケティングリード)、「今はクリックしか評価指標がないので、キャッチに膨大なコストと時間を費やしている」(須田エグゼクティブ・クリエイティブディレクター)との指摘が相次いだ。
 アイデアでしかなかったことが、AIの進化で現実化している。AIをどう使えば、いいユーザー体験につながるかをプランニングに生かすべきフェーズに入っているとした。

 感情の可視化も進んでいる。西脇エバンジェリストは、「今年、マイクが家庭に入ってくる年であり、次にカメラ(映像)となり、会話や家族構成などの生活もキャプチャされるようになる。そして不足しているものが自動でオーダーされるような時代になる」という。
 
201708031751_8.jpg

日本マイクロソフト
上代晃久
コンシューマー&パートナーグループ
マーケティング統括本部
デジタルマーケティングリード

 広告にとってセグメントは重要。それもAIでもっと細分化が可能になり、セグメントの分類自体も変わる。そうしたアプローチの変化は、プランニングも変え、それが産業全体も変化させることになるとした。

 最後に参加者に向け、「クライアントに先かげて、AIによる広告の可能性をまず自ら試してほしい」(須田エグゼクティブ・クリエイティブディレクター)、「適切な提案が実現できれば、プライバシーのハードルは下る」(西脇エバンジェリスト)、「マーケティングやブランディングといった感情に訴える部分では効果指標を見直すべき。長い目で効果をみてほしい」(上代デジタルマーケティングリード)とアドバイスした。

AIを活用したセールス支援を展示

 フォーラムの展示会場では、参加各社がAIを活用した広告宣伝ソリューションを展示していた。そのなかから、博報堂の「AIを活用したセールス支援ソリューション」を紹介する。

 同ソリューションは、最大の顧客接点となる販売現場の対話をデータ化して、最適なセールスシナリオを分析・予測して提供する。対話記録デバイスと「未来予測関係性AIエンジン」で構成しており、同エンジンは京都大学と神戸デジタル・ラボが開発した関係性技術を採用している。

 AIエンジンは、対話記録デバイスを通じて販売現場の対話を記録。そこで登録したデータ内のワード間の関係を共感性、意外性、特異性、話題性といった指標から分析。その結果をレポートなどの形で提供する。関係性AIエンジンを用いることで、膨大な情報のなかから人間では難しい“気づき”を導き出すことが可能になる。
 
201708031751_9.jpg
 
201708031751_10.jpg

博報堂
尾崎徳行
アクティベーション企画局
アクティベーションクリエイティブ
一部 部長
アクティベーションディレクター

 「ユーザーは分析結果をもとに、成約/非成約者別にキーワードを統計化したり、顧客カルテの作成、何が顧客の関心を惹いたのかの数値化、可視化ができる。さらに、リアルタイム分析により、現場のタブレット端末に分析結果を表示して、販売担当者の顧客への提案や対話をサポートすることも可能だ。これにより優秀な販売員のノウハウを、他の販売員も容易に共有できるようになる」と話すのは、博報堂の尾崎徳行・アクティベーション企画局アクティベーションクリエイティブ一部部長アクティベーションディレクターだ。

 チャットボットUIの提供も検討しているという。これは販売員の対話シナリオの一部をボット化し、人的リソースとして活用するものだ。あらかじめ構築した対話シナリオでボットがテキストチャットで対応するが、対話を重ねることでシナリオは逐次、改善されていく。

 「AIを活用したセールス支援ソリューションは、主に自動車販売店や住宅展示場といった長く商談する場での活用を想定している。現状はプロトタイプだが、2~3年をめどに実用化したい」と尾崎ディレクターは抱負を語る。