Special Issue

シュナイダーエレクトリック HCIに加え、IoTで需要が拡大する サーバー以外の市場を開拓

2018/02/01 09:00

週刊BCN 2018年01月29日vol.1712掲載

UPS買い替えプログラムもリニューアル

 「BCN AWARD 2018」UPS部門で52%とメーカー別販売台数で圧倒的なシェアを獲得、3年連続9回目の受賞となったシュナイダーエレクトリック。UPSの世界トップベンダーというブランドと、あらゆる顧客ニーズに応える豊富な製品ラインアップで確固たる地位を築いている。今、同社が注力するのがHCI向けと監視カメラや「エッジコンピューティング」などのIoT分野だ。同社の戦略と今後の取り組みを今野良昭・IT Business事業開発本部プロダクトマネージャーに聞いた。

HCI向けに
検証済みの製品を提供

今野良昭
IT Business 事業開発本部
プロダクトマネージャー

 「2016年11月にUPSのラインアップを一新し、多くの新製品をリリースしてソリューションを拡大した。UPSだけでなくラックやPDU(電源タップ)、ソフトウェアも含めて電源保護ソリューションなども提供し、パートナーと合同でさまざまなプロモーション活動を進めてきたことが、今回の連続受賞という成果につながったと考えている」と今野マネージャーは手ごたえを語る。

 シュナイダーエレクトリックの強みは、APCブランドとしてクライアントPCや小規模ネットワーク向けから、サーバールームやデータセンター向けまで、システム環境に合わせたUPS製品のフルラインアップを提供していることにある。同社が今、注目する市場の一つがHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)だ。

 昨年4月には、電源管理ソフトウェア「APC PowerChute Network Shutdown v4.2」がニュータニックスの「Nutanix Ready」認証を受けたと発表。同認証に合わせてHCIのリファレンスアーキテクチャとして提供する日本独自の取り組みも開始した。

 「HCIの導入が拡大して基幹系システムへの適応も進むなか、もし停電などの電力異常が発生した際には大切なデータを失うといったリスクも大きくなる。そうした懸念は実際にユーザーからも聞いていたが、認証によって安心を提供できる」と今野マネージャーは説明する。

 自社内にHCIを設置している場合、UPSを導入して停電や落雷、あるいは人のオペレーションミスなどによってケーブルが抜かれるような事態にも備える必要がある。

 認証を受けたPowerChuteは、仮想マシンとしてNutanix上で稼働し、UPSから電源異常の通知を受けるとNutanixの管理コンソールが提供するAPI経由で自動的にシャットダウン処理を行う。これにより、Nutanix上のデータやアプリケーションを安全に保護することができる。

 「今回、製品間の動作検証を実施しニュータニックスから認証を得て、具体的な構成例、設定方法を公開している。販売パートナーやSIerの方々は事前検証を実施する必要がないため、安心かつスムーズにユーザーへの導入ができる。こうしたHCIベンダーとのアライアンスは今後も拡大していく方針だ」という。
 

シュナイダーエレクトリックが提供する
APCブランドのUPS

UPSの用途が増大
続々と導入が相次ぐ

 現在、ITシステムのクラウド環境への移行が急速に進んでいる。その分、オンプレミス市場の需要減少は免れないが、シュナイダーエレクトリックではすでに従来のITシステムにとどまらず、IoTをはじめサーバー以外の市場に向けたUPSの市場開拓を進めている。

 「監視カメラやWi-Fiアクセスポイント、ネットワークスイッチなど、24時間無停止でクリティカル性が求められる分野で、UPSの需要が高まっている。当社の製品はそうしたニーズに対応する機能を備えている」と今野マネージャーは話す。

 例えば、防災対策などに使用される監視カメラは、山中や河川の近く、さらに人が容易に近づけない場所などに設置されることが多い。当然、無人の場所であるため、カメラにトラブルがあった場合の対応が問題になる。そうしたケースには、ネットワークを通じて遠隔地からUPSのリモート監視ができる機能を備えたモデルを用意する。監視装置に異常があるとユーザーに通知し、ネットワーク経由で再起動することもできるため、現場に行かずに復旧することができる。

 監視カメラやアクセスポイントは、屋内であっても天井などに設置されることが多い。重量のあるUPS製品では設置自体が問題になるが、同社ではリチウムイオンバッテリ搭載の小型軽量モデルを用意する。従来の鉛バッテリの寿命が3~5年であるのに対して、6~8年の稼働が可能で交換期間を半分にできるなど、メンテナンスでメリットがある。

 IoT環境においては、膨大なセンサデータをデータセンターに送信する前に各拠点側で処理する「エッジコンピューティング」が欠かせない。工場やブランチオフィスといったエッジ側には十分な電源環境があるわけではないため、UPSが必要とされるケースがますます増えると考えられる。

 「ATMや無人店舗のセルフレジなど、今後も24時間無停止でという用途はさまざまな分野で増加していくだろう。そうした新しい分野をパートナーの方々とともに積極的に開拓していきたい」と今野マネージャーは力を込める。

 インダストリー事業部など、他組織との連携も進めて、工場向けのPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)やタッチパネルなどの製品にAPCをバンドルし、IIoT(インダストリアルIoT)ソリューションとして提供することも検討している。

 また同社では、昨年6月にUPS買い替えプログラム「Trade-UPS」をリニューアルした。対象のAPC製品を購入すると、他社製品も含めて今まで使用していたUPSを送料無料で引き取る。

 「台数制限を一部撤廃し、容量を緩和したので、サーバーの統合・集約・仮想化などシステムの更新の際には、ぜひ、検討してほしい」とアピールする。
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外部リンク

シュナイダーエレクトリック=https://www.schneider-electric.co.jp/

APC Japan=http://www.apc.com/jp/