中国における人件費の高騰、米中貿易摩擦などから、「チャイナ+1」の有力候補として注目を浴びるベトナム。既に約1700社もの日系企業が進出しているが、現在でも中小企業を中心に右肩上がりの状態が続く。リコーベトナム(2011年設立)は、日系企業の需要を取り込み、日本語によるきめ細かな対応を強みに成長してきた。今後は、コピー機だけでなく、各種IT機器の導入、構築から保守までをワンストップで提供することにも注力していく。

日本人と現地スタッフとの
ブリッジ役を果たす

 18年におけるベトナムの実質GDP成長率は7.1%と、過去10年間で最も高い伸びを達成した。19年の実質GDP成長率目標も6.6~6.8%に設定するなど、今後も引き続き高い伸びが見込まれる(いずれもベトナム統計総局の発表)。中でも、製造業は13.0%の伸びを示すなど、経済全体の成長に大きく貢献している。こうした成長を背景に海外からの投資も盛んで、18年に実行された海外直接投資(FDI)は前年比9.1%増の191億ドル(約2兆1000億円)に達し、6年連続で過去最高を更新。国別では、日本が2年連続のトップとなった。

 実際、ベトナムには商工会議所に登録しているだけでも約1700社もの日系企業が進出している。内訳は、首都のハノイで約700社、ホーチミンに約1000社となる。

 「日本からの進出企業は、チャイナ+1などの動きもあって、中小企業を中心に今も右肩上がりの状態が続いている。ベトナム政府が製造業を積極的に誘致していることが背景にあってハノイは製造業を中心としているが、ホーチミンは製造業のほか、サービス業、縫製、製薬など幅広く、規模も大企業から中小企業まで多彩だ。なお、大手は双方に拠点を置く企業も多い」とリコーベトナムの沼田宏一マネージャーは語る。沼田氏は13年に赴任。現在はハノイに駐在し、日系チーム全体のマネジメントと営業、さらにPC、サーバーなどを扱うITチームのリーダーを兼務している。
 
 
リコーベトナムのオフィス

 リコーベトナムは11年11月に設立。ハノイとホーチミンの2拠点を合わせて全体で約100人のスタッフが勤務する。

 日系中小企業の進出が続く中で、リコーベトナムが果たす役割は大きいという。

 「現地は、社長などの幹部が1人でさまざまな業務をサポートしていることが多く、そのお手伝いを日本語できめ細かに対応できることが重宝されている」と五十嵐健太シニアアカウントマネージャー。五十嵐氏は18年2月に赴任、ホーチミンの営業担当として工業団地を中心に巡回している。
 
五十嵐健太
リコーベトナム
Japan Key Account, JKA
Senior Account Manager

 「特に、ナショナルスタッフのメンバーとのコミュニケーションに苦労するケースが多いようだ。ベトナムは労働人口の平均が30歳程度ととても若く、1、2年で職を変えるジョブホッピングが当たり前という高い流動性がある。その中でしっかり意図を伝えて、チームとして機能させていくことはとても難しい。われわれはその両者のブリッジ役を果たしている」と沼田氏は説明する。

ITサービスを
ワンストップで提供

 ベトナムには、「カラーライセンス」という特有の規制がある。これはニセ札の製造防止などを目的としたもの。複合機などカラーコピーができる機器の購入には、事前に人民委員会への登録が義務付けられており、もし監査が入った時に許可書がないと罰則の対象になってしまう。リコーベトナムでは、日系企業に向けてその取得をサポートするサービスを提供している。

 「ベトナム市場はモノクロ機が中心で、カラー複合機の需要はこれから本格化していくが、日系企業の場合、小規模でも日本のオフィスと同様の環境を整える傾向があるため、カラー複合機の需要が多い。申請に複数の書類を揃える必要があって手間が掛かるため、われわれのサービスが現地に進出した企業から非常に好評で、対応した案件は全て申請サポートをさせていただいている」と沼田氏。

 現在、リコーベトナムの主力製品は、カラー複合機やプリンタ、印刷機などだが、今後はプリンティング製品だけでなく、プロジェクターや会議システム、電子ホワイトボードなど、ビジュアルコミュニケーション機器の販売を通じたワークスタイル変革などのソリューション提供を推進していく方針だ。

 リコーの強みは、OA機器のみならず、PC、サーバー、ネットワークなど、オフィスや工場で必要となるさまざまなIT機器を幅広く取り扱い、その導入設計、関連する機器調達も含めたサービスをワンストップで提供できることにある。

 その強みを生かした具体的な取り組みの一つが「ライブオフィス」だ。これは、リコーのワークスタイル変革への取り組みを、ユーザーに実際に体感してもらうための空間である。

 沼田氏は、「成功例はもちろんだが、失敗談も含めて、われわれが実践した内容に基づいた生のノウハウだからこそ、お客様に自信を持って提供することができると考えている」という。

 現在、ホーチミンとハノイの双方のオフィスでも展開しており、毎週のように複数の見学者が訪れるなど、関心の高さが伺えるという。

 「大企業では、ベトナム人がマネージャーを務めている企業も少なくない。彼らはコストなど、どちらかといえば短期的な視点で機器などを調達する傾向があるが、われわれは中長期的な視点に立って、お客様の業務改善に役立つご提案をすることを心掛けている。さらに、現地のネットワークもフルに活用して、お客様から安心して任される存在になることを目指したい」と五十嵐氏は展望を語る。