ITビジネス研究会代表理事の田中克己氏は、「コロナ時代のIT企業-ニューノーマルが迫るIT産業の再定義-」と題して講演した。

代表理事 田中克己氏

 はじめに田中氏は、コロナ過による企業業績への影響について触れた。「今年度は58%の企業が減収を予測。国内ICT市場への影響も大きく、前年比5.3%減の27兆5927億(20年6月時点)と予想される」。また、企業はリモートワークを余儀なくされ実施率も3月、4月は増加したが、5月になって若干減少した。その理由は生産性低下にあるが、テレワークを継続する傾向は7割近くと高い。

 こうしたニューノーマル時代に向け、オフィスを含めた新たな働き方を打ち出す企業が出ている。海外では、混乱からニューノーマルへ向けて、職場復帰ソリューションの提供やデジタル技術を使った感染防止対策、ロボットの活用なども進む。

 振り返って国内SI業界の現実は需要減が鮮明で、情報サービス業の売り上げは予測DI値で80ポイントも大幅に減少した。業種別では、特に製造業の落ち込みが大きい。

 一方で田中氏は、「これはSI業界が変わる絶好のチャンス」とした上で、「ある有力IT企業の経営者が語っていたが、SIを展開するIT企業を取り巻く環境が一変し、下請け受託型・派遣型の人月ビジネスは崩壊する。システムをつくることから、価値を生み出すことに目的を変えなければ生き残れない」と語った。そして、テレワークの10~20%を未来を変える時間にあてて、生まれ変わるべきという。

 これまで大手SIerは、社員の増加が売上向上に直結するビジネスモデルであった。中堅SIerは、その大手SIerへの依存度が高く、労務費と外注費が多くを占める。売り上げを人に依存するのは、クラウドインテグレーターも同様だ。

 こうした古いSI業界の状況を変えるには、「次々に生まれている新興IT企業の技術を取り込む必要がある」という。「コロナ過で2年分のDXが2カ月で成し遂げられた」と米マイクロソフトのナデラCEOが今年5月の開発者向けイベントで語ったように、変化は急速でDXが緊急の課題に浮上している。

 SI業界が生まれ変わるには、新陳代謝を促す(疎外要因を取り払う)必要がある。世界に通用する担い手、世界に通用する技術やサービスを持った中堅・中小企業の存在が重要になる。そして、人の数に依存しないサービス型ビジネス(BPO、SaaS)の創出、付加価値の高いビジネスの創出(売り上げから利益重視へ)を目指すべきだとした。