Special Issue

アクシスコミュニケーションズ 世界初のIPカメラでエコシステムを重視 ネットワーク接続型セキュリティ製品も提供

2022/12/01 09:00

週刊BCN 2022年11月28日vol.1947掲載

 スウェーデンのAxis Communications ABは、世界初のネットワークカメラ(IPカメラ)を市場投入したメーカーとして知られる。この画期的なセキュリティ製品はどのような経緯で生まれたのか。同社はどのようなエコシステムをパートナー企業と構築しているのか。日本市場ではどのような活動をしているのか――。同社のマーティン・グレン共同創業者と、日本法人であるアクシスコミュニケーションズの寺田大輔・カントリーディレクターに話を聞いた。
 
(左)マーティン・グレン Axis Communications AB 共同創業者
(右)寺田大輔 アクシスコミュニケーションズ カントリーディレクター


 

独自チップセット搭載IPカメラと多様なセキュリティ製品を提供中

――Axis Communications ABとはどのような会社ですか。

グレン 当社は、私を含めて3人が1984年にスウェーデン南部のルンド市で設立しました。最初の製品は、IBMメインフレームにPC用プリンタを接続するためのプリントサーバー装置でした。私が日本に初めて来たのは87年。94年には東京・六本木に日本法人を置きました。その後、TCP/IPネットワークにさまざまなデバイスを接続するThinServerテクノロジーを生み出し、96年には世界初のIPカメラ(ネットワークカメラ)「AXIS Neteye 200」を発表しました。
 
AXIS Neteye 200

――昔からエレクトロニクスの分野が得意だったのですか。

グレン エレクトロニクス工作を始めたのは10歳の時です。高校に入ると、自作のディスコライトのコントローラーなどを友人や親戚に売って、お小遣いにしていました。私が回路設計と部品レイアウト、妹がプリント基板のエッチングという分担作業です。この頃から友人経由であちこちに売ってもらっていましたので、全てのパートナーに平等に接しなければならない、という間接販売の掟を学びました。高校生のときに真実だったことは、ビジネスの世界にも当てはまると思います。

――AXIS Neteye 200の売れ行きはどうでしたか。

グレン Neteye 200は1フレームの転送に17秒もかかりましたが、それでも、年間目標の1万台を超える1万4000台を初年度に達成することができました。そこでIPカメラに投資することを決め、監視カメラに求められる30フレーム/秒(fps)のスピードを達成するためのチップセット「ARTPEC-1」(Axis Real Time Picture Encoder)を99年にリリースしました。現在、このチップセットは「ARTPEC-8」にまで進化しています。

――ARTPECを搭載したIPカメラでの成功が今を形作っているわけですね。

グレン 2003年には経営資源をIPカメラに集中させることを決め、15年からはIPオーディオ、IPレーダー、IPアクセスコントロール、IPインターカムなどのセキュリティ製品全般も提供するようにしました。

――製品のメイン市場はどこですか。

グレン やはり米国です。最初は、学校向けの監視カメラで米国市場に参入しました。現在では、商業施設や小売業、データセンター、クリティカルインフラ、運輸など、さまざまな場所で当社のセキュリティソリューションが使われています。

日本法人には大幅に権限を委譲 エコシステムの形成にも力を注ぐ

――リセラーなどのパートナー企業との関係はどのように維持していますか。

グレン 当社は創業時からディストリビューター、リセラーを通じた間接販売に徹してきました。また、IPカメラを販売する際には、取り付け用のポール、スイッチ、ルータ、ケーブル、ビデオ管理ソフトなどのさまざまな関連商材との組み合わせが重要になります。そこで、業界のキーオピニオンリーダーに会ったり現地インテグレーターの話を聞いたりした上で2001年にパートナー制度を創設し、エコシステムの形成に力を注いできました。

――日本市場向けにはどのようなマーケティング戦略を進めているのですか。

グレン マーケティングは常にローカルであるべきだと私は考えています。日本市場向けのマーケティング戦略は、日本法人が考えなければなりません。本社のあるルンドで方針を策定しても、決してうまくいかないでしょう。

寺田 日本法人は本社から権限を大幅に委譲されており、独自のプログラムで取り組んでいます。その結果、国内IPカメラマーケットにおいてシェアは20% 超、No.2のポジションになりました(出典:富士経済「2022セキュリティ関連市場の将来展望」)。日本市場でも導入先は流通業、商業施設、データセンター、重要施設が多いのですが、他の国・地域と比較するとネットワークビデオレコーダーへのニーズが高いことは特徴といえるでしょう。また、関西・中京地区のお客様のニーズを汲み取るために、今年11月に国内二つめのデモンストレーションセンター「西日本アクシスエクスペリエンスセンター」をAxis西日本オフィス内に設ける予定です。

グレン 他国の人が日本でビジネスをするには、長期的な視点にたって活動しなければなりません。スウェーデン人はコンセンサスを重視し、継続的な改善を愛していますので、文化的には日本人と近いところがあると感じています。

――日本のディストリビューターやリセラーへのメッセージをお願いします。

グレン 私からのメッセージは三つあります。まず、これからも地理的なカバレージを拡大していきます。日本についても、将来的には東京、大阪以外にも拠点を設けるかもしれません。第2に、これからもパートナーシップを大事にしていきます。現在の販売チャネルを飛び越えて直接販売することは絶対にありません。第3に、当社自身もサイバーセキュリティへの取り組みをさらに強化していくつもりです。セキュアでなければ、お客様をセキュアにすることもできません。
  • 1

関連記事

Axis、体験型展示スペースをリニューアル バーチャル空間を装備

アクシスコミュニケーションズ よりスマートで、より安全な世界をIPカメラで目指す 新しい領域にも活躍の場を広げていく

外部リンク

アクシスコミュニケーションズ=https://www.axis.com/ja-jp