Special Issue

NETONE PARTNERS CISCO SYSTEMS シスコの望月副社長に聞く重点戦略「CX」

2022/12/01 09:00

週刊BCN 2022年11月28日vol.1947掲載

 前回、シスコシステムズ(シスコ)の中川社長との対談で、重点戦略の一つとしてカスタマーエクスペリエンス(CX)が挙がった。今回も引き続き、ネットワンパートナーズ(NOP)の田中拓也社長がホストとなり、シスコの望月敬介副社長に、シスコが目指すCXと市場展開、パートナーがCXに取り組むため、どのような支援をしていくのかをテーマに意見を交わした。
 
 

「TEAMシスコ」で顧客に伴走 SIerへの支援も重視

田中 シスコ様の成長戦略の一つにCXが大きく挙げられております。改めて、シスコ様が考えるCXとその重要性を教えてください。
 
ネットワンパートナーズ
代表取締役社長執行役員
田中拓也

望月 ITや運用がより複雑化するクラウド時代にお客様を支え続けるためには、CX向上を目指すリカーリングサービス、伴走型モデルがもはや「必須」です。お客様のIT環境が今後、短期サイクルで動的に変更されるのが「DXを支えるインフラ」の宿命であり、従来の「売り切り型営業スタイル」ではお客様の環境は立ち行きません。
 
シスコシステムズ
副社長執行役員
望月敬介

 実際、シスコが提供する製品パーツの8割以上は既にソフトウェア化され、お客様のDX環境を安全かつ柔軟に支える準備ができていますが、クラウド技術の進化に合わせて更新サイクルも短期化していきます。クラウド時代におけるテクノロジー提供者の宿命であり、市場のニーズなのです。

 従って、自前で運用されているお客様への直接の伴走型支援はもちろん、お客様がSIerの皆様に業務委託されている場合でも、SIer様への同様の伴走型支援が必要と考えています。この伴走型支援はCX部門を設置するだけではなく、カスタマーサクセスチームによる日頃の活動、インストールベースの状況を把握・分析するためのデジタル・ツール、スキル支援やコミュニティー立ち上げなど、お客様を支えるあらゆる仕組み、そして、お客様の環境を熟知しているパートナー様チームとの「TEAMシスコ」としての連携プレーを総称しています。これこそがシスコの考えるCX機能であり、クラウド時代に当社とパートナー様が共同で提供し続けるべき仕組みなのです。

田中 日本市場でのプリセールス・ポストセールスモデルに大きく変化がありそうですね。

望月 はい。今までは、プリセールスとポストセールスという二つの局面で営業サイクルが語られてきましたが、これからは契約後もお客様とより深い関係になっていく。そのためのライフサイクル・モーションをチームで確実に回していかなければならないと考えています。

田中 当社は以前から「Close to Customer」を基本方針とし、パートナー様に寄り添うことを重視してきました。われわれも、これからの市場ニーズに基づいてパートナー様もCXの推進が必要になると考えています。それを踏まえてパートナー様がより良いCX活動を実現できるよう支援体制をいち早く整備するため、その第一歩として2021年7月にCiscoのCXスペシャライゼーション認定を取得しました。アジア太平洋地域(APJC)のディストリビューターで初の認定であり、Cisco CX先駆者として、製品やプログラムへの深い理解、Cisco Partner CXチームとの協業により、パートナー様を支援してまいります。新しいチャレンジではありますが、当社の強みである高度な専門知識を生かせる活動だと考えています。

今後3年で全ての顧客に 伴走型支援を提供

田中 日本市場での具体的なCX戦略を教えてください。また、日本でCXを展開する上でのパートナー様、ディストリビューターにどのような役割を期待されていますか。

望月 日本市場では、何よりパートナー様との共創モデルの立ち上げなくして成功はあり得ません。そこで、当社からパートナー様への期待は大きく二つあります。

 一つめは、何よりも当社とともにお客様への伴走型モデルを立ち上げていただくことです。中には、従来型パートナー保守からの移行に慎重な方もおられますが、伴走型モデルをクラウド時代の必須条件と捉え、今こそマインドセット・チェンジをするタイミングかと思います。私はこれからの3年で全てのお客様に伴走型支援を提供することが必要と考えており、そのためにもパートナー様におけるREADINESS(体制の整備)が1番の成功のかぎになります。二つめは、一層のスキル強化です。シスコはクラウド時代に備えて、これまでお客様の運用負荷を軽減する新たなテクノロジー(プロダクトとサービス)を多く準備してきました。その多くがソフトウェアによって提供されています。TEAMシスコとして、これこそがクラウド時代のお客様を支えることにつながるため、新しいテクノロジーに対してより一層のスキル強化に取り組んでいただきたい。ソフトウェア・ビジネスはスキルが全てと言っても過言ではありません。そして、上記2点はシスコ+ディストリビューター様との協働により、パートナー様を支えていけると考えています。

田中 当社でも、パートナー様のCX体制の整備・強化のための独自サービスを検討しています。具体的には、活動支援(タッチポイント強化)、商材や契約などの情報管理支援、シスコのプログラム活用支援などで、それをもってパートナー様のCXの取り組みの後押しをしていきたいと考えています。また、スキル強化については、提案時のベストプラクティスや、運用時のQAベースでのナレッジ蓄積・提供はすでに実現できている状態です。今後は、その取り組みをCXの活動へも広げていくことが重要と考えています。

強固なエコシステム 過去7年の積み重ねが強み

田中 CXに取り組むITベンダーは少なくありませんが、他社にはないCX戦略の強み、価値とは何でしょうか。

望月 一番はパートナー様・ディストリビューター様+シスコというTEAMシスコの強固な関係(エコシステム)と多くの人的リソースがあることです。最高の顧客体験をコミットする上で、テクノロジーを提供するシスコと、お客様を現場で支えるパートナー様とのONE TEAMオペレーションが既に実現できていることです。

 次に、このTEAMシスコが日本市場で膨大なインストールベースを有し、運用や障害解決に関する経験を積み重ねてきた点です。お客様の課題や悩みを認識でき、ここにこそ商機があるといえます。

 最後に、これまでシスコが一貫して強化してきたCX機能です。これまで7年近くをかけて、プロダクト/サービス・ラインアップの準備、カスタマーサクセス機能の拡張、それを支えるツール類(既存のサービスポートフォリオから構築されたサービスソリューションスイート「Success Tracks」、パートナーライフサイクルサービス「PLS」、パートナーエクスペリエンスクラウド「PX Cloud」など)を拡充してきました。決して付け焼き刃ではなく、市場やパートナー様の声を聞きながら準備してきた「地に足のついた戦略」と自負しています。それにシスコが核とするネットワーク技術は、DXの推進に必要不可欠な要素になると考えています。以上、この3点全てが日本のお客様のDXインフラを支えるTEAMシスコの価値といえます。

田中 日本でCX戦略を展開していく上では、市場とのギャップ、課題もあると考えています。例えば、サービスシフトへの転換。パートナー様はサブスクリプションの台頭を理解してはいるものの、売り切り型オンプレミスのビジネスモデルは一定の割合で継続すると考えており、今の段階でどの程度CXに注力する必要があるのか考えあぐねています。シスコ様と一緒に従来型SIビジネスモデルからの転換の必要性を訴えていきたいと思います。

 もう一つは、マルチベンダー対応です。顧客の環境は複数ベンダーの製品で成り立っており、単一のベンダーのCXを提案することはできません。パートナー様や当社がハブとなって、お客様に最適なCXを提供することが求められると考えています。

 また、パートナー様の組織対応においても、従来の営業、SE、CEとは別にカスタマーサクセスを推進する人員リソース確保が大きな課題です。ただ、そこはビジネスチャンスであるとも思います。

CXの課題・困りごとは NOPに相談してほしい

田中 最後に改めてパートナー様へのメッセージをお願いします。

望月 今後パートナー様の伴走型支援体制のREADINESS強化、並びにシスコが提供する新たなテクノロジーのお客様への導入・展開に必要なスキル強化・パートナー様間での相互補完関係の拡充の2点で、TEAMシスコのエコシステムを一緒に盛り上げていきたい。今後は市場へのメッセージングについてもご一緒いただければと考えています。

 例えば、伴走型支援と並行して取り組まなくてはならないのが、日本のお客様を変化する環境に柔軟に対応できる「やわらかいインフラ」に切り替えることや「NW1stデザイン(最初にNW設計が必要)」の鉄則を日本市場のお客様に発信し続けることです。実際、部分最適なシステム設計が原因でDXに苦戦されている多くのお客様のためにも、そうした発信を通してTEAMシスコ一丸となり、お客様のDXを支えていければと考えています。

田中 市場ニーズの変化に伴いCXへの取り組みは急務です。当社はパートナー様と伴走する形でCXへの取り組みを広げていきたいと考えており、APJC唯一のCX ディストリビューターとしてパートナー様を支援する準備を全力で進めていきます。そして、CXといえばNOPという存在になることを目指していますので、CXについて課題や困っていることがあれば当社に相談してほしいと考えています。

望月 このほどNOP様は、当社が毎年発表している「Japan Distributor of the year」を受賞されました。昨年度比150%成長を実現し、DevNetなど独自サービスの開発にも注力、幅広くビジネスに貢献いただきました。ぜひ、これからも当社とともに、CXの展開を強力に推進していただけることを期待しています。
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外部リンク

ネットワンパートナーズ=https://www.netone-pa.co.jp/

シスコシステムズ=https://www.cisco.com/c/ja_jp/index.html