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NETONE PARTNERS CISCO SYSTEMS シスコの中川社長に聞く 「DX」「成長戦略」「パートナー協業」

2022/11/17 09:00

週刊BCN 2022年11月14日vol.1946掲載

 今年5月に日本法人として設立30周年を迎えたシスコシステムズ(シスコ)。今回、ディストリビューターとしてシスコ製品をパートナーに提供しているネットワンパートナーズ(NOP)の田中拓也社長がホストとなり、シスコの中川いち朗社長と、DX推進に取り組む日本企業へのサポート、成長戦略、パートナーとの協業および期待をテーマに幅広く意見を交わした。
 
 

DXのユースケースを日本企業から発信したい

田中 まずは30周年、おめでとうございます。現在、ウィズコロナを見据えて多くの企業が取り組んでいるDXですが、その進捗状況をシスコとしてどう捉えていますか。
 
ネットワンパートナーズ
田中拓也
代表取締役社長執行役員

中川 今年5月にシスコジャパンは創立30周年を迎えました。これまでシスコを支えていただいたお客様、そしてNOP様はじめパートナー企業の皆様に心から感謝を申し上げます。新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの価値観や社会のあり方に大きな変化をもたらしました。世界的に急速なデジタルシフトが起き、DXを加速させており、シスコにとっても大きな成長機会です。ただ、DXは実際のユースケースが重要で、シスコでもお客様やパートナー企業と一緒にユースケースを創出するための体制やプログラムを推進しています。
 
シスコシステムズ
中川いち朗
代表執行役員社長

田中 徐々にではありますが、業界ごとのDX化が進みつつあります。

中川 業界の垣根なしにDXは進んできていますが、グローバルと比べ、日本は企業だけでなく、生活のベースとなる社会基盤のデジタル化の遅れが目立ちます。デジタル庁も発足しましたが、その底上げが必要だと強く感じます。

田中 日本の立場からすると、過去、ユースケースを聞く先は北米を中心とする欧米企業でした。しかし、10年、20年、30年が経過しても未だに同じように聞いている。さらに言えば、最近は欧米企業のAPAC拠点にも聞いているという状況は日本でITを推進してきたわれわれからすると変えていかなければいけないと強く感じています。それだけにDXへの取り組みを機に、日本からユースケースを発信していきたいですね。

中川 IoTをはじめ製造業は日本の強みですから、もっとユースケースの発信をしたいと思います。一方、NOP様と当社の協業という意味で私が注目しているのは、SMB市場です。海外と比べて日本市場が特殊なのは、約99%が中小企業だということです。海外では大手企業をカバーすれば市場のかなりを占めますが、日本ではそれだけでは十分ではありません。当社はこれまで大手のお客様が中心でしたが、今はSMB市場にもかなり注力しています。その施策の推進には全国のカバレッジが不可欠で、そこをNOP様はじめディストリビューターが地域のパートナーとどう連携していくかが鍵と考えています。

田中 SMB市場にサービスや製品をデプロイする時に、そこに向けた製品があるかが重要です。シスコ様は幸い買収を繰り返したことで、中小のお客様をカバレッジできる製品をラインアップしていますが、それでも足りないところはある。そこをこれからディスカッションしていきたい。当社のパートナー、お客様が欲しいものと、われわれが良いと考えているものは必ずしも合致していません。

中川 当社もハードウェアからソフトウェアへのシフトなど、事業構造はかなり変わりました。ただ、クラウドシフトのように、ITが構築型から利用型へと変わる中で、同じ製品でもそれをどうお届けするかが課題になります。例えば、当社では、パートナー様とシスコ製品を活用したマネージドサービスの開発に注力しています。パートナーの皆様にインテグレーションしていただき、ワンストップでお客様をきめ細やかにケアしていただくことができます。パートナー企業の方々も各社の強みを付加価値としてお届けいただくことになり、今まで以上にパートナー様との連携が重要になります。

田中 そこは大いに工夫の余地があると考えています。旧来のやり方では市場が決まってしまっているので、先へ行こうとすると新しい細工が欠かせなくなります。

過去最高の業績を達成 シスコの四つの成長戦略

田中 DXの推進にはIT投資が不可欠ですが、ビジネス状況はいかがですか。

中川 シスコはちょうど2022年度を終えたところですが、22年度は通年で二桁を迫る成長を達成し、第4四半期には受注額が過去最高となりました。DXを素早く実行するには、最新テクノロジーの活用が不可欠です。前述した構築型から利用型への転換、しかも、導入後も定着、活用という段階での支援が欠かせません。シスコもお客様にとっての製品価値をライフサイクル全体で最大化をご支援するビジネスモデル変革に取り組んでいます。その結果、グローバルでは昨年、ソフト、サービスのビジネス比率が初めて5割を超え、リカーリングビジネスの割合は45%、ソフトウェア売り上げに占めるサブスクリプションの割合も8割を超えています。日本もそれに準じたレベルになっています。

田中 FY23におけるシスコシステムズの成長戦略を教えてください。

中川 外資系企業では、本社の戦略をそのままトップダウンで日本で実行するということが起こりがちです。しかし、各国でマーケットの特性は異なりますので、昨年11月にシスコジャパンとして独自の成長戦略「Cisco Japan Project Moonshot(Moonshot)」を策定しました。私の社長就任後、組織の枠を超えた現場から100人強のリーダーを集め、約半年をかけて戦略ごとにチームを構成し、日本のお客様に貢献するには、何をすべきかを徹底して議論した中から生まれたものです。

 この計画の根底には、これまで当社はお客様から見て、信頼される製品ベンダーではありましたが、そこを一歩踏み込んで、戦略的なビジネスパートナーになり、お客様の成功に直接貢献できるパートナーになりたいという強い想いがあります。

田中 確かに、お客様との戦略的な関係性を深めていくことは重要です。

中川 Moonshotは、「日本企業のデジタル変革支援」「日本社会のデジタル変革支援」「クラウド時代のサービスモデル変革」「パートナー様との価値共創」の四つの戦略があります。まず、企業のDX支援では、特に働き方改革、ハイブリッドワークに注目し、ネットワークインフラを含めた包括的な環境の整備、企業カルチャーの醸成も含めて、総合的にお客様を支援します。

 また、大企業だけでなくグローバルに先駆けて、15年から日本の中堅中小企業のお客様に特化した、シンプル、スマート、セキュアなソリューションも展開しています。ただ、企業のDX支援をシスコだけで完結はできないため、パートナー様との協業が不可欠です。さらに、そのパートナー様の支援もシスコだけでは不十分ですから、NOP様はじめディストリビューターの方々を通じたサポートを提供して参ります。NOP様はシスコが提供する新製品、サービスを常にいち早く日本市場に投入され、パートナー様が販売できるよう、営業やSEの方々を手厚くサポートしていただいており、本当に感謝しています。

田中 ありがとうございます。日本社会のDX支援も取り組むべきことですね。

中川 日本社会のDX支援では、カントリー デジタル アクセラレーション(CDA)というグローバルに展開する戦略的投資プログラムが核です。これまで世界44カ国で1000件以上のプロジェクトを支援し、日本でも20年より投資を開始し、現在では20以上のプロジェクトを推進しています。

 クラウド時代のサービスモデル変革に関しては、次回の田中社長との対談でカスタマーエクスペリエンス(CX)を担当する副社長の望月が説明しますが、シスコはお客様にとっての製品価値をライフサイクル全体で最大化するカスタマーライフサイクルアプローチという手法を提供し、真のビジネスパートナーとなることを目指しています。

 最後に、パートナー様との価値共創では、ネットワーク、セキュリティ、コラボレーションを中心としたパートナー様とのマネージドサービスの開発、展開を強化します。7月には、この取り組みをさらに進化させ「エコシステム パートナー プログラム」を立ち上げました。

日本のパートナーにこそ シスコ本社に声を届けてほしい

田中 シスコのパートナーを日米で比較した時の大きな違いは、米国ではディストリビューターが重宝されている点です。理由は米国のユーザーは、多くのITのノウハウを蓄積しているので、機器を提供してもらえればユーザー側でほとんどのことが実現できてしまうためです。対して日本はユーザーがSIerの方々に任せるケースが多い。市場の違いを米国側にしっかり理解してもらいたい。これからCX、PX(パートナーエクスペリエンス)を創っていく上で、米国側にはその理解度を高めてほしいですね。

中川 製品サイクルがより短くなる中では、当社、お客様と接するパートナー企業の方々、そこに製品と情報をお伝えいただくディストリビューターの方々との間の情報共有のサイクルをもっと機敏にしていかなくてはならないと思います。

田中 以前より言われていた、単発売りの営業の限界がいよいよきた気がします。

中川 当社が変わるのと同様、パートナー企業の皆様もビジネスモデルを変えていく必要に迫られています。その意味で、製品やソリューション、サービスの情報共有や、日本からのリクエストを双方向に、かつスピーディにコミュニケーションするために、パートナー各社様とシスコ本社の開発部門とのパイプをもっと太くしていきたいと考えています。これによって情報共有のサイクルを速くしていきたいと考えています。米本社から見た日本市場は非常に重要視されているので、直接パートナー様の声が反映されやすい状況があります。

田中 おっしゃるように日本のパートナーの方々も、もっとサンノゼに行ってリクエスト、苦言も含めて話をすべきだと思います。現状は会話が圧倒的に少ない。私は幸い、中川社長にアレンジしていただき、定期的に訪問していますが、話の質、ステージがまったく違う。それを理解した上で、日本でビジネスをするのでは大きな違いとなるので、ぜひ、訪問してほしいですね。

中川 日本支社の大きな役割の一つは日本のお客様、パートナー企業の方々の声をいかに正確に伝えるかです。本社は皆様が考えている以上に声をしっかり聞いています。特に、品質への取り組みや、ビジネスへの考え方など、日本のお客様の声はとても貴重だとよく理解しています。
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外部リンク

ネットワンパートナーズ=https://www.netone-pa.co.jp/

シスコシステムズ=https://www.cisco.com/c/ja_jp/