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シュナイダーエレクトリック データセンター最新鋭化のカギはUPSとラックマウントPDUにアリ 電力高密度化を実現し増加するAIワークロードにも対応

2024/04/25 09:00

週刊BCN 2024年04月22日vol.2011掲載

 生成AIの発展とともに世界中で最新GPUの需要が高まっている現在、データセンターの設計や運用に関してもGPU搭載サーバーによる最新鋭化が進んでいる。しかし一般的なサーバーよりも消費電力が高いため、従来以上の電力供給力や冷却性能を備えた設備がなければAI開発はままならない。サーバー周辺の電力関連設備の現状についてシュナイダーエレクトリック セキュアパワー事業部事業開発本部の2人に聞いた。

リチウムイオン採用モジュラー型UPSで小型化、拡張性、冗長性を実現

 これからのビジネス革新にAIは欠かせない。「ChatGPT」などのサービスを活用するだけでなく、自社の情報資産とAIを組み合わせて独自のAIモデルを開発し、競争力を高める企業も現れてきている。
 
セキュアパワー事業部 事業開発本部長 三室昭佳(右)
セキュアパワー事業部 事業開発本部
ビジネスディベロップメント アソシエイト 大西海渡(左)

 機密データ保護や自由度の観点から占有サーバーで運用する場合、忘れてはならないのがデータセンターの電力供給力や冷却性能だ。例えばNVIDIAのH100は同社のA100と比較すると性能が3倍以上に向上しており、AI活用にも耐えうるスペックを有しているが、最大消費電力は従来比で約2倍となり、サーバー単体で10kWに及ぶこともある。GPUが高度化する中、従来のデータセンターでは電力供給や機器の冷却が追いつかないケースが出てきている。三室昭佳・事業開発本部長は「AIの急速な成長がデータセンターの設計と運用に変化をもたらしており、ラックの高密度化とクラスタ化に対応するソリューションが求められている」と話す。
 
サーバーはその高密度化と共に消費電力量も増加している

 2024年4月1日からシュナイダーが国内提供を開始する「APC Smart-UPS Modular Ultra」は、同社の小型UPSでは初のリチウムイオン採用モジュラー型UPSだ。同規模の鉛採用製品と比較すると、容量は57%増加の17.6kW、ラック格納サイズは従来の19Uから9Uと半分以下、さらにバッテリー寿命は2年半から10年と4倍になっている。
 
Smart-UPS Modular Ultraはコンパクトながら
大容量と長寿命を実現している

 同製品はモジュラー型なので、4.4kVAのユニットを4個まで段階的に拡張可能だ。またN+1の冗長性を有しており、一つのユニットに障害が発生しても残りのユニットでカバーできる。運転時間は標準で5分、最大1時間以上まで拡張可能。背面インターフェースも選択できるため、100V、200Vが混在した複数機器を同時に接続可能だ。

 なお、以前より発売していた同シリーズの非モジュラー型製品にも、4月1日から8kVAと10kVAがラインアップに加わる。どちらも増大する電力ニーズに応えて拡張性や冗長性を備え、その上で型化・軽量化を実現している。

高密度でインテリジェントなラック設置用コンセントバー

 より直接的な電力供給の担い手となるのがラックマウントPDU、ラック内に設置するコンセントバーだ。シュナイダーが提供する「APCインテリジェント ラックPDU」は多数のコンセントを有し、さらに多彩なインテリジェント機能を搭載している。例えばリアルタイムでタップごとの電流値を測定し、設定したしきい値を超過したらアラートの発報が可能だ。ネットワーク接続にも対応しており、遠隔からコンセントのオン・オフを行うことが可能なモデルもラインアップしている。ITスタッフの現地訪問回避、計画停電の自動化など、人材不足の課題解決にもつながるだろう。

 APCインテリジェント ラックPDUの上位モデルとなる「APC NetShelter Rack PDU Advanced」では、従来モデルと同じ幅56mmに隙間なくコンセントが2列で並び、より多くの電力を供給できる。高密度にコンセントが並びながらも動作温度は-5度から60度まで対応しており、高発熱環境でも安心して利用可能だ。また全コンセント数のうち半数は4種類の形状(C13、C15、C19、C21)に対応する4-in-1アウトレット構造のため、多種多様な機器に対応できる。標準で3年、延長で最大6年と従来よりも長いサポート期間を設けているのも特徴だ。

 同製品はネットワークポートおよびオプションのセンサー接続による温度・湿度・漏水・ドア開閉の制御モジュールが組み込まれており、電源供給中にシステムを停止することなく交換できる。加えて、ネットワークポートは周辺のラックマウントPDUとカスケード接続できるため、ネットワークスイッチのポート節約にもなる。万が一入力電源を喪失しても隣接のラックマウントPDUからイーサネットケーブルを通じて電力共有が可能だ。

 シュナイダーの新しいUPSとラックマウントPDUは、電力供給の課題を解決するだけではなく、ITスタッフの省力化にもつながる。さらにリサイクル原料の使用やバッテリーの長寿命化による廃棄頻度減少など、製品ライフサイクル全体にわたり環境への配慮が見られるのも特徴だ。ビジネスディベロップメントアソシエイトの大西海渡氏は「電力密度が上がり、データセンター全体の消費電力が大きくなる中、環境負荷軽減にも注目が高まっている。製品のライフサイクル全体で、より持続可能な社会への使命を果たしていきたい」と話す。
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シュナイダーエレクトリック=https://www.apc.com/