会議室にリモート参加者をつなぐハイブリッド会議が浸透する中、会議の「音質」が成否を分ける大きな要因の一つとなっている。音響機器メーカーの独Sennheiser(ゼンハイザー)は、日本市場のビジネスコミュニケーション製品の体制を強化。オーディオブレインズとの新たな販売体制を通じて、顧客課題に応えるソリューション提供を加速する。Sennheiser Electronic Asia ビジネスコミュニケーション APAC ヴァイスプレジデントのペッテリ・ムルト氏と、オーディオブレインズ 代表取締役の山崎潤太氏に、全国ショールームでの体験支援も含め、パートナーとの共創体制について聞いた。
放送現場で培った実績と技術を会議室の現場にも展開
会議室にリモート参加者をつなぐハイブリッド会議の普及に伴い、「音質」に関する課題が顕在化している。PCのマイクでは点在する参加者の声を十分に拾いきれず、リモート参加者が会話についていけないことがある。ムルト氏は「音で失敗すれば、会議も失敗する」と語る。音質が悪ければ参加者は疲弊し、議論の質や成果にも悪影響を与えかねない。AIで議事録を作成するなら、音質はなおさら重要になる。
Sennheiser Electronic Asia
ビジネスコミュニケーション
APAC ヴァイスプレジデント
ペッテリ・ムルト氏
創立80周年を迎えたゼンハイザーは、放送やライブの現場で「音の未来」をつくってきた。1956年に発売した世界初のショットガンマイクは、狙った方向の音を収音できる革新的製品となり、放送や映画の撮影スタイルを一変させ、今でも現場の定番として受け継がれている。放送局や大劇場の音響を支える定番ブランドとして信頼を積み重ねてきた。
同社の技術はビジネスコミュニケーションの場でも応用されている。会議室の天井に設置するシーリングマイクには、特定の音源の場所だけを集音するというショットガンマイクの技術を活用した「自動ダイナミックビームフォーミングテクノロジー」が備わっている。これにより話者の位置情報を特定し自動追尾が可能となり、歩きながらの発言もクリアに届けることができる。同時に、エアコンなどを非収音エリアに設定し空調ノイズを避ける事も可能となる。さらに、シーリングマイクで集音した声を同室内で拡声し、室内の離れた参加者にもクリアな音質で届けるゼンハイザー独自の「TruVoicelift機能」により会議参加者はマイクを持たずに自然な会話が可能になる。
ゼンハイザーとオーディオブレインズ 新体制のシナジーで日本市場のサービスを強化
2025年11月、ゼンハイザージャパンとオーディオブレインズは、会議室向けビジネスコミュニケーション製品の新たな販売体制を発表した。26年1月からは、オーディオブレインズがシーリングマイクやビデオバーなどの国内独占販売を開始し、在庫管理や物流、修理対応まで含めたオペレーションを一括して担う。新体制はゼンハイザーの技術とオーディオブレインズのネットワークで相乗効果を目指す。
オーディオブレインズ
代表取締役
山崎潤太氏
山崎氏は「ゼンハイザーは音質に対する妥協が一切なく、以前から注目していた」とし、「オーディオブレインズが展開する他のブランドとも自然に調和すると考えている」と話す。一方、ムルト氏はオーディオブレインズを「理想的なパートナーだ」と強調する。20年近く、多くのブランドの輸入販売やメンテナンスを手掛けてきた実績があり、日本市場できめ細やかなサポート体制を構築してきた点を高く評価。ゼンハイザーのポートフォリオと適合することで、日本市場でさらなるプレゼンスを高めることに期待を寄せた。
ゼンハイザーの音響技術とオーディオブレインズの専門性とネットワークが重なることで、シナジーを生み出せるとの考えで両社は一致している。
体験で音質の真価を実感 パートナーと「ともに成長」する未来を
新体制では、オーディオブレインズが販売だけではなく、在庫管理や修理対応までのオペレーションを担うことで、パートナーや顧客へのサポート品質を高めることが期待される。パートナーへの施策で最大の特徴となるのがショールームだ。ゼンハイザーは東京・青山に、オーディオブレインズは東京・代々木に、どちらも足を運びやすい場所にショールームを構えており、パートナーや顧客が音質や機能を直接確認できる場を用意している。
音質の違いは気づきにくい。ハイブリッド会議の音質が悪くても「こんなものだろう」と見過ごされがちだ。しかし一度クリアな音を体感すれば、「一目瞭然」ならぬ「一聴瞭然」で音質の違いに納得できる。ムルト氏は「Demo is King(デモこそ王道)」と話し、体験してこそゼンハイザーの真価を実感できるとする。
山崎氏は「神奈川県川崎市の本社と代々木のショールーム、大阪、名古屋、福岡の営業所でゼンハイザー製品を体験できる空間をつくっていく」と話す。お客様への提案やデモを行い、導入時には設定支援、導入後の各営業所からのフォローアップなど一貫したサービスを提供していく考えだ。
ゼンハイザーの技術とオーディオブレインズのネットワークで相乗効果を目指す
ムルト氏は、パートナーとともに市場を育て「Grow Together(ともに成長する)」考えを示した。ゼンハイザーとオーディオブレインズはともに、日本のビジネスコミュニケーションにおける新しい音の未来を切り開いていく。