昨年10月に、関東電子から丸紅インフォテックに社名を変更。中期経営計画のもと事業強化に取り組んでいる。梅崎哲雄社長は、「メーカーの販売代理ではなく、お客様の購買代理をする立場へと、転身していかなければならない」と、社内の意識改革を促す。卸事業に対する風当たりは依然厳しい。「顧客の購買を顧客に代わって行っていけば、今後ますますビジネスが複雑化しても、卸業者が存在する意味はある」梅崎社長は言い切る。
中期経営計画2001を策定、事業の軸足を企業向けに
──パソコン販売は、厳しい状況が続いていますが。
梅崎 やはり景気の影響が大きい。残念ながら、日本の先行きに不安を覚えている人が多い時期は市場は伸びませんね。
ただ、個人的には楽観的に考えているんです。マクロ的に見て、2002年のパソコン業界はどうなるのかを考えると、日本のパソコン普及率は今のままでとどまるとは考えにくい。米国と比較して、日本の家庭への普及率は50%、米国が60%と言われています。識字率を考慮すれば日本は65-70%まで行っていいポテンシャルがあると思っているんです。インターネットの普及率も米国が50%なら、日本は60%くらいまで行けるのではないですか。
──ウィンドウズXPが発売になっても、パソコンの売れ行きは回復していません。
梅崎 やはり、昨年の市況から回復するには、かなり時間がかかるのではないでしょうか。ウィンドウズ95の時とは違いますよ。95の時は、購入した人を見て周りの人が刺激されて自分も…、というサイクルで急速に普及していきました。ウィンドウズXPはブロードバンド対応OSです。今、利用環境が揃ってきて、良さを実感して使う人が増えている最中ですから。時間はかかると思いますが、コンシューマ市場がこれっきり伸びないということはあり得ない。
──丸紅インフォテックにとって、現状はどうですか。
梅崎 今年度年初(2001年4月)に体制を変更し、事業の軸足を企業向けに移管することを決定しました。その時点では、コンシューマ事業で売り上げをあげつつコーポレート事業を立ち上げる戦略だったのですが、残念ながら稼ぎ頭のはずのコンシューマ事業が非常に厳しいですね。
──そうなると、コーポレートマーケットが重要になってきます。立ち上げの進捗状況はいかがですか。
梅崎 満足できる結果ではないですね。経済環境が悪かったことを割り引いても、思うような数字が出せませんでした。ただ、企業向けビジネスは立ち上がるまでに時間がかかるものです。ここはぐっと我慢しなければと考えているところです。
昨年10月1日、社名を関東電子から丸紅インフォテックに改めました。これもコーポレートビジネスを推進していくために、当社が丸紅グループに属していることをアピールしていくのが狙いです。多少時間はかかるかもしれませんが、企業向けビジネスは今後も継続して行っていこうと考えています。
この厳しい環境のなかで、ビジネスをしていくにあたって、中期経営計画2001を策定し、コンシューマ、企業向けともに、「新しい流通価値の創造」を合い言葉に社内の意識改革を進めています。当社の役割はどのようなものか改めて考え直し、販売代理ではなく、購買代理になろうと。
スケールメリットが大きい、丸紅グループの強み
──販売代理であることと、購買代理であることの違いとは。
梅崎 当社が取り扱っている商品を提供してくれるベンダーも、購入してくれる顧客も非常に多様化しています。おそらく、1つのメーカーが5割のシェアをもって、その製品だけ扱っていれば十分だという時代はもう終わりではないでしょうか。
ニーズ、サプライともに多様化している以上、当社はメーカーの販売代理ではなく、顧客の購買を引き受けるという立場にならなければ、顧客は当社と取引をしてくれないんじゃないですかね。
ある量販店さんに指摘されたんですが、今までパソコンを売るのに価格、性能、納期という3つしか、話をしてこなかった。もっと会話を増やさないと駄目ですね。冷蔵庫を売る時には、独身か、家族が何人かなどを聞いて商品を勧めるそうです。パソコンでもそういう問いかけをしていかないと駄目でしょうね。
当社もお客さんに接する時に、ニーズの掘り起こしができるような会話をしていこうと言っています。
SFAを導入し、営業マンは毎日レポートを書いています。これによって、各スタッフが現場の状況や提案をしています。毎朝、これを読むのが楽しみでね。時々、文句を言いたくなることも書いてありますが、そこはぐっと我慢して、褒めるようにしているんですよ(笑)。
──社長自ら、レポートに目を通しているんですか。
梅崎 読んで返信していると2時間かかりますからねえ…。出勤時間を早めて読んでいます。
──卸不要論が依然としてあります。販売代理ではなく、購買代理になることで、卸を利用する意味が生まれるということですか。
梅崎 そうです。ユーザーは当社を活用することで、リスクもコストも大幅に削減することができる。物流を代行することでコスト削減につながりますし、メーカーがユーザーと直接サプライチェーンマネジメント(SCM)を構築するといっても、メーカーにとってはコスト削減になるでしょうが、ユーザー側は1社だけとSCMを構築しても全体のコスト削減にはつながりません。
卸はたくさんのメーカーを扱っていますから、SCMを構築するにしてもユーザー側のメリットは大きいはずです。
──卸同士の競合という側面で見ると、丸紅インフォテックの強みとはどんな部分ですか。
梅崎 やはり、丸紅グループとして、ソフト、通信、SIなど各分野で連携できる企業をもつ“スケールメリット”という点にあると思います。
──しかし、パソコンに関してみると、小売り、ソフト流通のコンピュータウェーブなど、協力できる企業群が多いにもかかわらず、共同でビジネスをする体制になっていませんね。逆にライバル企業の方がソフト、ハードなど総合的に勝負できる体制になっているように見えますが。
梅崎 確かに同じく卸事業をやっているコンピュータウェーブとは、重複している部分が多いのに協力関係はまだまだ不十分です。ただし、物流についてはサイバーロジスティクスという会社を共同で設立し、一本化していますし、現場レベルではお互いに顧客紹介なども行っていこうということで、連携体制を強化しています。ビジネスで連携するケースも大いに増えてきていますよ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
営業マンのレポートに目を通すのが梅崎社長のもっぱらの楽しみ。「やはり現場の声には臨場感がある。読むのに2時間かかっても、楽しいね」と、笑みがこぼれる。毎朝、2時間出勤時間を早めることも苦にならないくらい、梅崎社長にとっては励みになるレポートなのである。パソコン業界は厳しい状況が続いている。同社の主力商品である周辺機器についても、「売り上げのよいもの、悪いもの、まだら模様の様相。ブロードバンド関連のネットワーク機器やデジタルカメラは伸びているが、元気のないものは本当に調子が悪い」。経営者にとっては頭の痛い状況が続いている。それだけに、営業マンから寄せられる現場の生の声は社長を励ますパワーともなっている。(猫)
プロフィール
梅崎哲雄(うめざき てつお)1946年3月28日生まれ、佐賀県出身。69年3月、九州大学工学部卒業、同年4月丸紅株式会社に入社。88年情報産業事業部情報機器課長、91年情報産業事業部長代理、92年電子機器部副部長、94年電子機器部長、98年情報・通信・電子本部副本部長を経て、99年4月関東電子株式会社(現丸紅インフォテック)常勤監査役に就任。同年6月、代表取締役社長に就任。
会社紹介
丸紅インフォテックは、2001年10月に旧社名である関東電子から現在の社名へと変更した。中期経営計画に基づく社内体質の転換を進めており、企業向けビジネスの拡大を目指す。03年度に連結売上高1600億円、連結経常利益30億円、ROE(株主資本利益率)20.6%、ROA(総資産利益率)2.4%が目標。取り扱い商品としては、やはり周辺機器事業がコアとなる。現在取り扱い製品に加え新規参入ベンダーの発掘、育成を進め、03年度時点で売上高975億円を目指す。