ヤマダ、ヨドバシに対抗する統一戦線の輪が着々と拡がっている。エディオンは、5社連合を基盤とした蕫連邦方式﨟による結束拡大を推し進めると同時に、独自商品のアイテム数を増やし、メーカーとのコミットメントレベルを一段と高める。エディオンの久保允誉会長は、統合に向けての方針と勝算を熱く語る。
統合の成果は今年度中に、独自商品で勝負をかける
――エディオンで主導権は獲れますか。
久保 獲れます。ヤマダ電機やヨドバシカメラの全国展開に対し、われわれエディオンを中核とした5社連合(デオデオ、エイデン、ベスト電器、上新電機、ミドリ電化)は、地域密着を基盤とした連邦方式で対抗します。連邦方式を成功させるためには、まず、デオデオとエイデンの事業統合の蕫成果﨟を今年度中に出さなければなりません。完全に事業統合するエディオン方式が、「効果がある」と認められれば、提携関係にあるベスト電器、上新電機、ミドリ電化との話し合いにも弾みがつきます。今は、エディオンという統括会社の下に、デオデオとエイデンという事業会社がぶらさがっている形ですが、今後5年以内には事業会社のブランドも統一する方針です。今すぐにでも統一したい気持ちはあるのですが、顧客管理や物流、労使関係など、解決すべき課題がまだ多く、当面は5年以内をめどに1つずつ解決します。
それぞれ社風が異なり、統合にはノウハウが必要ですが、デオデオとエイデンの統合ノウハウを、ほかのパートナー企業との統合にも活かします。しかし、まずはエディオンがもっと強くなり、統合に向けたサポートがきっちりできる体制を整えなければ、うまくいく話も、いかなくなる。今回のエディオン統合で体験できたことの1つは、「互いの条件をまったく同じにするのは至難の業」だということです。志を1つにして、譲るべきところは譲らなければうまくいかない。エディオンがグループ全体の中核となる実力を発揮できれば、このあたりのバランスもとりやすい。それぞれの地域に密着した連邦方式による事業統合が必要だと、今後とも強く訴え続けます。
――成功のためのポイントは。
久保 エディオンが企画した独自の商品群を増やすと同時に、メーカーとのコミットメントレベルを高めることです。独自商品とは、メーカーがつくる製品にいくつか機能を付け加えた販売店独自の商品のことを指します。たとえば、エアコンならば室外機の塗装を塩害対策仕様にして、手入れしやすい工夫をするなどです。細かいことですが、利用者の立場からしてみれば、重要な機能を追加しています。デオデオでは、エアコンの台数ベースで約8割がこうした独自商品が占めます。顧客に独自商品の良さを説明すれば、大半は支持していただいています。
エアコンの約8割に対し、パソコンの独自商品は、台数ベースでまだ14%(デオデオの場合)ほどしかありません。パソコンは、独自商品をつくりやすい分野ですので、今後、積極的に増やします。現在、エディオン全体で、家電も含め独自商品は100アイテムほどしかありませんが、今年度(03年3月期)には、500アイテムに増やします。独自の商品をメーカーにつくってもらうには、まとまった台数が必要です。たとえば、エイデン、あるいはデオデオ1社だけの発注個数では、せいぜい製品の塗装の色を変えるのが限界です。しかし、エディオンとして発注すれば、いろいろなことができる。独自商品の開発では、エディオンだけでなく、ほかの3社とも協業していますから、将来的に、5社全体で一括発注すれば、さらに違った独自商品をつくれるようになります。
――コミットメントレベルを高めることによるリスクは。
久保 販売店独自の商品をメーカーに発注すれば、当然、発注した販売店が売り切る責任が発生します。メーカーは、販売店に対して「確実に○○台は売って欲しい」というコミット(確約)を求めたがる。独自商品を100台発注すれば、少なくとも確実に100台はメーカーの手から離れて、販売店の責任で売り切らなければならない。メーカーにとっては利益がある話です。東芝が米国でシェアを伸ばした背景には、米大手販売店のコンプUSAと、コミットを含む強い協力関係を築いた要因が大きいと聞いています。まとまった個数で独自商品を発注すれば、最大4%ほど仕入れ価格が安くなる。この手法を使い、ヤマダやヨドバシより安い価格で仕入れられるケースも増えています。
パソコンでも同じです。国産パソコンメーカーのなかには、商談時に数多くのコミット(販売個数に対する事前確約)を求めてくるメーカーがあります。私は、(1)まとまった個数の独自商品をメーカーに発注する、(2)独自商品であるため、販売個数をコミットできる、(3)コミットの個数に応じて仕入れ価格を安くできる――という循環は、とても重要なことだと考えています。独自商品の発注では、通常商品に比べ、メーカーは納期と納品個数の厳守がより強く求められ、売れ筋商材を入手しやすい利点もあります。
販売店の売り切る力を発揮するには、ある程度のコミットは必要です。もちろんコミットが多すぎると、流通在庫を抱えて赤字を出す危険はあります。ですが、独自商品とコミットというメーカーとの二人三脚ができないようでは、逆に販売店の経営は成り立たない。蕫売れる独自商品﨟を企画するマーケティング力と、この独自商品を蕫売り切る力﨟が販売店に求められているのです。
ヤマダ・ヨドバシに対抗、強みは手厚い顧客サポート
――競合に対する勝算は。
久保 エディオンおよび5社連合の強みは、蕫地域密着﨟です。ヤマダやヨドバシは蕫安さ﨟で勝負している。われわれが脅威に感じていることは、ヤマダやヨドバシがわれわれより安いという点です。安さは重要な要素ですが、安さの追求には限界があります。私の知る限り、安さ一本槍で万事成功した試しはありません。米高級車「リンカーン」の購買層の平均年齢は60歳代であると聞きます。デオデオで言えば、40歳以上の顧客が73%を占める。顧客サポートには、「ここが分からんのじゃけ…」という問い合わせが絶えない。エディオンでは、このサポートをしっかり手がけていく方針です。
ヤマダ、ヨドバシが安売りを基調としているうちは、実は、それほど脅威に感じていません。逆に、彼らが顧客サポートに本腰を入れ始めたときが脅威です。地域密着型の手厚い顧客サポートでは、われわれに一日の長がある。彼らがわれわれの領域に足を踏み入れたときが、反撃の絶好の機会です。それまでに、中国(デオデオ)と中部(エイデン)だけでなく、5社連合を基盤とした全国的な蕫面﨟による統合・展開を急ぐ必要があるのです。「お父さん、おじいちゃんはデオデオ・エイデンファンだが、息子はヤマダファン」という構図を是正し、主要顧客の対象年齢を引き下げる努力をすることで、早くからわれわれの顧客に取り込んでおくことも重要な要素です。
眼光紙背 ~取材を終えて~
統合するのは容易ではない。しかし、統合しなければ各個撃破される。デオデオやエイデンなどNEBA(日本電気大型店協会)系販社の弱みだ。 事業会社デオデオを社長として統括する久保会長は、「中国・四国・九州地区の世帯のうち7割の購買履歴を蓄積したデータベース(DB)マーケティングでは、他社を寄せ付けない強さを発揮する」と胸を張る。 だが、一方で、連邦を組むほかの販社すべてがデオデオと同規模のDBを構築しているわけではない。「歯がゆいところもあるが、同時に、ほかのパートナーがあって、当社にないものもある」と漏らす。 焦りを感じつつも、統合なくして勝利は獲られないのも、また事実である。(寶)
プロフィール
(くぼ まさたか)1950年、広島県生まれ。早稲田大学商学部卒業。78年、デオデオ入社。81年、常務取締役。87年、専務取締役。91年、代表取締役副社長。92年、代表取締役社長。02年、デオデオとエイデンの共同持ち株会社エディオン、代表取締役会長就任。
会社紹介
エディオン(事業会社はデオデオとエイデン)の今年度(2003年3月期)の連結売上予想は、前年度比5.8%増の4500億円。経常利益は同141%増の87億円を見込む。出店計画は、昨年度末より90店舗増えて計834店舗になる見通し。エディオンは、九州を中心としたベスト電器、関西を中心とした上新電機、ミドリ電化と独自商品の企画面で提携関係にあり、今後は蕫連邦方式﨟による緩やかな連合を経て、将来的には事業統合を目指す。蕫安い﨟を武器に積極的な全国出店を続けるヤマダ電機、ヨドバシカメラに対抗する統一戦線として、エディオンは連合、そして統合へと結束を固めようとしている。