NECネクサソリューションズは、アウトソーシング関連の売上比率を現在の約2割から倍の4割に増やす。収益性が高いアウトソーシング事業の比率を高めることで、売上高を年率10%ずつ伸ばし、経常利益率で5%以上を確保する計画。今年4月に就任した松本秀雄社長は、「この会社は本来、売上高2000億円、経常利益率10%を叩き出せる潜在力がある」と、成長計画に自信を示す。
今年度の売上目標は1300億円、新たに「経営効率化推進室」設置
──NECネクサソリューションズは2001年4月の設立時に、今年度(04年3月期)の売上高で約2000億円を目指す目標を掲げていました。
松本 この目標は、今でも変えていません。NEC系の情報サービスおよびシステム販社など5社が統合して発足した当社は、社員数約3000人で売上高2000億円、経常利益率10%の目標を達成する能力があります。しかし、IT投資の抑制など市場環境が悪化しており、当初目標の達成時期については、残念ながら先送りせざるを得ません。設立から2年間は、正直申し上げて、現状維持が精一杯でした。01年4月、非常に特徴のある5社が統合したわけですが、合併したことによってそれぞれの会社の特徴が薄れ、全方位型の特徴のないサービスプロバイダになってしまいました。これが「ミニNEC」などと揶揄された背景です。これにIT投資の抑制などが重なり、当初の成長目標を達成させるのが困難な状況です。ただし、成長こそ少なかったものの、財務内容は極めて健全です。私の前任である大河原誠一・前社長には、非常に堅実な経営をしていただき、5社統合という難しい局面にもかかわらず着実に黒字を出しておられました。この点について、私はたいへん満足しています。一方で、引き継いだ私に課せられた使命は、成長率と利益率を高めることです。
──当面の目標は。
松本 売上高を年率およそ10%で伸ばします。昨年度(03年3月期)の売上高は1220億円でした。今年度(04年3月期)は、前年度比約7%増の1300億円に設定していますが、目標は10%成長です。とにかくわれわれは、まだまだ大きく成長しなければなりません。これまでの2年間は、5社統合の後、「どうやったら自分たち独自の企業文化を創り上げられるか」という課題を解決するため、内向きに力が使われてきた傾向が強かった。今この課題は、ほぼ解決しました。大河原・前社長がこの2年間、とても苦労して人的交流や組織づくりなど、企業文化の基礎的な部分を構築してくれたからです。今年度はこれらを基礎として、新しい企業文化の創造に努めるべき年です。つまり、企業文化の創造に向けて、もっと外向きに力を使うのが、今年度の大きな方針です。
経常利益率は当面5%を目指します。今年4月から、新しく「経営効率化推進室」を設けました。この組織は財務内容を強化し、株式上場できる内容にすることを使命としています。株式上場する時期は未定ですが、この会社の規模や仕事の重要性から考えれば、公的な場所で評価されるべきだと考えています。まずは、より一層の財務強化を図り、経常利益ベースで5%を達成します。その次の大きな目標として、冒頭にも触れた社員数約3000人で売上高2000億円、経常利益率10%という経営目標を掲げます。
アウトソーシングを拡大、NEC本体との棲み分けも
──今年4月の組織改編では、アウトソーシング事業を大幅に強化しました。
松本 昨年度のアウトソーシング事業単体での売上高は約150億円です。全社の売上高に占める比率は、単純に計算して10%強です。アウトソーシング事業を基盤とした派生ビジネスを含めても、まだ全体の2割を占めるに過ぎません。これを、ここ2―3年で倍の4割まで拡大します。アウトソーシングは、さまざまな業態があってしかるべきです。すでに、多くの派生ビジネスが生まれてきます。たとえば、コンビニエンスストアのコールセンター業務では、コンピュータのシステム障害による問い合わせは全体の3割に過ぎず、残り7割はボタン操作や配送先を間違えたりするなどの運用上の手違いが占めます。単にコンピュータの技術に関係したものだけでなく、業務の中に深く関わったところでも、アウトソーシング業務が発生しているということです。こうした需要を的確に捉えて、積み重ねていくことで、持続的な10%成長は十分に達成可能だと考えています。
──NEC本体のアウトソーシングとの棲み分けは、どうなさいますか。
松本 NEC本体のアウトソーシングも当社と同じく、システム構築にともなう運用監視、コールセンターなど、業務そのものを受注することに力を入れています。ところが、NEC本体は大規模なシステム構築は得意としているものの、日常の運用アウトソーシングに関しては、あまり得意としていません。ここでは、当社の強みを存分に発揮できることと思います。また、中堅・中小企業の業務システムに関するアウトソーシングについても、NEC本体がやる仕事ではなく、当社がNEC本体と上手く相互補完の関係を築きながら、受注量を増やすべき分野です。現在のアウトソーシングの売上高のうち、NEC本体からの受注が約半分を占めて、残り半分が当社独自の営業によるものです。
システム構築の分野においても、NEC本体との棲み分けを進めます。NEC本体は、最新の技術を使った基幹業務の構築を得意としています。たとえば、NECがSAPなどの大型の基幹業務システムを構築するときは、当社がこれのアウトソーシング受注に力を入れます。こうした連携技で、NEC本体との補完関係を強めていく考えです。当社が最新の情報システム構築をやらないという意味ではありません。主要顧客である中堅・中小企業の中には、最先端のウェブサービスなどを積極的に導入する動きがあります。これまでは、こうした最先端のシステム構築事業の面では、NEC本体に比べて弱い部分がありました。これを打開するため、「EビジネスSI事業部」を4月に新設しました。大型システム構築案件や、最先端技術の習得と普及、SAP対応技術の蓄積などを任務としています。全国の地域拠点では、どうしても日々の仕事に追われ、最新の技術の習得が遅れがちになります。EビジネスSI事業部は、約100人の体制で全社のシステム構築技術水準の向上に取り組みます。
──IT投資の抑制など、市場環境が悪化していますが、どう分析しますか。
松本 製造業の多くが生産の軸足を中国に移したり、折からの戦争や新型肺炎などで海外旅行ビジネスが大打撃を受けたり、不良債権処理で株安が続くなど、短期的なマイナス要因は数多く存在します。ところが、見方を変えれば、海外旅行の代わりに国内旅行が活発になり、産業集積が進む中国でのIT投資が盛んになり、コンビニにATMが何万台も入るなど、必ずしも一方的に悪いばかりではありません。われわれは良い部分を着実に捉えることで、成長路線に歩み出すことができると確信を持っています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
成長することを重視する挑戦者でありたい――。統合して2年。3期目の目標である年商2000億円を果たすのは困難な状況だが、「この数字が当面の目標であり続けることには変わりはない」と強調する。「統合後2年間は基盤づくりと現状維持が限界だった。今年度は成長戦略を練り上げる過程で、NECネクサソリューションズらしい企業文化を創造する。明確な数値目標に向かって大きく前進する」と意気込む。システム開発から構築、アウトソーシングに至るまで一貫して受注できるのが、5社統合という経歴をもつ同社の強み。統合という蕫力仕事﨟を経た今、強みを生かした成長路線に切り替えられるか。松本新社長の手腕に期待が集まる。(寶)
プロフィール
松本 秀雄
(まつもと ひでお)1943年、岡山県生まれ。67年、和歌山大学経済学部卒業。同年、日本電気(NEC)入社。91年、C&C装置システム事業部長。93年、C&C第一流通・サービスシステム事業部長。95年、第五C&Cシステム事業本部流通業SI事業部長。97年、理事。99年、第五C&Cシステム事業本部長。00年、NECソリューションズ第三ソリューション営業事業本部長。01年、NECソリューションズ中部ソリューション営業事業本部長兼中部支社長。02年、NECソリューションズ執行役員。03年4月、NECネクサソリューションズ代表取締役社長に就任。
会社紹介
1995年、NEC本体の第五C&Cシステム事業本部で流通業SI事業部長を務めていた時、初めて本格的なアウトソーシング事業の立ち上げに関わった。「当時、アウトソーシングといえば、大半が子会社の旧・NEC情報サービス(NECネクサソリューションズの前身)に依存していた」(松本社長)のが実情だった。大手流通小売業を中心とする顧客からは、「システムの開発段階から、アウトソーシングまでを一貫してやって欲しい」という要望が高まり、翌96年、「システム開発に伴う運用監視、コールセンターなどを請け負う本格的なアウトソーシング事業部を提唱し、立ち上げた」という。
システム開発、構築と、アウトソーシングを一貫して手掛ける重要性は、この段階から強く認識していた。今回、社長に就任したNECネクサソリューションズにおいても、この考えは変わらない。システム開発の段階から、アウトソーシングを前提とした提案に力を入れる。NECネクサソリューションズは01年4月、それまでアウトソーシングなどのサービス事業を手掛けていたNEC情報サービス、およびパッケージソフトなどによるシステム構築を担当していたNECビジネスシステム、NECテクノサービス、NECオフィスシステム、NECコンピュータシステムの5社が統合し発足した。